特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第2条・第3条・第4条・第5条・第16条
一人親方への発注とフリーランス法の義務(明示・支払期日)
従業員を使わない一人親方に電気工事を任せるとき、発注する側にはフリーランス・事業者間取引適正化等法(通称フリーランス法)の義務がかかります。 条件の書面等での明示、受領から60日以内の報酬の支払いなど、発注する側の義務を条文から整理します。
公開日: 2026-10-12 / 最終更新: 2026-10-12 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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保護の対象になる一人親方と発注する側
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」第2条は、保護の対象を「特定受託事業者」と呼び、業務委託の相手方である事業者のうち、次のどちらかに当たるものと定めています。
- 個人で、従業員を使用しないもの(第1号)。
- 法人で、代表者以外に役員がなく、従業員を使用しないもの(第2号)。
中小企業庁のQ&A(令和8年1月1日時点)は、業種や業界の限定はないとしたうえで、「建設会社から住宅建設の業務の一部を受託する一人親方」を、従業員を使用しない場合の例に挙げています。 「従業員を使用」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇うことをいい、短時間・短期間の一時的な雇用は含まれません。 1人の職人を雇っていれば、本法の保護の対象から外れる場合があります。
発注する側は、立場によって義務の範囲が分かれます。従業員を使う個人、または役員が2人以上か従業員を使う法人は「特定業務委託事業者」(第2条第6項)にあたり、後の節の義務をすべて負います。 一方、自分も従業員のいない一人親方どうしの発注は、第3条の明示の義務だけがかかります。
発注する側の義務の早見表
| 条 | 義務の内容 | かかる発注者 | かかる委託の期間 |
|---|---|---|---|
| 第3条 | 給付の内容・報酬の額・支払期日などを、書面または電磁的方法で直ちに明示する | 業務委託事業者(従業員のいない発注者も含む) | 期間の定めなし |
| 第4条 | 報酬の支払期日を、受領した日から60日以内のできる限り短い期間で定め、その日までに支払う | 特定業務委託事業者 | 期間の定めなし |
| 第5条 | 受領拒否・報酬の減額・買いたたき・不当な給付内容の変更ややり直しなどをしない | 特定業務委託事業者 | 1か月以上 |
| 第16条 | 契約を解除する・更新しないときは、少なくとも30日前までに予告する | 特定業務委託事業者 | 6か月以上 |
第5条と第16条の期間の長さは、法律本文では政令で定められています。上の表の「1か月」と「6か月」は、中小企業庁のQ&Aの説明にもとづきます。
条件の書面等での明示(第3条)
第3条第1項は、業務委託をしたら直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面または電磁的方法(メールなど)で明示するよう定めています。 明示する事項の細目は公正取引委員会規則で定められています。口頭だけの発注は認められません。
電磁的方法で明示した場合でも、一人親方から書面の交付を求められたときは、遅滞なく交付する義務があります(同条第2項)。ただし、規則で定める保護に支障のない場合は除かれます。
電気工事では、現場に入ってから「いつ・どこで・どこまで」を口頭で決める例があります。フリーランス法は建設工事の発注を除外していないため、一人親方への発注は、建設業法の契約書の定めとは別に、この明示の義務を確認する必要があります。 契約書の記載事項は建設工事の請負契約書の記載事項のガイドで整理しています。
報酬の支払期日(第4条)
特定業務委託事業者は、報酬の支払期日を、検査をするかどうかにかかわらず、給付を受領した日から60日以内で、できる限り短い期間内に定めなければなりません(第4条第1項)。電気工事のように役務の提供を受ける委託では、起算日は役務の提供を受けた日です。
- 支払期日を定めなかったときは、受領した日が支払期日とみなされます(第2項)。
- 60日を超えて定めたときは、受領した日から60日を経過する日が支払期日とみなされます(第2項)。
- 元請などの「元委託者」から受けた仕事を再委託する場合は、元委託者から支払いを受ける期日から30日以内で定めることもできます。この場合は、再委託であること、元委託者の名称、元委託業務の支払期日などを、第3条の明示であらかじめ示しておく必要があります(第3項)。
- 一人親方の責めに帰すべき事由で支払えなかったときは、その事由が消えた日から60日(再委託の特例では30日)以内に支払います(第5項ただし書)。
建設業法にも、下請代金の支払期日についての別の定めがあります。両方の定めを確認するために、下請代金の支払期日のガイドもあわせて読んでください。
1か月以上の委託での禁止行為(第5条)
特定業務委託事業者が1か月以上の期間行う業務委託をしたときは、次の行為が禁止されます(第5条第1項)。いずれも、一人親方の責めに帰すべき事由がない場合の定めです。
- 給付の受領を拒むこと(役務の提供を受ける委託では、この項目と引き取りの項目は対象外)。
- 報酬の額を減じること。
- 給付を受領した後に、その物を引き取らせること。
- 同種の給付に通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を不当に定めること。
- 正当な理由なく、自己の指定する物の購入や役務の利用を強制すること。
さらに第2項は、金銭や役務などの経済上の利益を不当に提供させること、責めに帰すべき事由のない給付内容の変更ややり直しをさせることで、一人親方の利益を不当に害してはならないと定めています。 第5条の「業務委託」は冒頭で政令の期間以上のものに限られているため、第2項も1か月以上の委託が対象です。 たとえば、一度施工した配線を発注側の都合で組み直させ、追加の費用を払わない形は、この確認の対象になります。
6か月以上の契約の解除の予告(第16条)
特定業務委託事業者は、継続的な業務委託の契約を解除する、または更新しないときは、少なくとも30日前までに予告しなければなりません(第16条第1項)。 災害などでやむを得ない場合など、厚生労働省令で定める例外があります。
予告を受けた一人親方が、解除の理由の開示を求めたときは、遅滞なく開示する義務もあります(同条第2項)。第三者の利益を害するおそれがある場合などは除かれます。 中小企業庁のQ&Aでは、30日は予告日の当日から解除日の前日まで確保する必要があるとし、8月31日に解除するなら8月1日までに予告が必要、という例を示しています。
違反したときの措置
- 一人親方は、違反する事実があるとき、公正取引委員会または中小企業庁長官に申し出ることができます(第6条第1項)。
- 申し出たことを理由に、取引の削減や停止などの不利益な取扱いをすることは禁じられています(同条第3項)。
- 公正取引委員会は、第3条、第4条第5項、第5条の違反に対して勧告でき(第8条)、その後の命令に違反すると50万円以下の罰金の対象です(第24条第1号)。
- 法人の従業員が違反したときは、行為者のほか法人にも同じ刑が科されます(第25条)。
- 第16条の違反については、第17条から第19条に、別の申出・勧告・命令の定めがあります。
この整理で言えないこと
- 個別の一人親方が、従業員を使用しない特定受託事業者に当たるかの判定は行いません。
- 第3条で明示する事項の細目や、第5条・第16条の政令・省令の例外の全体は扱いません。
- 契約の形が請負でも、働き方の実態が労働者であるときは、労働関係法令の適用が実態で判断されます。この判定は扱いません。
- 建設業法上の契約書、見積り、下請代金の定めは別のガイドで扱います。
- ハラスメント対策(第14条)や妊娠・出産・介護への配慮(第13条)の義務は、この記事では扱いません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。 個別の発注が本法に当たるか、明示すべき事項、支払期日の定め方は、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の相談窓口(フリーランス・トラブル110番など)や契約の専門家に確認してください。 参照した資料は、中小企業庁「フリーランス・事業者間取引適正化等法 Q&A」(令和8年1月1日時点)です。
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