労働者派遣法第2条・第4条・第59条・労働省告示第37号
電気工事の現場で人手を借りるときの請負と労働者派遣の区分(偽装請負・建設業務の派遣禁止)
電気工事の現場で人手が足りないとき、他社の作業員を借りる契約は「請負(外注)」か「労働者派遣」のどちらかに分かれます。建設業務への労働者派遣は、労働者派遣法第4条で禁止されています。 請負の名前でも実態が派遣なら禁止の対象となるため、請負と認められる条件と罰則を、条文と告示から整理します。
公開日: 2026-10-11 / 最終更新: 2026-10-11 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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建設業務は労働者派遣が禁止されている
e-Gov法令検索「労働者派遣法」第2条第1号は、労働者派遣を「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定めています。ポイントは、貸す側が雇っている人を、借りる側の指揮命令で働かせる点です。
同法第4条第1項第2号は、「建設業務」(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体の作業、またはこれらの準備の作業に係る業務)について、労働者派遣事業を行うことを禁じています。電気設備を設置・変更・修理する電気工事の作業は、この文言の「工作物の建設、改造、修理、変更」の作業にあたるのが通常です(個別の作業が当たるかは労働局で確認してください)。 さらに同条第3項は、派遣を受ける側にも、派遣された人を建設業務に従事させることを禁じています。
つまり、他社の作業員を自社の現場監督の指示で動かす形(派遣)は、電気工事ではそもそも認められません。人手を借りるなら、請負として、相手の会社が自社の作業員を自分で指揮する形にする必要があります。
請負と認められる条件(告示第37号)
請負か派遣かを分ける基準は、厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)第2条が定めています。請負の形式で働かせる事業主は、次の2つの柱をどちらも満たさない限り、労働者派遣事業を行う事業主とされます。
| 柱 | 求められること | 現場での例 |
|---|---|---|
| 1 自社の労働者の労働力を自ら直接利用する | 業務の遂行方法・評価の指示、始業・終業時刻・休憩・休日・残業の指示、服務規律や配置の決定と変更を、請け負った側が自ら行う | 作業の段取りも日々の配置も、請け負った会社の職長が決める。元請の担当者が作業員へ直接指示しない |
| 2 業務を自己の業務として相手方から独立して処理する | 資金を自ら調達し支払う。事業主としての法律上の責任をすべて負う。自己の機械・設備・材料を使うか、自らの企画や専門的な技術・経験で処理し、単に肉体的な労働力を提供するだけではない | 工具・測定器・材料を請け負った会社が用意し、施工の責任も負う。人数と日数だけを決めて作業員を出す形は、この条件から外れやすい |
労働時間の項目は、「単なる把握」を除くと明記されています。作業員の出退勤を発注側が記録するだけなら直ちに問題になるわけではありませんが、発注側が始業・終業や残業を指示する形になると、柱1を満たさなくなります。
一方、厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」のQ&Aは、複数の請負事業者が入る建設現場で、元請が労働安全衛生法第29条にもとづく安全確保のために必要な指導や指示を下請の作業員へ直接行っても、業務の遂行に関する指示等には該当しない、としています。安全のための指示と、作業の手順・配置の指示は、分けて考えます。
請負の形でも派遣になる場合
告示第2条の条件を形のうえで満たしていても、法の規定に違反することを免れるために故意に偽装され、真の目的が労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主として扱われます(告示第3条)。 契約書の題名が「工事請負契約」でも、現場の実態で判断されます。
- 発注側の担当者が、請け負った会社の作業員へ直接、作業の手順や配置を指示している。
- 請負代金が、完成した工事の対価ではなく、人数と日数の積み上げだけで決まっている。
- 作業員の始業・終業・休日や残業を、発注側が決めている。
- 工具・測定器・材料を発注側がすべて用意し、請け負った側は人を出すだけになっている。
上の項目は、告示の条件を現場に当てはめた確認の観点です。1つ当てはまれば違法と決まるものではなく、全体の実態で判断されます。
現場で人手を借りる前の確認表
契約の形を決める
人の貸し借りではなく、工事の範囲・工期・代金を定めた請負(下請)として契約する。
指揮命令の系統を分ける
作業員への指示は請け負った会社の職長が行い、元請とは工程や完成の水準の調整だけにする。
工具・材料・責任の所在を確かめる
請け負った会社が、工具や材料の調達と施工の責任を自ら負う形になっているか確かめる。
下請の許可・資格・保険を確認する
請負金額によって建設業許可が必要になる場合があります。電気工事の資格者や保険の加入は、元請として確認する。
下請に出す工事の範囲や金額による制限は下請契約の制限のガイド、契約書に書く事項は建設工事の請負契約書の記載事項のガイドで整理しています。
違反したときの罰則
労働者派遣法第59条第1号は、第4条第1項(建設業務での労働者派遣事業)に違反した者を、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処すると定めています。この罰則の対象は、労働者を送り出す側の事業主です。派遣を受ける側の措置や罰則は、この記事では扱わず、実際の適用も判定しません。
この整理で言えないこと
- 個別の契約や現場が、請負か派遣かの判定は行いません。実態の判断は労働局の窓口で確認が必要です。
- 一人親方など、雇用関係のない個人事業主との契約が労働者に当たるかは扱いません。
- 建設業の事業主どうしで労働者を送り出す仕組みなど、労働者派遣法とは別の法律による制度は扱いません。
- 下請代金や支払期日、建設業許可の要否は、別のガイドで扱います。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。請負と派遣の区分は、都道府県労働局(需給調整事業を担当する部署)や、契約の相談を受け付ける窓口で確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。