公式資料をもとに整理

従業員を雇った電気工事業者の労災保険・雇用保険の加入手続き(成立届10日以内)

労働者を1人でも使用すると、労災保険の保険関係は法律上当然に成立し、事業主は成立した日から10日以内に保険関係成立届を提出します。一人親方の特別加入とは別の仕組みです。ここでは、労働保険の徴収法とその施行規則、厚生労働省・労働局の案内から、届出の期限と提出先、建設の事業に特有の工事ごとの扱い、雇用保険の加入基準を整理します。

公開日: 2026-10-04 / 最終更新: 2026-10-04 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

労働者を使うと労災保険が当然に適用される

労災保険は、原則として一人でも労働者を使用する事業であれば、業種や規模を問わずすべてに適用されます。厚生労働省は、ここでいう労働者を「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」とし、アルバイトやパートタイマーなどの雇用形態は関係ないと説明しています(厚生労働省「労災保険制度」)。保険料は原則として事業主が負担します。

条文では、労災保険法第3条第1項が「労働者を使用する事業を適用事業とする」と定め、労働保険徴収法第3条が、適用事業の事業主についてその事業が開始された日に保険関係が成立すると定めています(労災保険法、労働保険徴収法)。加入するかどうかを事業主が選ぶ制度ではなく、労働者を使い始めた時点で成立します。

雇ったときの手続きと期限・提出先

保険関係が成立した事業の事業主は、成立した日から10日以内に、成立日・事業の種類・事業の行われる場所などを政府に届け出なければなりません(労働保険徴収法第4条の2第1項)。届出事項は施行規則第4条が定め、事業の名称・概要、事業主の所在地、労働者数などです。建設の事業では、請負金額と発注者の氏名または名称・住所も含まれます。

提出先は所轄の労働基準監督署長または公共職業安定所長です(施行規則第4条第2項)。

労働者を雇ったときの労働保険の手続き(兵庫労働局の案内)
手続き期限提出先
保険関係成立届保険関係が成立した日から10日以内所轄の労働基準監督署
概算保険料申告書(納付)保険関係が成立した日から50日以内所轄の労働基準監督署、都道府県労働局または日本銀行(代理店等を含む)
雇用保険適用事業所設置届事業所を設置した日の翌日から起算して10日以内所轄の公共職業安定所
雇用保険被保険者資格取得届被保険者となった事実のあった日の翌月10日まで所轄の公共職業安定所

兵庫労働局の案内ページは、概算保険料を、その保険年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)に全労働者へ支払う賃金総額の見込額に保険料率を乗じて算出するものと説明しています。成立届の提出先は、条文では労働基準監督署長または公共職業安定所長のどちらでも提出できる書き方で、労働局ごとの案内では労働基準監督署とされています。事業所の所在地の窓口で確認してください。

建設の事業の特例(一括有期事業・元請の一括)

電気工事は、施行規則の「建設の事業」(土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業)に当たる場合があり、その場合は工事の請負金額が届出事項に入り、有期事業の特例の対象にもなります。自分の工事が建設の事業に当たるかは、労働基準監督署で確認してください。

建設の事業の2つの特例(徴収法第7条・第8条、施行規則第6条・第7条)
特例内容条文上の条件
有期事業の一括工事ごとに保険関係を成立させず、複数の有期事業(工事)を一つの事業とみなす事業主が同一人、同時に行われる工事、労災保険の保険関係が成立している建設の事業で事業の種類が同じ、保険料の納付事務が一つの事務所で取り扱われること。 規模は、労働保険料の額に相当する額が160万円未満で、請負金額(消費税等相当額を除く)が1億8千万円未満
元請負人の一括数次の請負で行われる工事を一つの事業とみなし、元請負人だけを事業主とする労災保険の保険関係が成立している建設の事業。元請負人と下請負人が申請し厚生労働大臣の認可を受けた場合は、その下請の請負は下請負人を元請とみなす(法第8条第2項)

下請として電気工事を行う事業者でも、数次の請負による工事の労災保険は元請負人が事業主として加入する扱いになるため、自社の従業員の労災保険の手続きがどの事業主の名義になるかを確認することが出発点です。ただし、事務所に勤める従業員など工事の現場以外の労働者や、条文の規模を超える工事の扱いは、この記事の資料では確認できていません。労働基準監督署で確認してください。

雇用保険の加入基準と資格取得届

雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば、「パート」「アルバイト」という名称や本人の希望にかかわらず被保険者として加入が必要です(暫定任意適用事業を除く)。東京ハローワークのQ&Aは、資格取得届を被保険者となった日の属する月の翌月10日までに提出するとしており、手続きが漏れていた場合は過去にさかのぼって確認され、さかのぼれるのは原則として確認日の2年前まで(賃金台帳などで雇用保険料の天引きが確認できる場合は例外があります)としています(東京ハローワーク「雇用保険被保険者に関するQ&A」)。

労働保険徴収法第4条は、雇用保険法の適用事業の事業主について事業が開始された日に雇用保険の保険関係が成立すると定めています。なお、雇用保険の保険料の労働者負担分や、被保険者の範囲の細かな除外は、この記事では扱いません。

一人親方の特別加入との分かれ目

労災保険の特別加入は、労働者を使用しないで建設の事業を行う一人親方等のための制度で、労働者を使う日が1年間で100日に満たない場合も一人親方等として加入できる、と厚生労働省のしおりに書かれています。従業員の労災保険は事業主の保険関係の話で、特別加入とは別の仕組みです。一人親方が従業員を雇い始めるときは、一人親方の労災保険特別加入の記事で特別加入の範囲を確認したうえで、労働基準監督署に切り替えの手順を確認してください。

建設業許可を取る場合は社会保険の加入が要件に入ります。許可の要件としての扱いは建設業許可の社会保険加入要件の記事を参照してください。

この整理で言えないこと

公式窓口で確認する事項

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。保険関係成立届の提出先と様式、概算保険料の金額、建設の事業に当たるか、元請との関係での事業主の扱いは、所轄の労働基準監督署・公共職業安定所で最終確認してください。

まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。

一次資料の一覧は公式資料・根拠、判定ルールの検証記録は公開ルール台帳で確認できます。