公式資料をもとに整理
電気工事業者の労働条件通知書と就業規則
従業員を1人でも雇う電気工事業者は、雇い入れるとき(労働契約を結ぶとき)に、賃金や労働時間などの労働条件を明示する義務があり、重要な事項は書面で渡します。常時10人以上の労働者を使う場合は、就業規則の作成と届出も必要です。ここでは、電気工事の現場で働く従業員を雇うときに明示する事項、現場が変わる働き方での就業場所の書き方、就業規則の届出の条件を整理します。
公開日: 2026-10-09 / 最終更新: 2026-10-09 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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雇い入れるときの労働条件の明示義務
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条第1項)。従業員の人数に下限はなく、1人目の従業員を雇うときから対象です。賃金と労働時間に関する事項などの厚生労働省令で定める事項は、厚生労働省令で定める方法で明示します (労働基準法、労働基準法施行規則第5条)。
従業員を雇ったときの保険の手続きは労災保険・雇用保険の加入手続きと健康保険・厚生年金保険の加入で整理しています。この記事は、その前提になる雇用契約の中身の明示を扱います。
明示する事項と書面で渡す事項
労働基準法施行規則第5条(第1項・第3項)は、明示する労働条件として、契約期間、就業の場所と業務、始業・終業の時刻、賃金の決定と支払の方法、退職に関する事項などを挙げ、このうち第1号から第4号までの事項(昇給を除く)は書面で明示します。
| 事項 | 書面での明示 |
|---|---|
| 労働契約の期間 | 必要 |
| 期間の定めがある契約を更新する場合の基準(通算契約期間や更新回数の上限がある場合はその上限を含む) | 必要(更新する場合がある有期契約の場合) |
| 就業の場所と従事する業務(変更の範囲を含む) | 必要 |
| 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇 | 必要 |
| 賃金の決定、計算と支払の方法、締切りと支払の時期 | 必要 |
| 昇給に関する事項 | 書面は求められない(明示は必要) |
| 退職に関する事項(解雇の事由を含む) | 必要 |
| 退職手当、臨時の賃金・賞与、食費や作業用品の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁、休職 | 定めをする場合に明示(書面は求められない) |
このうち書面で渡す事項は、施行規則第5条第3項が「第1項第1号から第4号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く)」と定めています。第1号の2(更新上限を含む更新の基準)と第1号の3(変更の範囲を含む就業の場所と業務)には、2024年4月1日の改正で追加された更新上限と変更の範囲が含まれます。
現場が変わる働き方での就業場所・業務の書き方
2024年4月1日以降に労働契約を結ぶ・更新するすべての労働者に、就業場所と業務の「変更の範囲」を明示します。厚生労働省のリーフレットは、変更の範囲を、雇入れ直後にとどまらず、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、契約期間中の変更の範囲と説明しています (厚生労働省「2024年4月からの備えは大丈夫ですか?」)。
電気工事の現場で働く従業員は、現場ごとに就業の場所が変わるのが通常で、本社の所在地だけを書くと実際の働き方との間に差が出ます。事業の実態に合わせて、本社のほか会社が請け負う工事の現場といった範囲を、労働条件通知書にどう書くかを決めておきます。具体的な記載例は、リーフレットや各都道府県労働局のひな形に載っています。
| 対象 | 追加された事項 |
|---|---|
| すべての労働者(契約の締結時・有期契約の更新時) | 就業場所・業務の変更の範囲 |
| 有期契約の労働者(締結時・更新時) | 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容。上限を新設・短縮するときは、その理由をあらかじめ説明する |
| 無期転換申込権が発生する有期契約の更新時 | 無期転換を申し込める機会と、無期転換後の労働条件 |
書面の交付と電子メールなどの方法
書面で明示する事項は、原則として書面を交付して渡します。労働者が希望した場合に限り、ファクシミリや、出力して書面にできる電子メールなどで送ることもできます。施行規則第5条第4項が定めており、口頭で伝えるだけでは書面で明示すべき事項の明示になりません。
就業規則の作成・届出が必要になる人数
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して行政官庁に届け出なければならず、変更したときも同様です(労働基準法第89条)。10人未満の事業場に作成と届出の義務はありません。ただし、10人未満の場合でも、労働条件の明示の義務は変わりません。
- 就業規則に必ず書く事項は、始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇、賃金の決定・計算・支払の方法と締切り・支払の時期、昇給、退職(解雇の事由を含む)です。
- 退職手当、臨時の賃金、食費・作業用品の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁などは、定めをする場合に書きます。
- 作成・変更するときは、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)の意見を聴き、届出にその意見を記した書面を添えます(第90条)。
- 就業規則は、労働者に周知しなければなりません(第106条第1項)。
「常時10人以上」の数え方は、事業場ごとの実態で決まります。現場に出る人と事務の人をどう数えるかなど、迷うときは労働基準監督署に確認してください。 人数に応じた安全衛生の担当者は安全衛生管理体制(常時10人・50人・100人の基準)で整理しています。
事実と違ったときの解除と罰則
明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に労働契約を解除でき、就業のために住居を変更した人が契約解除の日から14日以内に帰郷するときは、使用者が必要な旅費を負担します(労働基準法第15条第2項・第3項)。第15条第1項・第3項に違反した場合は、30万円以下の罰金の対象になります(第120条第1号)。罰則の適用は個別の事情で判断されます。
この整理で言えないこと
- 個々の契約で何を書けば足りるか、変更の範囲の文言が適切かは、この記事では判定できません。
- 日雇い、請負契約の一人親方、派遣労働者の扱いは契約の実態で決まり、この記事では扱いません。
- 賃金の額、割増賃金、最低賃金、試用期間の取り扱いは扱いません。
- 様式や記載例は改正されることがあります。実際に作る前に、厚生労働省・都道府県労働局の最新のひな形で確認してください。
- 特定の社会保険労務士や書式作成サービスを推奨するものではありません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。労働条件通知書の記載内容、就業規則の作成と届出の要否は、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局に確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
一次資料の一覧は公式資料・根拠、判定ルールの検証記録は公開ルール台帳で確認できます。
従業員の残業は残業の上限規制と36協定、現場が止まった日の休業手当と有給休暇は休業手当と年5日の有給休暇で確認できます。