公式資料をもとに整理
電気工事業の従業員を解雇するときの30日前の予告と解雇予告手当
従業員を解雇しようとするときは、少なくとも30日前に予告するか、予告しない日数分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。ただし、予告や手当を済ませても、客観的に合理的な理由を欠く解雇は無効になります。ここでは労働基準法と労働契約法の条文から、電気工事業者が確認する予告の日数、手当の計算、予告が要らない場合、解雇できない期間、罰則を整理します。
公開日: 2026-10-12 / 最終更新: 2026-10-12 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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30日前の予告か、解雇予告手当が要る
使用者は、労働者を解雇しようとするときは、少なくとも30日前に予告しなければなりません。30日前に予告しないときは、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります(e-Gov法令検索「労働基準法」第20条第1項)。この手当が一般に「解雇予告手当」と呼ばれます。
予告と手当は組み合わせられます。予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合、その日数だけ短縮できます(同条第2項)。たとえば解雇する日の10日前に予告した場合は、足りない20日分の平均賃金を支払う形になります。
平均賃金の出し方と計算例(仮の数字)
平均賃金は、原則として、算定すべき事由が発生した日以前3か月間にその労働者へ支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額です(労働基準法第12条第1項)。賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から数えます(同条第2項)。解雇予告手当でどの日を起点にするかは、労働基準監督署で確認してください。
日給制や時給制、出来高払制の労働者には最低保障があります。賃金の総額を3か月間に実際に働いた日数で割った金額の60%を下回ってはならないと定められています(同条第1項第1号)。電気工事の現場は天候や工期で出勤日数が変わるため、出勤日が少ない月がある日給制の職人では、この最低保障の金額のほうが高くなることがあります。
次は、仕組みを確認するための仮の数字です。
| 項目 | 金額・日数 |
|---|---|
| 直前3か月の賃金の総額 | 1,380,000円 |
| 3か月の総日数(7月・8月・9月) | 92日 |
| 3か月に働いた日数 | 60日 |
| 原則の計算(総額 ÷ 総日数) | 1,380,000 ÷ 92 = 15,000円 |
| 最低保障(総額 ÷ 働いた日数 × 60%) | 1,380,000 ÷ 60 × 0.6 = 13,800円 |
| 平均賃金(下回れないため高いほう) | 15,000円 |
| 予告なしで解雇する場合の30日分 | 15,000 × 30 = 450,000円 |
| 10日前に予告する場合に払う20日分 | 15,000 × 20 = 300,000円 |
業務上のけがで休業した期間、使用者の責任による休業の期間、試みの使用期間などは、3か月の期間と賃金の総額から除いて計算します(同条第3項)。実際の金額は、賃金台帳の記録(労働者名簿と賃金台帳のガイド)をもとに、労働基準監督署で確認してください。
予告が要らない場合と、要らない労働者
第20条の予告は、次の2つの場合は要りません(同条第1項ただし書)。どちらも、その事由について行政官庁(労働基準監督署長)の認定を受ける必要があります(同条第3項、第19条第2項)。
- 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
- 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合
また、次の労働者には第20条は適用されません(第21条)。ただし、表の右欄の場合になったときは、第20条の対象になります。
| 労働者 | 第20条の対象になる場合 |
|---|---|
| 日日雇い入れられる者 | 1か月を超えて引き続き使用されたとき |
| 2か月以内の期間を定めて使用される者 | 所定の期間を超えて引き続き使用されたとき |
| 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者 | 所定の期間を超えて引き続き使用されたとき |
| 試みの使用期間中の者 | 14日を超えて引き続き使用されたとき |
現場ごとに日雇いで来てもらう職人でも、1か月を超えて引き続き使うと予告の対象になります。雇用の形が請負(一人親方)か雇用かの区別は、この記事では判定しません。偽装請負との線引きは請負と労働者派遣の区分のガイドで整理しています。
解雇できない期間
使用者は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、療養のために休業する期間とその後30日間は、解雇してはなりません。産前産後の女性が休業する期間とその後30日間も同じです(第19条第1項)。
例外は、使用者が第81条の打切補償を支払う場合と、天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となった場合です(同項ただし書)。後者は行政官庁の認定が必要です(同条第2項)。
足場や高所からの墜落、感電など現場の災害で休業している従業員は、この期間の対象になり得ます。災害が起きたときの報告は労働者死傷病報告のガイドで整理しています。
予告をしても解雇が無効になる場合
労働契約法第16条は、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして無効と定めています(e-Gov法令検索「労働契約法」)。30日前の予告や解雇予告手当は、解雇の手続きに関する決まりであり、解雇の理由が正当かどうかとは別に判断されます。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、退職に関する事項(解雇の事由を含む)を就業規則に書く必要があります(労働基準法第89条第3号)。雇入れ時にも、退職に関する事項を書面で明示します。この2つは労働条件通知書と就業規則のガイドで整理しています。
退職・解雇の証明書の請求
労働者が退職するときに、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)の証明書を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければなりません(第22条第1項)。解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、労働者がその解雇の理由の証明書を請求したときも同じです(同条第2項)。証明書には、労働者が請求しない事項を書いてはなりません(同条第3項)。
違反したときの罰則
第19条(解雇制限)や第20条(解雇の予告)に違反した者は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処せられると定められています(第119条第1号)。
この整理で言えないこと
- 個々の解雇に合理的な理由があるか、労働者の責に帰すべき事由に当たるか、行政官庁の認定が受けられるかは、事案ごとに異なり、この記事では判定できません。
- 有期契約の期間満了による雇止め、合意による退職、懲戒解雇の手続き、整理解雇の要件は扱いません。
- 解雇予告手当にかかる税や社会保険、雇用保険の離職票の手続きは扱いません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。解雇の可否、予告手当の金額、認定の手続きは、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局で最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。