公式資料をもとに整理
平均賃金の計算方法(日給制の最低保障60%)
平均賃金は、事由が起きた日以前3か月間の賃金の総額を、その期間の総日数で割って出します。日給制や出来高払いの職人は、賃金の総額を労働した日数で割った額の60%を下回れません。解雇予告手当や休業手当の金額を決める基準になる数字を、労働基準法の条文で確認します。
公開日: 2026-10-22 / 最終更新: 2026-10-22 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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平均賃金の計算式と最低保障
労働基準法第12条第1項は、平均賃金を、これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者へ支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額と定めています(e-Gov法令検索「労働基準法」)。「総日数」は労働した日だけでなく、休みの日も含む暦の日数です。3か月の起算は、賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日からです(同条第2項)。
日給や時給、出来高払いで賃金が決まる場合は、上の計算が低くなりすぎることがあります。そのため、賃金の総額をその期間中に労働した日数で割った金額の60%を下回ってはならないという最低保障があります(同条第1項第1号)。月給と日給を併給している場合は、月給部分を総日数で割った金額と、日給部分の最低保障額を足した額が下限です(同項第2号)。
- 原則の額:3か月の賃金総額 ÷ 3か月の総日数(暦の日数)
- 最低保障の額(日給・時給・出来高払い):3か月の賃金総額 ÷ 労働した日数 × 60%
- 平均賃金:2つを比べて、高いほうの額
計算例(仮の数字):最低保障が働く場合
次の表は、日給制の職人2人について、直前3か月の総日数を92日として計算した例です。数字は説明用の仮のもので、実際の賃金とは関係ありません。
| 項目 | Aさん(よく働いた) | Bさん(雨天や閑散期で休みが多い) |
|---|---|---|
| 3か月の賃金総額 | 720,000円 | 480,000円 |
| 総日数(暦の日数) | 92日 | 92日 |
| 労働した日数 | 60日 | 40日 |
| 原則の額(総額 ÷ 総日数) | 約7,826円 | 約5,217円 |
| 最低保障の額(総額 ÷ 労働日数 × 60%) | 7,200円 | 7,200円 |
| 平均賃金(高いほう) | 約7,826円(原則の額) | 7,200円(最低保障の額) |
Bさんのように休みが多い月が続くと、原則の額が最低保障を下回ります。日給制の職人を雇う事業者が平均賃金を出すときは、必ず2つの式を両方計算します。
円未満の端数の扱いは、条文には書かれていません。給与計算の取り決めや所轄の労働基準監督署で確認してください。
期間から除く日と、賃金の総額に入れないもの
3か月の間に次のいずれかの期間があるときは、その日数と、その期間中の賃金を、計算の期間と賃金の総額の両方から除きます(第12条第3項)。起算の日の数え方は、所轄の労働基準監督署で確認してください。
- 業務上の負傷や病気で療養のために休業した期間
- 産前産後の女性が第65条によって休業した期間
- 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
- 育児休業・介護休業をした期間
- 試みの使用期間(試用期間)
ただし、試用期間中に平均賃金を出す事由が起きたときは、試用期間の日数と賃金も計算に入れます(労働基準法施行規則第3条)。また、試用期間を除く4つの期間(療養、産前産後、使用者の責めによる休業、育児・介護休業)が3か月以上にわたる場合や、雇入れの日に事由が起きた場合の平均賃金は、都道府県労働局長が定めます(同規則第4条)。
賃金の総額には、臨時に支払われた賃金と、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は入れません(第12条第4項)。たとえば結婚祝い金のような臨時の支払いや、半年ごとの賞与がこれに当たります。
通貨以外で支払った賃金も、一定の範囲を除いて入れません。入れる範囲と評価の方法は、労働基準法施行規則第2条に定めがあります。
入社3か月未満・日雇いなどの特別な扱い
- 雇入れ後3か月に満たない人は、雇入れ後の期間で計算します(第12条第6項)。
- 日々雇い入れられる人は、その従事する事業または職業について、厚生労働大臣の定める金額が平均賃金になります(同条第7項)。
- 上の方法で算定できない場合は、厚生労働大臣の定めるところによります(同条第8項)。
日雇いの人を現場に入れる電気工事業者は、第7項の金額は個別に定められているため、実際の額を所轄の労働基準監督署で確認してください。
平均賃金を使う場面の一覧
| 場面 | 平均賃金の使い方 | 条文 |
|---|---|---|
| 解雇予告手当 | 30日前に予告しないとき、30日分以上を支払う。予告した日数だけ短縮できる | 第20条 |
| 休業手当 | 使用者の責めに帰すべき休業で、平均賃金の60%以上を支払う | 第26条 |
| 年次有給休暇の賃金 | 平均賃金か通常の賃金のどちらかを、就業規則等で定めて支払う。標準報酬日額を使うときは労使協定(書面)が必要 | 第39条第9項 |
| 業務上の療養中の休業補償 | 療養中、平均賃金の60%を支払う | 第76条 |
| 減給の制裁 | 1回の額は平均賃金の1日分の半額まで。総額も1賃金支払期の賃金総額の10分の1まで | 第91条 |
それぞれの場面の詳しい決まりは、解雇予告のガイド、休業手当のガイド、減給の制裁のガイドで確認できます。
計算前の確認チェックリスト
- 平均賃金を出す事由が起きた日(解雇の通知日、休業の初日など)を決めたか
- その日以前3か月を、直前の賃金締切日から数えたか
- 3か月の総日数を、休みの日も含む暦の日数で数えたか
- 日給・時給・出来高払いの人について、最低保障(60%)の式も計算したか
- 労災の療養、産休、育児・介護休業、会社都合の休業、試用期間の日数と賃金を除いたか
- 臨時の祝い金や、3か月を超える期間ごとの賞与を総額に入れていないか
- 入社3か月未満や日雇いの人は、特別な扱いを確認したか
この整理で言えないこと
- 通勤手当や各種手当が賃金の総額に入るかは、個別の支給の実態で変わるため、ここでは判定しません(神奈川労働局の解説は、通勤手当・皆勤手当・時間外手当などの諸手当を、控除前の額で含めるとしています)。
- 日雇い労働者の平均賃金の具体的な金額は、告示で定められているため扱いません。
- 労災保険の給付基礎日額は、平均賃金を基にしますが、別の制度のため扱いません。
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。個別の平均賃金の算定は、所轄の労働基準監督署や総合労働相談コーナーで最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
次に知りたいことは、解雇の手続きは解雇予告のガイド、未払い賃金の請求期限は未払い賃金の時効のガイド、賃金から引いてよいものは賃金支払い5原則のガイドです。
一次資料の一覧は公式資料・根拠で確認できます。