労災保険の通勤災害の範囲を整理
現場への直行直帰は通勤災害になる?電気工事の通勤の範囲
自宅から現場へ直行する途中や、現場から自宅へ直帰する途中の事故は、労災保険法の「通勤」の要件を満たせば通勤災害の対象になります。厚生労働省の労働局の案内では、特定の区域で複数の用務先を回る外勤の労働者は、自宅を出て最初に着く用務先が業務開始の場所になると説明されています。ただし、経路を外れた場合や、事業主が用意した送迎の移動は扱いが変わります。
公開日: 2026-10-22 / 最終更新: 2026-10-22 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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先に結論:通勤災害になる移動の3つの型
労働者災害補償保険法第7条第2項は、通勤を「就業に関し」「合理的な経路及び方法」で行う次の移動と定め、業務の性質を有するものを除いています(e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法」)。
- 住居と就業の場所の往復:自宅から現場へ向かう、現場から自宅へ帰る移動です。現場が「就業の場所」に当たる場合は、直行直帰もこの型で判断します。
- 就業の場所から別の就業の場所への移動:厚生労働省令で定める場合で、2か所の事業場で働く人が1つめの勤務先から2つめへ向かう場合などです。
- 住居間の移動:単身赴任者が赴任先の住居と帰省先の住居の間を移動する場合で、厚生労働省令で定める要件を満たすものに限られます。
ここでは電気工事の職人に多い、自宅と現場の往復を中心に説明します。個別の事故が通勤災害と認められるかは労働基準監督署が判断します。
通勤と認められる要件(就業に関し・合理的な経路及び方法)
| 要件 | 労働局の案内の内容 |
|---|---|
| 就業に関し | 被災した日に就業することになっていたか、実際に就業していたことが必要。遅刻や混雑を避ける早出などで、通常の出勤時刻と多少前後しても就業との関連は認められる |
| 住居 | 日常生活の用に供している家屋などで、就業のための拠点になる場所。就業の必要で家族とは別にアパートを借りているなら、そのアパートが住居 |
| 就業の場所 | 業務を開始し、または終了する場所。特定の区域を担当して区域内の数か所の用務先を受け持つ外勤では、自宅を出て最初の用務先が業務開始の場所、最後の用務先が業務終了の場所 |
| 合理的な経路 | 通勤に通常使う経路は複数あってもすべて合理的。交通事情による迂回も合理的。特段の理由なく著しく遠回りする経路は合理的でない |
| 合理的な方法 | 電車やバスのほか、自動車や自転車を本来の用法に従って使う場合も一般に合理的。普段その方法を使っているかは問われない |
出典は大阪労働局「通勤災害について」と岩手労働局「通勤災害について」です。
現場が日ごとに変わる職人にこの考え方をどう当てはめるかは、案内の文言からは断定できません。上の「就業の場所」の説明は、特定区域を担当する外勤の例として書かれたものです。事故が起きたときは、その日の行き先と移動の経路を示して労働基準監督署に確認してください。
寄り道をした場合(逸脱・中断)
同法第7条第3項は、通勤の経路を逸脱したり移動を中断したりした場合、その間とその後の移動は通勤にならないと定めています。逸脱は就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれること、中断は経路上で通勤と関係ない行為をすることです。労働局の案内は、映画館に入る、バーで飲酒するといった例を挙げています。
例外として、日常生活上必要な行為で厚生労働省令で定めるものを、やむを得ない事由により最小限度で行う場合は、逸脱や中断の間を除き、経路に戻った後の移動は再び通勤になります。省令が定める行為として、労働局の案内は次の4つを挙げています(沖縄労働局「往復の経路の逸脱・中断」)。
- 日用品の購入やこれに準ずる行為
- 職業訓練や学校教育など、職業能力の開発向上に資する教育訓練を受ける行為
- 選挙権の行使やこれに準ずる行為
- 病院や診療所での診察・治療やこれに準ずる行為
経路近くの公衆便所の利用や、経路上の店でのたばこ・飲み物の購入のような、ささいな行為は逸脱・中断に当たらないと案内されています。工具店や資材店への立ち寄りが日用品の購入に当たるかは、案内に書かれていません。仕事のための立ち寄りかどうかも含め、事前に所轄の労働基準監督署へ確認してください。
通勤災害ではなく業務災害になる移動
労働局の案内は、往復の要件を満たしていても業務の性質を有する場合は通勤にならない、と説明しています。具体例は次の2つです。
- 事業主が提供する専用の交通機関で出退勤する場合
- 緊急の用務のため休日に呼び出されて緊急出勤する場合
これらの移動中の災害は、通勤災害ではなく業務災害として扱われます。業務災害と通勤災害の給付の名称や、休業が始まってからの給付の流れは労災で休業したときの休業(補償)給付で整理しています。
現場への移動で確認しておくこと
- 従業員の自宅(住居)と、現場へ向かう通常の経路を把握しているか
- 寄り道が日用品の購入などの例外に当たるか迷う場合に、労働基準監督署へ確認する窓口を決めているか
- 社用車や送迎での移動が、事業主が用意した交通機関に当たるかを確認したか
- 労災保険の加入状況を確認したか(従業員を雇う電気工事業者の労働保険)
- 事故が起きたら、事故の日時・経路・目的を記録して所轄の労働基準監督署に相談する
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。個別の事故が業務災害・通勤災害に当たるか、給付が出るかの認定は労働基準監督署が行うため、具体的な事情を示して所轄の労働基準監督署へ確認してください。
労災保険の全体像は労働者災害補償保険法の概要、事業主が労働者の事故を報告する場面は下請現場での労働者死傷病報告、一人親方の補償は一人親方の労災特別加入で確認できます。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
一次資料の一覧は公式資料・根拠で確認できます。