公式資料をもとに整理
電気主任技術者と主任電気工事士・電気工事士の違い
電気主任技術者は電気事業法上、事業用電気工作物の設置者(発注者側)が選任する保安監督者で、電気工事業法上の主任電気工事士や電気工事士法上の電気工事士とは根拠法・選任主体・対象設備がいずれも異なります。名称が似ているため混同されがちな3つの制度を整理します。
公開日: 2026-08-24 / 最終更新: 2026-08-26 / 制度確認日: 2026-07-26
電気工事士(電気工事士法)は個人の作業資格
e-Gov法令検索「電気工事士法」は、電気工事の作業に従事する者の資格を定めています。第一種電気工事士は自家用電気工作物・一般用電気工作物等いずれの工事にも、第二種電気工事士は一般用電気工作物等の工事に従事できます(同法第3条第1項・第2項)。
電気工事士免状は都道府県知事が交付する個人の資格で、事業として電気工事業を営むかどうかとは別の話です。電気工事士免状と電気工事業の登録・通知(事業者単位の手続き)の関係は電気工事士免状と電気工事業登録・通知の違いで整理しています。
主任電気工事士(電気工事業法)は営業所ごとの作業管理者
e-Gov法令検索「電気工事業の業務の適正化に関する法律」第19条は、登録電気工事業者・みなし登録電気工事業者が、一般用電気工作物等に係る電気工事(一般用電気工事)を行う営業所ごとに、その作業を管理させるため主任電気工事士を置くよう定めています。主任電気工事士になれるのは第一種電気工事士、または第二種電気工事士免状交付後に実務経験3年以上を持つ人です。
主任電気工事士が管理するのは一般用電気工事に限られ、自家用電気工作物に係る工事だけを扱う営業所に選任義務はありません。要件・選任手続きの詳細は主任電気工事士の要件・選任・変更手続き、一般用電気工作物等と自家用電気工作物の区分は一般用電気工作物等と自家用電気工作物の違いで整理しています。
電気主任技術者(電気事業法)は設置者側の保安監督者
e-Gov法令検索「電気事業法」第43条第1項は、事業用電気工作物を設置する者(発注者・オーナー側)は、その工事・維持・運用に関する保安の監督をさせるため、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから主任技術者(電気主任技術者)を選任しなければならないと定めています。「事業用電気工作物」は同法第38条で「一般用電気工作物以外の電気工作物」と定義され、自家用電気工作物を含みます。
主任技術者免状は、第一種・第二種・第三種電気主任技術者免状などの7種類があり、経済産業大臣が交付します(同法第44条第1項・第2項)。選任するのは電気工事業者ではなく、その設備を所有・使用する設置者側です。自家用電気工作物のうち出力・電圧が経済産業省令で定める基準未満の「小規模事業用電気工作物」は、第42条(保安規程)冒頭が定める「事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。以下この款において同じ。)」という定義により、第42条の保安規程の届出義務・第43条の主任技術者の選任義務が適用されず、使用開始前の届出(第46条)のみで足ります(同法第42条・第43条・第46条)。
主任技術者の選任には、自社の社員を専任させる方法のほか、経済産業大臣の許可を受けて主任技術者免状を持たない者を選任する方法(同法第43条第2項)、外部の電気管理技術者・電気保安法人へ保安管理業務を委託する「外部委託承認制度」を利用する方法があります。関東東北産業保安監督部「自家用電気工作物を新設する場合」は、専任・選任許可・兼任・外部委託の4つの執務形態を案内しています。委託先となる電気管理技術者・電気保安法人の要件は「外部委託承認制度」で確認できます。
3つの制度の違い(比較表)
| 項目 | 電気工事士 | 主任電気工事士 | 電気主任技術者 |
|---|---|---|---|
| 根拠法 | 電気工事士法 | 電気工事業法(第19条) | 電気事業法(第43条) |
| 性質 | 個人の作業資格 | 事業者が営業所ごとに置く選任者 | 設置者が置く保安監督者 |
| 選任・保有する主体 | 個人(免状保有者本人) | 登録電気工事業者・みなし登録電気工事業者 | 事業用電気工作物を設置する者 |
| 対象工事・設備 | 第一種は自家用・一般用双方、第二種は一般用電気工作物等の工事 | 一般用電気工作物等に係る電気工事(一般用電気工事)のみ | 事業用電気工作物(自家用電気工作物を含む) |
| 免状の交付者 | 都道府県知事 | 専用の免状なし(電気工事士免状+実務経験等) | 経済産業大臣 |
自家用電気工作物の工事で電気工事業者が確認すること
自家用電気工作物に係る工事を請け負う電気工事業者自身は、電気主任技術者の資格を持つ義務はありません。電気主任技術者は発注者(設置者)側が選任するもので、施工を請け負う電気工事業者が兼ねる立場ではないためです。
ただし、自家用電気工作物の新設・変更工事では、発注者側に保安規程・電気主任技術者の選任・工事計画届出等の手続きが別途あることを理解しておくと、施工の相手方の体制を把握しやすくなります。太陽光発電設備50kW以上の区分における設置者側手続きの例は太陽光発電設備の施工に必要な電気工事業登録と出力区分で整理しています。
逆に、一般用電気工作物等に係る電気工事のみを扱う登録電気工事業者・みなし登録電気工事業者は、主任電気工事士の選任義務はあっても、電気主任技術者の選任義務は生じません(電気主任技術者は自家用電気工作物側の制度のため)。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。 小規模事業用電気工作物に該当するかどうかの具体的な出力・電圧基準、主任技術者の選任方法(専任・選任許可・外部委託)の可否は、設置する電気工作物の内容にもとづき所轄の産業保安監督部・経済産業省の公式資料で確認してください。
まだ区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。