公式資料をもとに整理
電気工事業登録後に確認する義務(主任電気工事士・標識・帳簿)
登録電気工事業者や通知電気工事業者は、区分が決まった後も、事業を続ける間ずっと守る義務があります。主任電気工事士の設置、作業に必要な資格、請負や電気用品の制限、測定器具、標識、帳簿を、電気工事業法の条文から区分ごとに整理します。
公開日: 2026-08-06 / 最終更新: 2026-08-31 / 制度確認日: 2026-07-26
共通の義務と登録系だけの義務
作業資格に応じた従事の制限、請負わせの制限、電気用品の使用制限、測定器具の備付け、標識の掲示、帳簿の備付けは、登録電気工事業者・通知電気工事業者・みなし登録電気工事業者・みなし通知電気工事業者の4区分すべてに共通する義務です。根拠はe-Gov法令検索「電気工事業の業務の適正化に関する法律」第21条から第26条です。
主任電気工事士の設置だけは、一般用電気工作物等に係る電気工事を行う営業所を持つ登録電気工事業者とみなし登録電気工事業者に限られます(同法第19条、第34条第2項)。通知電気工事業者・みなし通知電気工事業者や、自家用電気工作物のみを扱う営業所には、この設置義務はありません。
主任電気工事士の設置と職務
選任要件、一人親方の特例、専任、欠員時の変更手続きは主任電気工事士の要件・選任・変更手続きで詳しく整理しています。ここでは登録後の義務全体との関係を確認します。
対象の営業所は、要件を満たす主任電気工事士を置かなければなりません。要件は第一種電気工事士、または第二種電気工事士免状の交付後に電気工事の実務経験を3年以上持ち、登録の欠格事由(同法第6条第1項第1号から第4号)に該当しない人です(同法第19条第1項)。
この欠格事由は、登録申請者自身(事業者)が登録を拒否される場合の事由(同項第1号から第6号)の一部でもあります。詳しくは電気工事業の登録を拒否される場合で整理しています。
登録電気工事業者自身(法人の場合はその役員のいずれか)がこの要件を満たし、その営業所の業務に自ら主として従事する場合は、別に主任電気工事士を置く必要はありません(同条第2項)。一人で開業する場合の設置義務は、この例外に当てはまるかどうかで変わります。
主任電気工事士が欠格事由に該当したとき、欠けたとき、営業所が新たに一般用電気工事を扱う営業所になったとき、新たに営業所を設置したときのいずれかに該当した場合は、該当することを知った日から2週間以内に選任しなければなりません(同条第3項)。
主任電気工事士が第一種電気工事士である場合、電気工事業法とは別に電気工事士法上の義務も生じます。
第一種電気工事士は、やむを得ない事由がある場合を除き、免状の交付を受けた日から5年以内に、経済産業大臣の指定する者が行う自家用電気工作物の保安に関する講習を受けなければなりません。以降も5年ごとに同様です(e-Gov法令検索「電気工事士法」第4条の3)。
経済産業省の「電気工事の安全」では、定期講習制度と実施機関への案内をまとめています。これは電気工事士個人が負う義務で、電気工事業の登録・通知の要件ではありませんが、主任電気工事士がこの講習を怠っている場合、実務上の対応が必要になります。
主任電気工事士は、特定営業所ごとに専任で置く必要があり、他の営業所や他の登録電気工事業者の営業所との兼務は認められません(経済産業省「電気工事業法に関する逐条解説」第19条解説)。電気工事業を営む法人の監査役は、会社法第335条第2項の規定により、その法人の主任電気工事士になることもできません(同解説第4条解説)。
主任電気工事士は、一般用電気工事で危険や障害が生じないよう作業の管理を誠実に行います。作業に従事する人は、主任電気工事士がその職務のために必要と認めて行う指示に従います(同法第20条)。
作業資格・請負・電気用品の制限
電気工事業者は、自家用電気工事の作業に第一種電気工事士でない人を、一般用電気工事の作業に第一種・第二種電気工事士でない人を、それぞれ経済産業省令で定める例外を除き従事させることはできません。特殊電気工事の作業は特種電気工事資格者に限りますが、簡易電気工事に限り認定電気工事従事者が従事できます(同法第21条)。対象工事の範囲と認定基準は特種電気工事資格者・認定電気工事従事者の認定基準と申請手続きで整理しています。
請け負った電気工事は、その電気工事に係る電気工事業を営む電気工事業者でない人へ請け負わせることはできません(同法第22条)。使用する電気用品も、電気用品安全法第10条第1項の表示(PSEマーク)が付いたものに限られます(同法第23条)。
対象品目の範囲とPSEマークの種類は電気用品安全法(PSEマーク)の対象と使用制限で詳しく整理しています。下請へ出す相手が登録電気工事業者かどうかは取引先の登録電気工事業者を確認する方法で確認できます。
測定器具の備付けと標識の掲示
営業所ごとに、扱う工事範囲に応じた測定器具を備えます(同法第24条、e-Gov法令検索「電気工事業の業務の適正化に関する法律施行規則」第11条)。分け方は区分(登録・通知・みなし)ではなく、その営業所が実際に自家用電気工事を扱うかどうかで決まります。
| 営業所が扱う工事範囲 | 備え付ける測定器具 |
|---|---|
| 一般用電気工事のみ | 絶縁抵抗計、接地抵抗計、抵抗及び交流電圧を測定することができる回路計 |
| 自家用電気工事を含む | 左記3点に加え、低圧検電器、高圧検電器、継電器試験装置、絶縁耐力試験装置(継電器試験装置と絶縁耐力試験装置は、必要なときに使用できる措置が講じられているものを含む) |
継電器試験装置・絶縁耐力試験装置の2点は、必ず現物を所有していなくても、同業者との賃貸契約や自社の他営業所から必要時にすぐ持ってこられる措置が講じられていれば「備え付けられている」と扱われます。経済産業省「電気工事業法に関する逐条解説」第24条解説は、この2点が工事の各段階よりも設備完成時の検査等で使うことが主で使用頻度が低く、他の器具と比べて高価なことを理由に挙げています。絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計・低圧検電器・高圧検電器の5点については、同解説にこの扱いへの言及がなく、営業所ごとに現物を備える必要があります。
標識は営業所と電気工事の施工場所ごとに掲げます。ただし電気工事が1日で完了する場合は、その施工場所への掲示は不要です(施行規則第12条第2項)。この1日の例外は施工場所だけの扱いで、営業所への掲示義務は対象になりません。
記載事項は区分で異なります。登録電気工事業者は氏名・名称と代表者名、営業所名称と工事の種類、登録年月日・登録番号、主任電気工事士等の氏名を記載した様式の標識を、通知電気工事業者は氏名・名称と代表者名、営業所名称、通知年月日・通知先を記載した様式の標識を掲げます。みなし登録電気工事業者・みなし通知電気工事業者は、登録年月日・登録番号や通知の年月日・通知先にあたる項目が読み替えられ、様式も別になります(施行規則第12条)。
標識の大きさは、令和7年7月31日施行の改正で「縦25cm以上・横35cm以上」に縮小できるようになりました(改正前は「縦35cm以上・横40cm以上」)。対象は登録電気工事業者とみなし登録電気工事業者の標識(様式第十五・様式第十六)で、通知電気工事業者・みなし通知電気工事業者の標識(様式第十五の二・様式第十六の二)については改正条文に記載がありません。
根拠は経済産業省「電気工事業の業務の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令について」と、その根拠となる経済産業省令第五十六号(官報掲載)です。既存の標識が改正前の大きさのままでも、改正後の下限を上回るため、この改正だけを理由に作り直す必要はありません。
帳簿の備付けと保存
営業所ごとに帳簿を備え、電気工事ごとに次の事項を記載します:注文者の氏名または名称・住所、電気工事の種類・施工場所、施工年月日、主任電気工事士等・作業者の氏名、配線図、検査結果。記載の日から5年間保存します(同法第26条、施行規則第13条)。
電磁的方法で記録し、必要なときにすぐ表示できるようにして保存する場合は、紙の帳簿の保存に代えることができます。その場合は、経済産業大臣が定める基準を確保するよう努めます(施行規則第13条の2)。
各項目の具体的な記載例と保存起算日の考え方は電気工事業の帳簿ガイドで解説しています。
義務違反時の罰則
ここまでの義務に違反した場合、電気工事業法は義務ごとに異なる罰則を定めています。危険等防止命令、登録取消し、立入検査を含む全体像は電気工事業法の監督処分と罰則で整理しています。
| 義務 | 罰則 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 欠員等を知った後の主任電気工事士の追加選任 | 3万円以下の罰金 | 第39条第1号 |
| 作業資格に応じた従事の制限 | 3月以下の拘禁刑もしくは3万円以下の罰金(併科されることがある) | 第37条第1号 |
| 請負の制限(電気工事業者以外への請負禁止) | 3月以下の拘禁刑もしくは3万円以下の罰金(併科されることがある) | 第37条第2号 |
| 電気用品の使用制限 | 10万円以下の罰金 | 第38条 |
| 測定器具の備付け | 3万円以下の罰金 | 第39条第2号 |
| 標識の掲示 | 1万円以下の過料 | 第42条第4号 |
| 帳簿の備付け・記載・保存 | 1万円以下の過料 | 第42条第5号 |
法人の代表者や従業員が業務に関して罰金刑の対象となる違反行為(上表のうち罰金・拘禁刑の5行)をした場合、行為者本人だけでなく、法人にも同じ罰金刑が科されます(両罰規定、同法第41条)。両罰規定が適用されるのは第36条から第40条までの違反に限られ、標識の掲示・帳簿の備付けの違反(第42条の過料)は対象に含まれません。
義務違反に対する罰則とは別に、注文者との間で電気工事に関して苦情が生じた場合の相談先は電気工事に関する苦情の処理のあっせん制度で整理しています。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。実際の営業所の数、扱う工事範囲、主任電気工事士の在籍状況を踏まえた最終確認は、所轄行政庁または経済産業省の公式資料で行ってください。
営業所が複数ある場合の提出先は複数営業所がある場合の電気工事業の提出先、登録の更新・変更・廃止の届出期限は電気工事業登録・通知の更新・変更・廃止の手続きで整理しています。次の更新期限を確認したい場合は登録更新期限の計算ツールで概算できます。
まだ区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、区分ごとの義務の概要を表示できます。