公式資料をもとに整理

電気工事業の登録・通知が不要なケースの境界

電気工事業法上の登録・通知が必要になるのは「電気工事業」を営む場合です。他者からの依頼、反復・継続、家庭用電気機械器具の販売に付随する工事かどうかで対象の内外が分かれます。経済産業省の逐条解説にある具体例から、この境界を整理します。

公開日: 2026-08-06 / 最終更新: 2026-09-13 / 制度確認日: 2026-07-26

新規開業か、既存事業の承継・再開かで迷う場合

本ツールの最初の質問(新しく始める/すでに登録・通知済み/分からない)は、これから新規に電気工事業を始めるのか、既存の事業を前提とした手続きに当たるのかを分けるためのものです。次のいずれかに当てはまる場合は、「新しく始める」ではなく既存事業側の手続きを確認してください。

上記のいずれにも当てはまらず、これから初めて電気工事業を始める場合は「新しく始める」を選び、そのまま次の質問に進んでください。

対象かどうかを確認する順序

対象かどうかは、次の5つを順番に確認します。1つでも「いいえ」があれば、その時点で「電気工事業」には当たらない可能性があります。

  1. 他者から依頼を受けているか

    自宅の工事など、他者からの依頼を伴わない場合は対象外です。

  2. 自ら施工の全部または一部を行うか

    施工そのものに関わらない場合は対象外です。

  3. 反復・継続して行うか

    1回限り、試験的・一時的な工事は「反復・継続」に当たらない具体例として整理されています。

  4. 電気工事士法上の電気工事に当たるか

    電気工事士法上の電気工事でなければ、電気工事業法の対象になりません。

  5. 家庭用電気機械器具の販売に付随する工事だけではないか

    販売した者が販売行為に伴って行う局部的な工事だけの場合は除外されます。

この5条件は、本ツールの診断がまず確認する対象判定と同じ考え方です。工事範囲が電気工事業に当たる場合、次に4区分(建設業許可の有無・扱う電気工作物の種類)の判定に進みます。

登録・通知を受けずに電気工事業を営んだ場合、1年以下の拘禁刑もしくは10万円以下の罰金、またはその併科の対象になります(電気工事業法第36条第1号)。詳しい罰則の内訳は電気工事業法の監督処分と罰則で整理しています。

「電気工事業」の定義

電気工事業法上の「電気工事業」は、電気工事の施工を反復・継続して行う事業です(e-Gov法令検索「電気工事業の業務の適正化に関する法律」第2条第2項)。ここでいう電気工事は電気工事士法上の電気工事を指しますが、家庭用電気機械器具の販売に付随して行う工事は除かれます(同法第2条第1項)。

この「電気工事業」に当たるかどうかの話と、実際に施工する人が電気工事士免状を持っているかどうかの話は別の論点です。個人の作業資格(電気工事士免状)と事業者単位の手続き(登録・通知)の違いは電気工事士免状と電気工事業登録・通知の違いで整理しています。

登録・通知の対象外となる軽微な工事6類型

次の6類型は電気工事士法施行令第1条により「電気工事」から除かれるため、これらだけを反復・継続して行っても、電気工事業法上の登録・通知の対象にはなりません。経済産業省の「電気工事士等資格が不要な『軽微な工事』とは」が示す範囲を要約すると、次のとおりです。

電気工事士法施行令第1条の軽微な工事
類型対象となる工事主な条件
1接続器・開閉器へコードまたはキャブタイヤケーブルを接続使用電圧600V以下
2電気機器または蓄電池の端子へ電線をねじ止め使用電圧600V以下。配線器具は除く
3電力量計・電流制限器・ヒューズの取付けまたは取外し使用電圧600V以下
4電鈴・インターホン・火災感知器などに使う小型変圧器の二次側配線小型変圧器の二次電圧36V以下
5電線を支持する柱・腕木などの設置または変更電線そのものの接続工事ではない
6地中電線用の暗渠または管の設置・変更電線そのものの敷設・接続工事ではない

「軽微な工事」と、電気工事士法施行規則第2条の「軽微な作業」は別です。後者は電気工事には含まれるものの、保安上支障がないため資格を要しない作業です。

資格が不要な作業というだけで、電気工事業の登録・通知まで不要とは判断できません。予定する作業が上の6類型そのものか、電気工事に含まれる軽微な作業かを分けて確認してください。

反復・継続に当たらない具体例

経済産業省の「電気工事業法に関する逐条解説」は、他の者から依頼を受けた者が自ら電気工事の全部または一部の施工を反復・継続して行う場合を「電気工事業」とし、有償・無償は問わないとしています。一方で、次のような場合は反復・継続に当たらないと解釈されています。

ビル管理業者が自社ビル内の電気工事を自ら反復・継続して行っている場合も、それ自体は電気工事業に当たらないとされています。ただし、他の者から依頼を受けて行う部分が含まれれば、その部分は対象になります(経済産業省「電気工事業法に関する逐条解説」第2条解説4)。

家庭用電気機械器具の販売に付随する工事

家庭用電気機械器具の販売業者が、販売に伴ってコンセントを設けるなどの配線工事を局部的に行うことは、電気工事業法上の電気工事から除かれます。これは、家庭用電気機械器具の販売に伴う消費者サービスとして一般的であることや、電気工事業者がいない山間僻地でも定型的・軽易な工事を行えるようにする趣旨です(同解説第2条解説1)。

除かれるのは「販売した者が販売行為に伴ってその販売した物に係る工事」に限られます。他人が販売した物に係る工事や、販売の当初以外に行う工事は対象外です(同解説第2条解説3)。

対象となる家庭用電気機械器具は、テレビジョン受信機・電気冷蔵庫・電気洗濯機・電子レンジなど主として家庭で使用される機器で、電圧200V以上で使用する機器の工事は除外の対象になりません(同解説第2条解説2)。幹線に係る工事、分岐回路の増設工事、分岐過電流保護器の容量変更を伴う工事、屋側配線・屋外配線に係る工事も、この除外の対象にはならず、登録を受けた者が行うべきものとされています(同解説第2条解説1)。

全部を下請に出す元請と、施工する下請

請け負った電気工事をすべて電気工事業者へ下請させ、自社では施工を一切行わない元請は、電気工事業法上の「電気工事業」には当たらず、同法上の登録・通知は必要ありません。一方、自社で施工の全部または一部を反復・継続して行う場合は電気工事業に当たり、実際に施工する下請事業者にも、その工事範囲に応じた登録・通知等が必要です(経済産業省「電気工事業法に関する逐条解説」第2条・第22条解説)。

施工する主体ごとの電気工事業法上の整理
ケース電気工事業法上の整理次に確認すること
元請が自社施工を一切せず、全部を下請へ出す元請は「電気工事業」に当たらず、同法上の登録・通知は不要施工する下請の登録・通知等と、建設業許可・一括下請負規制
元請が施工の一部を自社で行う反復・継続して行うなら元請も「電気工事業」に該当扱う電気工作物と建設業許可の有無から4区分を確認
下請が実際の電気工事を施工する下請にも工事範囲に応じた登録・通知等が必要元請が登録済みでも、下請自身の手続きを別に確認

電気工事の請負契約自体は電気工事業者でなくても結べます。ただし、1件の請負金額が500万円以上の工事では建設業許可の確認が別に必要です。

金額の考え方は電気工事業登録と建設業許可の違いで整理しています。また、電気工事業者は、請け負った電気工事を、その工事に係る電気工事業を営む電気工事業者でない者へ請け負わせることができません(電気工事業法第22条)。

ここでいう電気工事業法第22条の制限と、建設業法第22条の「一括下請負の禁止」は、条番号が同じでも別の規制です。建設業法第22条は、建設業者が請け負った建設工事を一括して他人へ請け負わせることと、その工事を一括して請け負うことを原則として禁止しています(e-Gov法令検索「建設業法」第22条第1項・第2項)。

電気工事業法第22条と建設業法第22条の違い
規制確認する相手・行為この節での要点
電気工事業法第22条請け負わせる相手が、その工事に係る電気工事業を営む電気工事業者かその工事に係る電気工事業を営む電気工事業者でない者への請負を禁止する規制
建設業法第22条請け負った建設工事を一括して他人へ請け負わせていないか工事の全部、主たる部分などの一括下請負を原則として禁止する規制

電気工事業者へ発注していれば、建設業法上の一括下請負の問題まで自動的に解消するわけではありません。元請・下請の関係では、請負先が電気工事業者かという確認と、工事の全部、主たる部分または独立して機能する一部分を、元請が実質的に関与せず一括して請け負わせていないかという確認を分けて行います。

建設業法第22条第3項には、共同住宅を新築する工事以外について発注者から事前に書面承諾を得る限定的な例外があり、第4項はその承諾を電子的方法で行う場合の規定です。公共工事にはこの例外が適用されません。

発注者との事前協議に加え、個別の工事への適用は建設業許可行政庁へ確認してください(国土交通省「一括下請負の禁止について」)。

境界に近いケースの読み方

家電機器販売業者が軽微な工事をしながら、電気工事を断続的に1、2件でも施工するような場合は、電気工事業に該当すると解釈されています(同解説第2条解説4)。「販売に付随する軽易な工事だから」という理由だけで対象外と決めつけず、他者からの依頼の有無、施工の反復性、販売行為との結びつきを個別に確認します。

ここまでの具体例を、判定結果とあわせて一覧にします。同じ「1、2件」でも、反復性や依頼の有無によって判定が分かれる点に注意してください。

具体例と判定結果の一覧
具体例判定結果
電気工事士の免状を持つ人が、たまたま自宅の電気工事を行う場合対象外(反復・継続に当たらない)
試験的・一時的に電気工事を行う場合対象外(反復・継続に当たらない)
他の業を持つ人が、たまたま1回限り電気工事を行う場合対象外(反復・継続に当たらない)
住宅メーカーがアフターサービスとして一時的にコンセント・スイッチを交換する場合(新設・移設・増設を含まない、造営材に取り付けてある配線器具の不具合による交換に限る)対象外(反復・継続に当たらない)
ビル管理業者が自社ビル内の電気工事を自ら反復・継続して行う場合対象外(他者からの依頼を受けて行う部分は対象)
家庭用電気機械器具の販売業者が、販売に伴ってコンセントを設けるなどの配線工事を局部的に行う場合対象外(家庭用電気機械器具の販売に付随する工事の除外)
家電機器販売業者が軽微な工事をしながら、電気工事を断続的に1、2件でも施工する場合対象(反復性が認められる)

公式窓口で確認する事項

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。実際の工事が電気工事業に当たるかどうかは、所轄行政庁または経済産業省の公式資料で最終確認してください。電気工事業に当たる場合の4区分と建設業許可の関係は電気工事業登録と建設業許可の違いで、4区分のうち登録電気工事業者になる場合の要件・手続きは登録電気工事業者とはで、登録・通知後に確認する義務は電気工事業登録後に確認する義務で整理しています。

個人事業として開業する場合、税務署への開業届は電気工事業法の登録・通知とは別の手続きです。両者の違いは開業届と電気工事業登録・通知の違いで整理しています。

自分の予定する工事が対象になるか分からない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、対象外に当たる項目を確認事項として表示できます。

一次資料の一覧は公式資料・根拠、判定ルールの検証記録は公開ルール台帳で確認できます。