公式資料をもとに整理
電気工事業登録の承継(相続・事業譲渡・合併・分割)
登録電気工事業者の承継は、事業の全部が移る場合に限られます。事業譲渡、相続、合併、会社分割の違いと、30日以内の届出、変更届との関係を整理します。
公開日: 2026-08-11 / 最終更新: 2026-08-22 / 制度確認日: 2026-07-26
承継できる4つの場面
e-Gov法令検索「電気工事業の業務の適正化に関する法律」第9条は、登録電気工事業者について、事業全部の譲渡、相続、法人の合併、法人の分割(登録事業の全部を承継させる場合)に地位の承継を認めています。
事業の一部だけの譲渡や、一部だけを移す会社分割は、第9条の承継対象ではありません。経済産業省「電気工事業法の逐条解説」も、全部の譲渡だけを承継対象と説明しています。
| パターン | 対象範囲の条件 | 届出期限の起算点 |
|---|---|---|
| 事業譲渡 | 事業の全部の譲渡に限る(一部だけの譲渡は対象外) | 承継の日から30日以内 |
| 相続 | 相続人が2人以上のときは、全員の同意により選定した1人が承継者 | 相続の開始を知った日から30日以内 |
| 合併 | 法人の合併 | 承継の日から30日以内 |
| 会社分割 | 登録事業の全部を承継させる場合に限る(一部だけを移す分割は対象外) | 承継の日から30日以内 |
4パターンいずれも根拠は第9条第1項(対象範囲)・第9条第3項(届出期限)です。詳しい内容は次の各節で確認してください。
相続人が複数いる場合
相続人が2人以上いるときは、全員の同意により事業を承継する相続人を選定した場合、その人が承継者になります。逐条解説は「相続」を電気工事業の包括承継とし、分割承継を含まないと説明しています。
誰が事業全部を承継したかを示す証明書類は承継形態ごとに異なります。行政庁の公式様式と添付書類一覧を使い、相続関係・譲渡・合併・分割を証する書類を確認します。
建設業許可の相続認可は別手続
個人の建設業許可を受けていた人が亡くなり、相続人が許可を受けていた建設業の全てを継続しようとする場合は、電気工事業法上の承継届とは別に、e-Gov法令検索「建設業法」第17条の3による相続認可を、死亡後30日以内に申請して受ける必要があります。一部の許可業種だけを相続する扱いは認められません。
相続認可を申請した場合は、死亡日から認可または不認可の通知を受ける日まで、被相続人への建設業許可が相続人に対する許可とみなされます。ただし、同一業種について一般建設業・特定建設業の反対側の許可を既に持つ場合など、法定の例外があります。建設業許可の相続認可は、登録電気工事業者の地位承継(電気工事業法第9条)とは根拠法令・対象許可が異なるため、両方の手続きが関係する場合は別々に確認してください。
国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」は、申請者と被相続人との続柄を示す戸籍謄本等、他の相続人がいる場合の全員による承継同意の書面を相続認可申請書類として扱うとしています。個別の添付書類・提出先・許可基準は、許可行政庁の案内で確認してください。
欠格事由に該当すると承継できない場合
承継者が第6条第1項第1号から第5号までの欠格事由に該当する場合、第9条の地位承継は認められません。主任電気工事士に関する第6号は除かれていますが、営業を続けるには第19条の配置義務を満たす必要があります。
欠格事由の内容は登録を拒否される場合で整理しています。
承継日から30日以内の届出
承継者は、承継の日から30日以内に行政庁へ届け出ます。相続の場合は、相続開始を知った日から30日以内です(第9条第3項)。承継により営業所名、役員、氏名・名称、住所などが変わる場合は、第9条の承継届とは別に、第10条の変更届も同時に確認します。
承継の届出をせず、または虚偽の届出をした場合は、1万円以下の過料が科されます(第42条第1号)。
事業の全部を譲渡して第9条の承継が成立した場合は事業の廃止に当たらないため、廃止の届出(第11条)は不要です。個人の登録電気工事業者が死亡して相続人が相続を放棄した場合や、法人の登録電気工事業者が解散した場合も、承継が成立しないまま事業が終わるため廃止の届出は不要です。詳しくは更新・変更・廃止の手続きで確認できます。
経済産業大臣登録とみなされる3パターン
行政庁をまたぐ登録を承継すると、第9条第2項により承継した部分が経済産業大臣(または産業保安監督部長)の登録とみなされる場合があります。パターンは3つに分かれます。
- すでに経済産業大臣登録を持つ者が都道府県知事登録の事業を承継した場合、承継した都道府県知事登録の部分が経済産業大臣登録とみなされます(第1号)。
- すでに都道府県知事登録を持つ者が経済産業大臣登録または他の都道府県の知事登録の事業を承継した場合、自分の都道府県知事登録と承継した部分の両方が経済産業大臣登録とみなされます(第2号)。
- まだ登録を持たない者が経済産業大臣登録と都道府県知事登録を同時に承継した場合、または異なる複数の都道府県の知事登録を同時に承継した場合、承継した都道府県知事登録の部分が経済産業大臣登録とみなされます(第3号)。
この場合、従前の都道府県知事登録はみなし切替と同時に効力を失い(第13条第2項)、その都道府県知事への変更届は不要で、登録証の返納で足ります(第15条)。承継前後の営業所所在地を整理し、提出先は複数営業所がある場合の提出先で確認してください。
承継後の登録の有効期間と登録番号
登録の有効期間(5年)は、承継によってリセットされるわけではありません。経済産業省「電気工事業の業務の適正化に関する法律の事務処理要領(内規)」は、承継者が承継前から登録電気工事業者だったかどうかで、引き継がれる有効期間が変わると整理しています。
| 承継者の状態 | 引き継がれる有効期間 |
|---|---|
| 未登録の者が1件の地位を承継 | 被承継者の登録の有効期間の残期間 |
| 未登録の者が2件以上の地位を承継 | 各被承継者の残期間のうち最も長い期間 |
| 既に登録済みの者が他者の地位を承継 | 自らの登録の有効期間の残期間 |
| 2件以上の合併により設立された法人 | 各被承継者の残期間のうち最も長い期間 |
登録番号も、有効期間の残期間が採用される側の登録証の番号にそろえられます。統一されなかった側の登録証は、承継の届出書に添付して返納します。登録簿も、番号が統一された登録証にあわせて整理されます。
引き継いだ有効期間から更新期限を確認したい場合は登録電気工事業者の更新期限を計算するも参照してください。
通知業者・法人成りとの違い
第9条は「登録電気工事業者」の承継規定です。通知電気工事業者には同条の明文準用がないため、事業主体が変わる場合の扱いを登録業者と同じと決めつけず、所轄行政庁へ確認します。
個人から法人への移行は、法人という別主体へ事業を移す場面です。電気工事業登録だけでなく建設業許可もある場合は、法人成り時の電気工事業登録と建設業許可も確認してください。
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。承継の成立、対象事業の範囲、相続関係や会社再編の判断は、契約や登記の効力発生日より前に所轄行政庁へ確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。