公式資料をもとに整理
電気工事業法の監督処分と罰則(立入検査・登録取消し)
行政上の監督措置と、刑事罰・過料は別の制度です。危険等防止命令、登録取消し・事業停止、報告徴収・立入検査がどのように置かれ、どの違反に罰則が対応するかを整理します。
公開日: 2026-08-11 / 最終更新: 2026-10-03 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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監督措置の全体像
e-Gov法令検索「電気工事業の業務の適正化に関する法律」は、第27条から第31条に監督、第36条から第42条に罰則を置いています。監督には危険等防止命令、登録の取消し・事業停止、報告徴収・立入検査が含まれます。
処分や罰則の前提となる違反は一様ではありません。無登録営業、虚偽登録、作業資格や請負の制限への違反、行政命令への違反、届出・帳簿・標識の不備など、行為ごとに条文を確認する必要があります。
危険等防止命令・登録取消し・事業停止
行政庁は、故意・過失により電気工事を粗雑にして危険・障害が発生したか、そのおそれが大きい場合、または電気用品の使用制限・測定器具の備付けに違反している場合、危険・障害の防止に必要な措置を命じられます(第27条)。第27条の危険等防止命令は、登録電気工事業者と通知電気工事業者にそのまま適用されます。みなし登録・みなし通知の区分にも、建設業者に関するみなし規定(第34条)を通じて適用されます。
登録取消し・事業停止は、危険等防止命令とは別に第28条で定められています。対象となる事由は、不正な手段による登録、欠格事由への該当、変更届出義務の違反(虚偽の届出を含む)、主任電気工事士の追加選任や作業資格・請負制限の違反、危険等防止命令の違反などで、該当する条項は下の一覧に示します。処分要件に該当するかは個別事実を踏まえて行政庁が判断します。
登録取消し・事業停止に至りうる主な事由を整理すると次のとおりです。危険等防止命令違反は、登録取消し・事業停止に至りうる事由の1つであり、必ず経由する前段階ではありません。不正な手段による登録など、危険等防止命令を経ずに直接この処分の対象になる事由もあります。
処分前の聴聞・審査請求時の意見聴取という手続的な保障は、次の「処分前の聴聞と審査請求時の意見聴取」で別途整理します。
危険等防止命令(第27条)
危険・障害の発生またはそのおそれが大きい場合などに、行政庁が必要な措置を命じます。登録取消し・事業停止に至りうる事由の1つです。
行政庁が命じられる措置としては、①ただちに当該電気工事を中止して危険等を除去すべきこと、②技術基準に適合して電気工事を施工すること、③表示を附していない電気用品の取替え、④絶縁抵抗計等の備付け、⑤施工方法の改善が挙げられます(逐条解説による例示)。「故意又は過失により電気工事を粗雑にした」の例としては、建売住宅を安く完成しようとするために技術基準を無視した工事を行うような場合が挙げられます。
登録取消し・事業停止命令(第28条)
次のいずれかの事由に該当する場合に行われます。危険等防止命令違反、不正な手段による登録、欠格事由〈第6条第1項第1号・第3号・第5号〉該当、変更届出義務〈第10条第1項〉違反、主任電気工事士の追加選任義務〈第19条第3項〉違反、作業資格・請負制限違反。
処分前の聴聞と審査請求時の意見聴取
登録取消し・事業停止命令(第28条第1項・第2項)を行おうとするときは、行政庁は行政手続法上の通常の区分にかかわらず、必ず公開の聴聞を行わなければなりません(第30条)。聴聞の期日で処分に係る利害関係人が手続への参加を求めたときは、主宰者はこれを許可しなければなりません。
この聴聞を行わずに登録取消し等の処分をした場合、その処分は無効になります。この法律に基づく処分(登録の拒否〈第6条〉、電気工事の施工差止め〈第17条第2項〉、危険等防止命令〈第27条〉、登録取消し・事業停止命令〈第28条〉)に対して審査請求をした場合も、却下する場合を除き、審理員による公開の意見聴取を経てから裁決されます(第31条)。審査請求人・利害関係人は、証拠を示し意見を述べる機会を与えられます。
報告徴収と立入検査
行政庁は、法律の施行に必要な限度で、電気工事業者へ業務に関する報告を求め、職員に営業所・施工場所などへ立ち入り、帳簿・書類・設備を検査させることができます(第29条)。個人の居住場所には、関係者の承諾がなければ立ち入れません。立入職員は身分証明書を携帯し、関係者から求められたときは提示します。
検査される場所・備えておく書類の確認先は立入検査・報告徴収で見られる書類と罰則で整理しています。
この立入検査権は犯罪捜査のためのものではありません。もっとも、報告をしない、虚偽報告をする、検査を拒み・妨げ・忌避する行為には罰則があります。
報告徴収・立入検査の対象範囲は、電気工事業法第29条第1項で分けられています。経済産業大臣は電気工事業を営むすべての者、都道府県知事はその都道府県内で電気工事業を営む者が対象ですが、知事の対象からは経済産業大臣の登録を受けた者・大臣に通知した者が除かれます。
電気工事業法施行令第2条第2項は、大臣の権限のうち第27条第1項の危険等防止命令と第29条第1項の報告・検査を、営業所の所在地、電気工事の施工場所その他業務に関係する場所を管轄する産業保安監督部長が行うと定めています。第29条第1項の権限については、大臣が自ら行うことも妨げられません。登録・届出の提出先を決める規定と、検査等の権限を定めるこの規定は区別して確認してください。
経済産業省「電気工事業法の事務処理要領(内規)」の7は、産業保安監督部長が大臣登録・通知の事業者へ危険等防止命令を行った場合、大臣へ通知する取扱いを示しています。同8は、経済産業大臣又は産業保安監督部長が他の行政庁の登録・通知事業者へ報告徴収・立入検査を行った場合、その登録・通知に係る行政庁へ内容等を通知する取扱いを示しています。
内規7・8は、みなし登録・みなし通知の事業者にも適用する旨を付記しています。これらは行政庁内部の取扱いであり、事業者が追加で提出する届出を示すものではありません。
主な罰則
この表は現行法の「拘禁刑」という名称で整理しています。e-Govパブリックコメントの参照条文(刑法改正と施行期日政令)には、懲役・禁錮を拘禁刑へ改める規定と、改正法の施行日を2025年6月1日とする政令が収録されています。
改正前の経産省の逐条解説にある「懲役」と名称が異なる点に注意してください。過去の行為にどの規定が適用されるかは、ここでは判定していません。
| 条文 | 違反行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 第36条 | 第3条第1項または第3項の登録を受けないで電気工事業を営んだ者(無登録営業) | 1年以下の拘禁刑もしくは10万円以下の罰金、または併科 |
| 不正の手段により登録を受けた者 | ||
| 第28条第1項または第2項の登録取消し・事業停止命令に違反した者 | ||
| 第37条 | 作業資格の制限(第21条第1項・第2項・第3項)に違反して無資格者に自家用電気工事・一般用電気工事の作業に従事させた者 | 3月以下の拘禁刑もしくは3万円以下の罰金、または併科 |
| 請負の制限(第22条)に違反して電気工事を請け負わせた者 | ||
| 第38条 | 電気用品の使用制限(第23条。詳細は電気用品安全法のPSEマーク対応)に違反して電気用品を使用した者 | 10万円以下の罰金 |
| 第39条 | 第19条第3項の主任電気工事士の追加選任義務に違反して選任をしなかった者 | 3万円以下の罰金 |
| 測定器具の備付け(第24条。詳細は営業所に備える測定器具)に違反して備えなかった者 | ||
| 第40条 | 変更の届出(第10条第1項・第34条第4項)をせず、または虚偽の届出をした者 | 2万円以下の罰金 |
| 通知(第17条第1項後段、第28条第4項準用を含む)をしなかった者 | ||
| 通知(第17条の2第1項、同条第4項準用第10条第1項、第34条第5項)をせず、または虚偽の通知をした者 | ||
| 報告徴収(第29条第1項)による報告をせず、または虚偽の報告をした者 | ||
| 報告徴収(第29条第1項)による検査を拒み・妨げ・忌避し、または質問に答弁せず・虚偽の答弁をした者 | ||
| 第42条 | 各種届出(第8条第2項・第3項、第9条第3項、第11条)をせず、または虚偽の届出をした者 | 1万円以下の過料 |
| 登録証の返納(第15条)に違反して返納しなかった者 | ||
| 通知(第17条の2第2項・第3項、同条第4項準用第11条)をせず、または虚偽の通知をした者 | ||
| 標識の掲示(第25条。詳細は標識の記載事項・掲示場所)に違反して標識を掲げない者 | ||
| 帳簿(第26条。詳細は帳簿の記載事項・保存期間)の記載事項を記載せず、虚偽の記載をし、または保存しなかった者 |
法人の代表者・従業員などが業務に関して第36条から第40条までの違反行為をした場合、行為者に加え、法人または事業主にも各条の罰金刑を科す両罰規定があります(第41条)。第42条の過料はこの両罰規定の対象に含まれません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。検査・命令・処分を受けた場合や違反の可能性がある場合は、通知書面と事実関係をもとに所轄行政庁へ確認してください。
平時の義務は登録後に確認する義務、登録申請時の欠格事由は登録を拒否される場合で確認できます。建設業許可(電気工事業)を持つ事業者への指示・営業停止・許可取消しは、根拠法・処分権者が異なるため建設業許可(電気工事業)の監督処分で別に整理しています。
区分が未確認なら電気工事業区分セルフチェックを使うと、登録・通知の目安を確認できます。