公式資料をもとに整理
電気工事業の最低賃金(時間額への換算と除く手当)
日給・月給・出来高払で雇う電気工事の職人にも、事業場のある都道府県の地域別最低賃金(時間額)が適用されます。賃金を時間あたりの金額に換算し、通勤手当・家族手当・精皆勤手当・割増賃金・賞与などを除いた額が最低賃金額以上かどうかで確認します。換算の方法、除く賃金、下回っていたときの扱い、減額の特例、罰則の順に見ていきます。
公開日: 2026-10-19 / 最終更新: 2026-10-19 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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最低賃金が適用される人と種類
最低賃金法第4条第1項は、最低賃金の適用を受ける労働者に、最低賃金額以上の賃金を支払うよう使用者に求めています(e-Gov法令検索「最低賃金法」)。ここでいう労働者は、労働基準法第9条の労働者です。ただし、同居の親族だけを使用する事業や、家事使用人は含まれません(最低賃金法第2条第1号)。
最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。地域別最低賃金は、産業や職種に関係なく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。
特定最低賃金は、特定の地域の特定の産業の基幹的労働者に適用されます。両方が同時に適用されるときは、高い方の額以上を支払います(厚生労働省「最低賃金制度の概要」、最低賃金法第6条第1項)。
地域別最低賃金の額と発効日は、令和8年度分が厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」にまとまっています(厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」)。発効日は都道府県ごとに異なるため、この記事では金額を載せず、事業場のある都道府県の行で確認してください。
日給・月給・出来高払を時間額にする方法
最低賃金は時間額で定められているため、賃金を時間あたりの金額に換算して比べます。換算の方法は、最低賃金法施行規則第2条第1項に定められています(e-Gov法令検索「最低賃金法施行規則」)。
| 賃金の決め方 | 時間額の出し方 |
|---|---|
| 日給 | 日給額 ÷ 1日の所定労働時間数(日によって違う場合は、1週間の1日平均所定労働時間数) |
| 週給 | 週給額 ÷ 週の所定労働時間数(週によって違う場合は、4週間の1週平均所定労働時間数) |
| 月給 | 月給額 ÷ 月の所定労働時間数(月によって違う場合は、1年間の1か月平均所定労働時間数) |
| 出来高払制などの請負制 | 賃金算定期間の出来高賃金の総額 ÷ その期間の出来高で働いた総労働時間数 |
現場ごとに就業時間が変わる電気工事の職人は、日給の割り算に使う時間が日によって違うことがあります。その場合は、1週間の1日平均所定労働時間数で割ります。休日手当のように上の各号に当たらない賃金(時間で定められた賃金を除く)は、月によって定められた賃金とみなして換算します(同条第2項)。
残業代の計算でも日給を所定労働時間で割る手順を使いますが、そちらは割増賃金の基礎になる賃金に入れる手当が別に決まっています。割増賃金の方は残業代・割増賃金の計算のガイドで確認できます。
最低賃金の比較に入れない賃金
最低賃金の対象は、毎月支払われる基本的な賃金です。実際に支払う賃金から、次の賃金を除いた額で比べます。
| 除く賃金 | 根拠 |
|---|---|
| 臨時に支払われる賃金 | 施行規則第1条第1項 |
| 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) | 施行規則第1条第1項 |
| 所定労働時間を超える労働に対する賃金(残業代) | 施行規則第1条第2項第1号 |
| 所定労働日以外の日の労働に対する賃金(休日労働の賃金) | 施行規則第1条第2項第2号 |
| 午後10時から午前5時までの労働に対する賃金のうち、通常の賃金を超える部分(深夜の割増分) | 施行規則第1条第2項第3号 |
| 精皆勤手当・通勤手当・家族手当 | 最低賃金法第4条第3項第3号、厚生労働省「最低賃金制度の概要」 |
現場手当、資格手当、高所手当などの呼び名の手当は、上の表に並んでいないため、この記事では除けるとは言えません。毎月支払われる基本的な賃金に当たるかどうかは、手当の実態で決まります。固定残業代(みなし残業代)の名目で支払っている部分が、所定労働時間を超える労働への賃金として除く対象になるかどうかも、個別の契約で確認が必要です。
賃金を現物で支払う場合や、食事などの代金を賃金から引く場合は、それらを適正に評価する必要があります(最低賃金法第5条)。
計算例(仮の数字)
次は、手順を確認するための仮の数字です。地域別最低賃金は、説明のため1時間1,000円と仮定します。実際の額は、事業場のある都道府県の最新の額で置き換えてください。
- 日給12,000円・1日の所定労働時間8時間の職人は、12,000 ÷ 8 = 1,500円で、仮の1,000円以上です。
- 日給7,600円・1日の所定労働時間8時間の職人は、7,600 ÷ 8 = 950円で、仮の1,000円を下回ります。
- 月給170,000円のうち通勤手当が10,000円で、月平均の所定労働時間が170時間の職人は、通勤手当を除いた160,000 ÷ 170 = 約941円で、仮の1,000円を下回ります。通勤手当を含めた170,000 ÷ 170 = 1,000円で比べると、基準を満たしたように見えてしまいます。
所定労働時間の決め方は、雇入れ時の労働条件通知書や就業規則で定めます。時間数があいまいなままだと換算の分母が定まらないため、先に労働条件通知書と就業規則のガイドで書面の項目を整えておくと確認しやすくなります。
下回っていたときの扱いと減額の特例
最低賃金額に達しない賃金を定めた労働契約は、その部分が無効になります。無効になった部分は、最低賃金と同じ定めをしたものとみなされます(最低賃金法第4条第2項)。労働者に合意があっても、最低賃金を下回る定めは有効になりません。
労働者の都合で所定労働時間や所定労働日に働かなかった場合や、使用者が正当な理由で働かせなかった場合は、働かなかった時間・日に対応する分の賃金を支払わないことは妨げられません(同条第4項)。
減額の特例もあります。使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者、試みの使用期間中の者、認定職業訓練を受ける一定の者、軽易な業務に従事する者などについて、最低賃金額から一定の率を減額した額を適用できます(同法第7条)。許可を受けずに、試用期間だからといって減額することはできません。
罰則
地域別最低賃金(船員に適用される特定最低賃金を含む)について、最低賃金法第4条第1項に違反した使用者は、50万円以下の罰金に処せられると定められています(同法第40条)。それ以外の特定最低賃金の違反の扱いは、この記事では扱いません。
この整理で言えないこと
- 個々の手当が最低賃金の比較に入るかどうか、固定残業代の区分は、手当の実態と契約で異なり、この記事では判定できません。
- 請負で働く一人親方などが労働基準法第9条の労働者に当たるかどうかは、働き方の実態で決まり、この記事では判定できません。
- 事業場のある都道府県の最新の最低賃金額、特定最低賃金の有無と額、障害のある人や試用期間中の人の減額率は載せていません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。最低賃金額との比較、手当の扱い、減額の特例の許可は、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局で最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
求人票への賃金・固定残業代の書き方は求人で明示する労働条件のガイド、賃金の記録の備え方は労働者名簿と賃金台帳のガイド、根拠法の全体像は労働基準法とは(目的・労働条件の明示・労働時間・割増賃金・有給休暇の条文ごとの内容)で確認できます。