公式資料をもとに整理
電気工事の従業員に必要な特別教育(低圧・高圧の科目と時間・記録3年保存)
電気工事の従業員を低圧や高圧の充電電路の作業につかせる事業者は、労働安全衛生法第59条第3項により、その業務の特別教育を行う義務があります。これは電気工事士免状や電気工事業の登録とは別の、労働者の安全衛生に関する義務です。安衛則第36条第4号の対象業務、特別教育規程の科目と時間、記録の保存、科目の省略、違反時の罰則を条文から整理します。
公開日: 2026-10-04 / 最終更新: 2026-10-04 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
特別教育が必要な電気の業務(安衛則第36条第4号)
特別教育が必要になるのは、高圧・特別高圧の充電電路の敷設・点検・修理・操作と、低圧の充電電路の敷設・修理、露出した充電部分のある低圧開閉器の操作です。労働安全衛生法第59条第3項は、危険または有害な業務で厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときに、その業務の安全衛生のための特別の教育を行うことを事業者に義務づけています。省令で定める業務を並べたのが労働安全衛生規則第36条で、電気は第4号です(労働安全衛生規則(e-Gov法令検索))。
| 電圧の区分 | 電圧の定義(同号) | 対象の業務 |
|---|---|---|
| 特別高圧 | 7,000ボルトを超える電圧 | 充電電路またはその支持物の敷設、点検、修理、操作 |
| 高圧 | 直流は750ボルトを、交流は600ボルトを超え、7,000ボルト以下 | 充電電路またはその支持物の敷設、点検、修理、操作 |
| 低圧 | 直流は750ボルト以下、交流は600ボルト以下 | 充電電路の敷設、修理。配電盤室・変電室など区画された場所にある、充電部分が露出している開閉器の操作 |
低圧の充電電路には、対地電圧が50ボルト以下のもの、電信用・電話用など感電による危害を生ずるおそれのないものは含まれません。低圧では「点検」が対象業務の文言に入っていない点に注意が必要で、条文の読み方を迷う作業は所轄の労働基準監督署に確認してください。
低圧・高圧の科目と時間数(特別教育規程)
特別教育の科目と時間は、安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)の第5条(高圧・特別高圧)と第6条(低圧)が、学科教育と実技教育に分けて最低時間を定めています。厚生労働省が公開する告示の原文では次のとおりです(厚生労働省「安全衛生特別教育規程」)。
| 区分 | 学科教育の科目と時間 | 学科の合計 | 実技教育 |
|---|---|---|---|
| 高圧・特別高圧(第5条) | 電気の基礎知識1.5時間、電気設備の基礎知識2時間、安全作業用具の基礎知識1.5時間、活線作業・活線近接作業の方法5時間、関係法令1時間 | 11時間 | 15時間(充電電路の操作のみを行う者は1時間) |
| 低圧(第6条) | 電気の基礎知識1時間、電気設備の基礎知識2時間、安全作業用具の基礎知識1時間、活線作業・活線近接作業の方法2時間、関係法令1時間 | 7時間 | 7時間(開閉器の操作のみを行う者は1時間) |
科目の範囲(たとえば低圧なら短絡・漏電・接地・電気絶縁、絶縁用保護具・検電器など)も告示の表に書かれています。時間はいずれも「以上」の最低時間で、実際の講習の内容や日程は実施する教育機関ごとに異なります。この記事は特定の講習機関を推奨するものではありません。
記録の保存と科目の省略
特別教育を行った事業者は、受講者・科目などの記録を作成し、3年間保存しなければなりません(安衛則第38条)。あわせて、第37条は、科目の全部または一部について十分な知識と技能があると認められる労働者については、その科目の特別教育を省略できると定めています。省略するかどうかを判断し、記録に残すのは事業者です。
参考までに、労働者を雇い入れたとき、または作業内容を変えたときは、遅滞なく安全衛生の教育を行うことも別に定められています(労働安全衛生法第59条第1項・第2項、安衛則第35条)。特別教育はこれとは別に、第36条の業務につかせるときに追加で必要になる教育です。
違反したときの罰則
第59条第3項に違反して特別教育を行わなかった者には、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています(労働安全衛生法第119条第1号)。法人または人の代理人・使用人などが業務に関して違反したときは、行為者のほか、その法人または人にも罰金刑が科されます(第122条)。
雇入れ時の教育(第59条第1項)の違反は、第120条第1号の50万円以下の罰金です。実際の適用は個別の事情によります。
電気工事士免状との関係と一人親方の場合
条文には、電気工事士免状を持っていれば特別教育が不要になるとの定めは見当たらず、省略の判断は第37条の「十分な知識及び技能」の有無によります。電気工事士免状による省略を示す公式見解は、この記事の作成時には確認できていません。 省略できるかは、事業所を所轄する労働基準監督署に確認してください。
免状の取得については電気工事士免状の取得要件の記事、免状が必要な作業は電気工事士でなくてもできる作業の記事で整理しています。
第59条第3項は「事業者は、…労働者をつかせるときは」という書き方で、労働者を使わない一人親方は条文上の主語に当たりません。ただし、法改正で取り扱いが変わる可能性があるため、一人親方の場合は労働基準監督署で現行の扱いを確認してください。従業員を雇うときの労災・雇用保険の手続きは従業員を雇った電気工事業者の労働保険の記事で整理しています。
この整理で言えないこと
- 個々の作業が安衛則第36条第4号の業務に当たるか、特別教育を省略できるかは、事案ごとに異なり、この記事では判定できません。
- 高所作業、酸素欠乏、玉掛け、アーク溶接など、電気以外の特別教育や技能講習は対象外です。
- 電気工事の施工方法や安全作業の手順は扱いません。
- 特定の講習機関や教材を推奨するものではありません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。従業員にさせる作業が特別教育の対象か、科目を省略できるか、受講の記録をどう残すかは、所轄の労働基準監督署で最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。