公式資料をもとに整理
カスタマーハラスメント対策の義務と措置(令和8年10月)
令和8年10月1日から、労働者を雇う事業主は、顧客や取引先の担当者などによるカスタマーハラスメントを防ぐための措置を講じる義務を負います。電気工事業も対象で、施主や元請・取引先の担当者の言動も「顧客等」の言動に含まれ得ます。方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速な対応、悪質な行為の抑止の措置などが柱です。
公開日: 2026-10-12 / 最終更新: 2026-10-12 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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義務の内容と施行日
カスタマーハラスメント対策は、令和8年(2026年)10月1日に事業主の義務になりました。厚生労働省によると、令和7年6月11日に公布された改正法(令和7年法律第63号)で、カスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務となり、令和8年10月1日に施行されました(厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」)。
条文は労働施策総合推進法の第33条です。事業主は、顧客等の言動で社会通念上許容される範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、その言動への対応の実効性を確保するための抑止の措置などを講じなければなりません(e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)。
条文は「その雇用する労働者」を守る義務として書かれています。従業員のいない一人親方は、この義務の対象になる労働者がいません。
カスタマーハラスメントの3つの要件
厚生労働省の解説では、職場のカスタマーハラスメントは、次の3つをすべて満たすものとされています(厚生労働省「従業員を守るために カスタマーハラスメント対策の新ルール」)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 誰の言動か | 顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の事業に関係を有する者(顧客等)の言動 |
| 2. どの程度か | 業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたもの |
| 3. 何が害されるか | 労働者の就業環境が害されるもの |
「社会通念上許容される範囲を超えた」とは、言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または手段や態様が相当でないものです。前者の例には、契約で想定しているサービスを著しく超える要求や、対応が著しく困難または不可能な要求、不当な損害賠償要求が挙げられています。後者の例には、暴行や傷害、暴言・侮辱、威圧的な言動、継続的・執拗な言動、長時間の居座りが挙げられています。
判断では、業種・業態や業務の内容・性質、労働者の属性や心身の状況などを総合して考えるとされています。障害のある人が不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を求める意思を示すこと自体は、カスタマーハラスメントには当たらないと説明されています。
電気工事業で「顧客等」に当たり得る人
「顧客等」には、商品の購入者やサービスの利用者のほか、取引先の担当者も含まれます。厚生労働省は、取引先の担当者(いわゆるBtoB)や、今後サービスを利用する可能性がある人も含まれ、電話やSNSなどインターネット上の言動も対象になると説明しています。なお、定義の全体は「職場において行われる」言動が前提です。
電気工事の仕事に当てはめると、工事を頼む施主や、元請・上位の請負業者の担当者が「顧客等」に当たり得ます。管理会社や施設の担当者は、事業に関係を有する者として当たる場合があります。実際に個別の言動が要件に当たるかは、上の3つの要件を総合して判断する必要があり、この記事では判断しません。
事業主が講ずる措置
措置の具体的な内容は、条文に基づく指針(令和8年厚生労働省告示第51号)が定めています。厚生労働省は、令和8年10月1日から事業主に義務づけられる措置の主な内容を、次の5つにまとめています。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 方針の明確化と周知・啓発 | カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し労働者を保護する方針を明確にし、内容とあらかじめ定めた対処を労働者に周知する |
| 相談体制の整備 | 相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知し、担当者が適切に対応できるようにする |
| 事後の迅速かつ適切な対応 | 事実関係を迅速かつ正確に確認し、確認できた場合は被害を受けた労働者への配慮と再発防止の措置を講じる |
| 抑止のための措置 | 特に悪質なものへの対処の方針をあらかじめ定めて周知し、対処できる体制を整備する |
| 併せて講ずる措置 | 相談者のプライバシーの保護と、相談したことを理由とする不利益な取扱いをしない旨を定めて周知する |
方針の明確化と相談窓口の指定は、従業員に周知することまでが措置に含まれます。従業員への書面の明示事項は労働条件の明示のガイドで整理しており、この記事では扱いません。
元請・取引先との関係と不利益取扱いの禁止
第33条の第2項は、労働者が相談を行ったことや、相談への対応に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。第3項は、他の事業主から措置の実施に必要な協力を求められたときは、これに応ずるよう努めるものとしています。
下請として働く従業員が元請の担当者から受けた言動も、条文の「取引の相手方」の言動に当たり得ます。元請に事実の確認などへの協力を頼む場合の取引上の条件は、契約の内容によるため、この記事では扱いません。
すでに義務のハラスメント対策
厚生労働省は、職場のパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの防止措置も、事業主の義務としています。セクシュアルハラスメントと妊娠・出産等に関するハラスメントの措置は、業種・規模に関わらずすべての事業主に義務付けられていると案内されています。パワーハラスメントの措置は、条文では第31条に定められています。
従業員を雇ったときの手続の全体は労働保険のガイドと社会保険のガイドで整理しています。
この整理で言えないこと
- 個別の言動がカスタマーハラスメントに当たるかどうかは判断しません。
- 方針や相談窓口の文面例、社内規程の作り方は扱いません。
- 措置を講じなかった場合の行政指導などの扱いは、この記事の確認範囲に含めていません。
- 下請取引上の不当な要求(取引の適正化に関する別の制度)は扱いません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。自社でどの措置が必要か、個別の言動への対応は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)などの公式窓口に確認してください。
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