公式資料をもとに整理
電気工事業のパワハラ防止措置(6類型・講じる措置)
従業員を雇う事業主は、職場のパワーハラスメントを防ぐため、相談に応じる体制の整備などの措置を講じなければなりません。中小企業も、令和4年4月1日から義務です。パワハラに当たる条件、代表的な6つの類型、現場が職場に含まれること、講じる措置、勧告に従わないときの公表を、労働施策総合推進法と厚生労働省の資料で整理します。
公開日: 2026-10-20 / 最終更新: 2026-10-20 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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事業主の義務と対象
労働施策総合推進法第31条第1項は、職場で優越的な関係を背景に行われ、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によって、雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備など、雇用管理上必要な措置を事業主に義務づけています。第2項は、労働者が相談したことなどを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁止しています(e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)。
中小企業の措置義務は、令和4年4月1日からです(令和4年3月31日までは努力義務)。厚生労働省のリーフレットが案内しています(厚生労働省リーフレット「パワーハラスメント防止措置が中小企業の事業主にも義務化されます」)。
指針は、対象の「労働者」を、正規雇用だけでなく、パートタイム労働者や契約社員などの非正規雇用も含めて、事業主が雇用する労働者の全てとしています。雇用関係のない一人親方や外注の職人は指針に挙がっておらず、実態で扱いが変わることもあるため、都道府県労働局で確認してください。
パワハラに当たる3つの要素
厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、職場のパワーハラスメントを、次の3つの要素を全て満たすものとしています。客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、該当しません(厚生労働省「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)。
| 要素 | 指針の説明 |
|---|---|
| ① 優越的な関係を背景とした言動 | 言動を受ける人が、行為者に抵抗や拒絶をしにくい関係を背景にしたもの。上位の職位の人だけでなく、業務に必要な知識や経験が豊富で協力が欠かせない同僚・部下、集団による行為も含む |
| ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた | 社会通念に照らし、明らかに業務上の必要性がない、または態様が相当でないもの。目的、経緯、言動の態様・頻度、受けた人の問題行動の有無などを総合的に考慮する |
| ③ 就業環境が害される | 身体的・精神的な苦痛で、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業する上で看過できない程度の支障が生じること。「平均的な労働者の感じ方」を基準にする |
「職場」は、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所です。通常働いている事務所以外でも、業務を遂行する場所は含まれます。このため、現場での言動も対象です。
代表的な6つの類型
指針は、代表的な言動を6つの類型に分け、該当すると考えられる例と、該当しないと考えられる例を挙げています。例は限定列挙ではなく、個別の事案の状況で判断が異なることもあります。
| 類型 | 該当すると考えられる例 | 該当しないと考えられる例 |
|---|---|---|
| 身体的な攻撃 | 殴打、足蹴り、物を投げつける | 誤ってぶつかる |
| 精神的な攻撃 | 人格を否定する言動、必要以上に長時間の厳しい叱責の繰り返し、他の労働者の面前での大声の威圧的な叱責の繰り返し | 再三注意しても改善されない遅刻などに、一定程度強く注意する |
| 人間関係からの切り離し | 仕事を外して長期間別室に隔離する、集団で無視して孤立させる | 新規採用者を育成するため、短期間集中的に別室で研修する |
| 過大な要求 | 必要な教育をせずに到底対応できない目標を課して厳しく叱責する、業務と関係のない私的な雑用を強制する | 育成のために少し高いレベルの業務を任せる、繁忙期に一定程度多い業務を任せる |
| 過小な要求 | 退職させるために誰でもできる業務を行わせる、嫌がらせで仕事を与えない | 能力に応じて業務内容や業務量を一定程度軽減する |
| 個の侵害 | 職場外でも継続的に監視する、病歴などの機微な個人情報を本人の了解なく他の労働者に暴露する | 配慮のため家族の状況などをヒアリングする、本人の了解を得て必要な範囲で人事労務担当者に伝える |
事業主が講じる措置
厚生労働省のリーフレットは、事業主が必ず講じなければならない措置を、次の4つの柱、10項目で示しています。
| 柱 | 内容 |
|---|---|
| 方針の明確化と周知・啓発 | ① パワハラの内容と、行ってはならない旨の方針を明確にして周知・啓発する/② 行為者に厳正に対処する旨の方針と対処の内容を、就業規則など文書に規定して周知・啓発する |
| 相談に応じる体制の整備 | ③ 相談窓口をあらかじめ定めて周知する/④ 窓口担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにする |
| 事後の迅速かつ適切な対応 | ⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認する/⑥ 被害者への配慮の措置を速やかに行う/⑦ 確認後、行為者への措置を適正に行う/⑧ 再発防止の措置を講じる(事実確認ができなかった場合も含む) |
| 併せて講じる措置 | ⑨ 相談者・行為者などのプライバシーを保護する措置を講じて周知する/⑩ 相談したことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをしない旨を定めて周知・啓発する |
②の就業規則への規定は、常時10人以上の労働者を使う事業場では作成・届出の義務があります。手順は就業規則の作成・届出のガイドで整理しています。10人未満で就業規則がない場合の文書の形は、都道府県労働局で確認してください。
リーフレットは、望ましい取り組みとして、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを一元的に相談できる体制の整備のほか、方針を示す相手を、他の事業主が雇用する労働者や就職活動中の学生などにも広げることを挙げています。顧客からの迷惑行為への措置は顧客等からのハラスメント対策のガイドで別に整理しています。
従わないときの勧告・公表と紛争の援助
- 厚生労働大臣は、事業主に助言、指導または勧告ができます。第31条第1項・第2項に違反している事業主が勧告に従わなかったときは、その旨を公表できます(第42条)。
- 労働者と事業主の間で紛争が生じたとき、都道府県労働局長は、当事者の一方または双方から求められれば、助言、指導または勧告ができます。事業主は、労働者がこの援助を求めたことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません(第36条)。
この整理で言えないこと
- 個別の言動がパワハラに当たるか、現場での叱責が適正な指導の範囲かは、この記事では判断できません。指針は、様々な要素を総合的に考慮するとしています。
- 被害を訴えた人への処分、懲戒の可否、損害賠償は扱いません。
- 元請の社員や取引先から下請の職人に対する言動の扱いは、この記事では扱いません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。措置の具体的な内容や個別の相談は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
次に知りたいことは、従業員への安全衛生教育は雇入れ時の安全衛生教育のガイド、雇入れ時の書面は労働条件通知書のガイド、根拠法の全体像は労働基準法とは(目的・労働条件の明示・労働時間・割増賃金・有給休暇の条文ごとの内容)で確認できます。