公式資料をもとに整理
懲戒処分と減給の制裁の限度(就業規則の定めと計算例)
懲戒処分は、就業規則に種類と程度を定めておかなければ行えません。減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額まで、総額は1賃金支払期の賃金総額の10分の1までです。従業員を雇う電気工事業者が、懲戒の前に確かめる点と減給の上限の計算を、条文と厚生労働省の資料で確認します。
公開日: 2026-10-20 / 最終更新: 2026-10-20 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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先に結論:懲戒の前に確かめる3点
- 懲戒の種類と程度が、就業規則に書かれているか(労働基準法第89条第9号)。
- 減給をするなら、1回の額と総額が第91条の上限に収まっているか。
- その懲戒が、理由に照らして重すぎないか(労働契約法第15条)。
このうち1点でも満たさない懲戒は、無効になったり、罰則の対象になったりするおそれがあります。就業規則そのものの作り方は就業規則の作成・届出のガイドで確認できます。
懲戒処分の種類と就業規則への定め
労働基準法第89条は、制裁の定めをするときは、その種類と程度を就業規則に書くことを求めています(e-Gov法令検索「労働基準法」)。就業規則を作る・変えるときは、過半数組合か労働者の過半数を代表する者の意見を聴く義務もあります(第90条)。
厚生労働省のモデル就業規則の解説は、種類の例としてけん責、減給、出勤停止、懲戒解雇を挙げ、これ以外の種類を事業場ごとに決めることもできるとしています(厚生労働省「モデル就業規則」第11章の解説)。同じ資料は、就業規則を設ける前の行為にさかのぼって懲戒することはできないこと、1回の懲戒事由に複数回の懲戒処分をすることはできないことも示しています。
| 処分 | 賃金への影響 |
|---|---|
| けん責 | 賃金は減らない |
| 減給 | 第91条の上限まで |
| 出勤停止 | モデル就業規則は、その間の賃金を支給しないと定める |
| 懲戒解雇 | 解雇の予告・認定の手続きが関わる(後述) |
減給の制裁の限度と計算例
第91条は、減給の制裁を就業規則で定める場合の上限を決めています。1回の額は平均賃金の1日分の半額以下、総額は一賃金支払期(月給なら1か月)における賃金の総額の10分の1以下です。
平均賃金は、原則として、算定する事由が起きた日の直前3か月に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割って求めます(労働基準法第12条)。
計算例(数字は説明用の仮定です)
- 直前3か月の賃金の総額が92万円、その期間の総日数が92日なら、平均賃金は1日1万円です。
- 1回の減給の上限は、その半額の5,000円です。
- その月の賃金の総額が30万円なら、その月の減給の総額の上限は3万円です。
同じ月に複数回の減給をするときは、1回ごとに半額以内で、合計も10分の1以内に収める必要があります。第91条に違反すると、30万円以下の罰金の対象になります(第120条第1号)。
減給の制裁にならない賃金のカット
遅刻や早退の時間分の賃金を払わないことは、減給の制裁ではありません。その時間は賃金を請求する権利が生じないためで、第91条の制限を受けません。ただし、遅刻した時間分の賃金額を超えて引くと、超えた分は制裁とみなされ、第91条の上限を受けます(モデル就業規則の解説)。
遅刻や欠勤の控除を就業規則や給与規程にどう書くかは、労働条件通知書のガイドの賃金の項目と合わせて確認できます。
懲戒が無効になる場合と懲戒解雇
労働契約法第15条は、懲戒が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、権利を濫用したものとして無効とすると定めています(e-Gov法令検索「労働契約法」)。就業規則に定めがあっても、行為の内容に比べて重い処分は無効になりえます。
懲戒解雇をする場合、予告なしで解雇予告手当も払わずに行うには、あらかじめ所轄の労働基準監督署長に解雇予告除外認定を申請して認定を受ける必要があります(労働基準法第20条、モデル就業規則の解説)。認定を受けずに即時に解雇するなら、解雇予告手当の支払いが必要です。解雇の予告の決まりは解雇予告のガイドで確認できます。
懲戒の前の確認チェックリスト
- 懲戒の種類と程度が就業規則に書かれ、従業員に周知されているか
- その行為が起きた時点で、就業規則はすでに効力を持っていたか
- 減給なら、1回の額と月の総額が、平均賃金から出した上限の内側か
- 同じ行為について、すでに別の処分をしていないか
- 事実を確かめ、本人の言い分を聞いた記録が残っているか
- 処分の重さが、行為の内容に照らして釣り合っているか
この整理で言えないこと
- 特定の行為にどの処分が相当かは判定しません。
- 戒告、降格、諭旨解雇の扱いは、確認できた公式資料がないため扱いません。
- 参照したモデル就業規則の解説は、作成から年数がたっている資料です。就業規則を作るときは、最新のモデル就業規則を厚生労働省のサイトで確認してください。
- パワーハラスメント防止措置との関係は扱いません。
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。個別の懲戒の可否は、所轄の労働基準監督署や総合労働相談コーナーで最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
次に知りたいことは、賃金から引いてよいものは賃金支払い5原則のガイド、退職時の手続きは退職時の賃金・証明書のガイド、ハラスメント対策はパワハラ防止措置のガイドです。