公式資料をもとに整理
労働時間の把握義務(始業・終業時刻の記録と3年保存)
従業員を雇う電気工事業の事業主は、労働日ごとの始業・終業時刻を確認して記録する責務があり、記録は3年間保存します。厚生労働省のガイドラインは、方法を「自分で見て確認する」か「タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録」を原則とし、自己申告は、やむを得ない場合の方法として条件を付けています。直行直帰の多い現場仕事で、どう記録するかを整理します。
公開日: 2026-10-20 / 最終更新: 2026-10-20 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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先に結論:記録するのは「日ごとの始業・終業時刻」
ガイドラインは、1日に何時間働いたかだけを集計するのではなく、労働日ごとの始業時刻と終業時刻を使用者が確認し、記録したうえで労働時間を確定する必要があるとしています(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。
- 対象:労働基準法の労働時間の規定(第4章)が適用されるすべての事業場。従業員が1人でも、従業員を雇う個人事業主・法人が対象になります。
- 対象外の労働者:労働基準法第41条の管理監督者など、みなし労働時間制が適用される労働者(事業場外のみなしは、みなしが適用される時間に限る)。それでも健康確保のため、長時間労働にならないよう労働時間を管理する責務はあるとされています。
- 保存:記録は3年間です(安衛則第52条の7の3第2項、ガイドライン)。
根拠:安衛法と安衛則の把握義務
労働安全衛生法第66条の8の3は、事業者が面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法で労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと定めています。次条第1項に規定する者は除かれます(e-Gov法令検索「労働安全衛生法」)。
省令にあたる労働安全衛生規則第52条の7の3は、方法を「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」とし、把握した記録を作成して3年間保存する措置を求めています(e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」)。
記録の方法:原則と自己申告
| 方法 | 位置づけ | 求められること |
|---|---|---|
| 使用者や労働時間の管理者が自分で見て確認する(現認) | 原則的な方法 | 確認した時刻を適正に記録する。確認した時刻は、本人にも確認することが望ましいとされています。 |
| タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録 | 原則的な方法 | 記録を基礎に確認する。必要に応じて残業命令書と報告書など、労働時間を算出するための記録と突き合わせる。 |
| 労働者の自己申告 | 上の方法によらず、自己申告で行わざるを得ない場合 | 労働者と管理者へ十分に説明する。実際の時間と合っているか、必要に応じて実態調査をして補正する。申告できる時間数の上限を設けるなど、適正な申告を妨げる措置をしない。 |
自己申告で把握した時間と、入退場の記録やパソコンの使用時間から分かる在社時間とのあいだに著しい乖離があるときは、実態調査をして必要な労働時間の補正をします。36協定の延長できる時間数を超えて働いているのに、記録上は守っているように見せる慣習がないかの確認も、ガイドラインが挙げています。
複数の現場を回る職場では、現場ごとの入退場の記録や、指示を出した時刻と報告を受けた時刻の記録が、自己申告と突き合わせる材料になります。ガイドラインに現場仕事向けの個別の定めはないため、自社でどの記録を使うかは、事業場の実態に合わせて決めます。
労働時間に当たる時間の考え方
ガイドラインは、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間とし、使用者の明示または黙示の指示で業務を行う時間は労働時間に当たるとしています。契約や就業規則の定めでは決まらず、客観的に見て使用者から義務づけられた行為かどうかで判断されます。次の時間が例に挙げられています。
- 指示された業務に必要な準備行為(着用を義務づけられた服装への着替えなど)や、業務終了後の後始末(清掃など)を事業場内で行った時間
- 指示があれば即座に業務に就くことを求められ、労働から離れることが保障されていない状態の待機時間(手待時間)
- 参加が業務上義務づけられている研修・教育訓練や、指示により業務に必要な学習をした時間
現場への移動時間や待機時間の扱いは移動・待機時間が労働時間に当たるかの整理で、時間外労働の上限は36協定と時間外労働の上限で詳しく確認できます。
賃金台帳と書類の保存
- 賃金台帳:労働基準法第108条と同法施行規則第54条により、労働者ごとに労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数などを記入します。記入しない、または故意に虚偽の労働時間数を記入したときは、同法第120条により30万円以下の罰金の対象になるとガイドラインは案内しています。
- 保存:労働者名簿と賃金台帳に加えて、出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録に関する書類も、労働基準法第109条の「その他労働関係に関する重要な書類」として3年間保存します。起算点は、書類ごとの最後の記載日です。
- 該当する書類の例:使用者が自分で記録した始業・終業時刻、タイムカードなどの記録、残業命令書とその報告書、労働者が自分で労働時間を記録した報告書。
労働基準法第109条の本則は5年ですが、附則による経過措置で当分の間は3年です。名簿・台帳の保存の詳細は労働者名簿と賃金台帳の整理にあります。
自社の確認チェックリスト
- 従業員ごとに、労働日ごとの始業・終業時刻を記録しているか
- 記録の方法は、現認またはタイムカード・ICカード・パソコン等の客観的な記録を基礎にしているか
- 自己申告に頼る場合、本人と管理者へ説明し、実態調査と補正の手順を決めているか
- 申告できる時間数の上限を設けるなど、申告を妨げる扱いをしていないか
- 賃金台帳に、労働日数と労働時間数、時間外・休日・深夜の時間数を記入しているか
- 出勤簿・タイムカード・残業命令書などを3年間保存する場所と期限を決めているか
この整理で言えないこと
- 個別の時間(直行直帰の移動、休憩中の呼び出しなど)が労働時間に当たるかは、事実関係によるため、この記事では判断できません。
- 管理監督者に当たるかどうかの判断基準は管理監督者のガイドにまとめています。事業場外のみなし労働時間制を使えるかは扱いません。
- 面接指導の対象となる時間数や、割増賃金の計算は扱いません。
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。具体的な運用は、所轄の労働基準監督署または総合労働相談コーナーで最終確認してください。
次に知りたいことは、残業の割増率は時間外・休日・深夜の割増賃金のガイド、休憩と休日は休憩・法定休日のガイド、就業規則は就業規則の作成・届出のガイドで、帳簿を調べられるときの流れは労働基準監督署の調査のガイドです。
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