作業者の資格と事業者の登録を分けて判断

電気温水器の取替えに電気工事士は必要か

電気温水器の取替えは、機器の端子に電源線をねじ止めするだけなら電気工事に当たりませんが、200Vの電源回路やブレーカー、接地極に手を入れる場合は電気工事士が必要な作業になります。メーカーの工事説明書は、電気工事士による施工と専用回路の使用を求めており、法令の線引きとあわせて確認します。

公開日: 2026-10-15 / 最終更新: 2026-10-15 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

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先に結論:機器の接続と電源回路を分ける

電気工事士法施行令第1条第2号は、電圧600V以下で使用する電気機器(配線器具を除く)の端子に電線をねじ止めする工事を軽微な工事とし、電気工事から除いています(e-Gov法令検索「電気工事士法施行令」)。電気工事業法の「電気工事」も、この軽微な工事を除いたものです(e-Gov法令検索「電気工事業の業務の適正化に関する法律」)。

一方、既設の電源ケーブルを延長して電線どうしを接続したり、ブレーカーを交換したり、接地線を接地極につないだりする作業は、施行規則第2条第2項の、資格が必要な作業(軽微な作業から除かれる作業。以下「列挙作業」)に入ります(e-Gov法令検索「電気工事士法施行規則」)。判定は、作業者の資格と事業者の登録を分けて行います。

法令の考え方の全体はエコキュート・電気温水器の設置の資格と登録の記事にまとめています。この記事は、取替えのときに既設の回路をそのまま使えるか、メーカーが何を求めているかに絞ります。

  1. 作業者の判定:予定する作業が、施行令第1条の軽微な工事か、施行規則第2条第2項の列挙作業かを分ける。
  2. 事業者の判定:列挙作業を含む電気工事を反復・継続して請け負うなら、建設業許可がない事業者は登録、許可がある建設業者は電気工事業開始届出(みなし登録)を確認する。

電気温水器の取替えを名指しして登録の要否を示した国の案内は見当たらないため、本記事は条文とメーカー資料を作業にあてはめた整理です。個別の工事は所轄の行政庁に確認してください。

メーカー工事説明書が求めている電気工事の条件

三菱電機の電気温水器(SRC-1518・SRC-2018、2008年5月版の資料)の据付工事説明書は、電気工事を電気工事士が施工し、必ず専用回路を使うよう求めています。ブレーカーの定格と電線の太さは内線規程に定められたものを使い、第2深夜電力(5時間通電)では使えないと明記しています(三菱電機 電気温水器 据付工事説明書)。電源ケーブルを200Vターミナルに接続するときの端子の締付基準トルクは3.2〜3.6N・mです。

日立のふろ自動給湯型電気温水器(BE-A37FWU など)の工事説明書も、アース工事(D種接地工事)を電気工事士が行うこと、漏電遮断器の動作を確認することを警告として挙げています。電気配線工事は指定工事業者が行い、ブレーカーの定格と電線の太さは内線規程に従うとしています(日立 電気温水器 工事説明書)。この説明書にある時間帯別電灯で使う場合の目安は次のとおりです。

日立の工事説明書にある、時間帯別電灯【Ⅰ】で使う場合のブレーカーと電線(単相200V)
形式貯湯量ブレーカー定格ケーブルの太さ
BE-A37FWU、BE-A37FWUM370L30A5.5mm2(φ2.6)
BE-A46FWU、BE-A46FWUM460L40A8.0mm2(φ3.2)
BE-A56FWU、BE-A56FWUM560L50A14.0mm2(φ4.2)

これは日立の1シリーズの記載で、三菱電機(深夜電力8時間型)の説明書とは数値も契約の前提も異なります。取替え前の機器と同じ回路をそのまま使えるかは、新しい機器の定格と工事説明書で確かめます。メーカーの記載は法令上の資格要否の判定そのものではなく、法令の線引きは次の表で確認します。

取替えで出てくる作業別の確認表

次の表は、施行令第1条と施行規則第2条第2項を、電気温水器の取替えで出てくる作業にあてはめたものです。機器の電圧が600V以下であることが前提です。

作業内容ごとの資格・登録確認
作業例電気工事士資格事業者登録の確認
旧機器の電源線を端子から外し、新しい機器の端子に既設の電源線をねじ止めする不要(施行令第1条第2号の軽微な工事)。ただし既設の電線が新機器の定格に足りることが前提電気工事から除かれる範囲なら対象外
電源ケーブルが短く、電線どうしを接続して延長する電気工事士が必要登録等を確認
新機器の定格に合わせてブレーカーを交換する、専用回路を新設する電気工事士が必要登録等を確認
機器の接地線を機器に取り付ける600V以下の電気機器への取付けは資格不要この作業だけなら対象外
接地線を接地極に接続する、接地極を埋設する(D種接地工事)電気工事士が必要登録等を確認
給水・給湯・排水の配管、基礎づくり電気工事ではない(電気工事士法の対象外)電気工事業の登録は関係しない

取替えでよく起きるのは、旧機器の容量より新機器が大きく、ブレーカーと電線を太くする必要が出るケースです。この場合は上の表の3行目にあたり、機器の接続だけでは終わりません。見積りの時点で、機器の接続と電源回路の工事を分けて、後者を担当する電気工事士を決めておきます。

200V以上で使う機器は、経済産業省が整理する、販売に付随する局部的な工事を登録等の対象から除く例外に含まれません(経済産業省「家庭用エアコンの設置・修理の工事について」)。この案内はエアコンについてのものですが、200Vの電気温水器の取替えで販売付随の例外を前提にするのは避けます。

電力契約の確認は電気工事と別に必要

日立の工事説明書は、電力契約を「時間帯別電灯契約」または「深夜電力契約」とするよう求め、契約の詳細は所轄の電力会社に問い合わせるとしています。据付完了後は、最寄りの電力会社の営業所に連絡するよう記載しています。三菱電機の説明書も、設置した温水器の形名を最寄りの電力会社へ届け出るよう求めています。

契約の種類によって内部配線や必要な回路が変わります。日立の機種は、出荷時は時間帯別電灯型【Ⅰ】用の配線で、深夜電力で使う場合は昼間電力200Vの制御用電源の配線が別に要ります。電力会社への連絡は電気工事士法の手続ではないため、依頼者に任せず、工事の段取りに入れておきます。

なお日立の説明書には、事業者が設置する場合、この機器が労働安全衛生法施行令の小型ボイラーに当たり、所轄の労働基準監督署に設置届を出す必要があるとの記載もあります。住宅用か事業用かで扱いが変わるため、事業所への設置は機種の説明書と労働基準監督署の案内を確認してください。

受注前チェックリスト

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。個別の作業が電気工事士法上の電気工事に当たるか、事業形態が電気工事業法上の登録・通知等を要するかは、具体的な施工範囲を示して所轄行政庁へ確認してください。

次に知りたいこと:接地工事のA種からD種の違い、漏電遮断器の設置が必要な場所、電気工事業の登録・通知が不要なケースの境界。

同種の工事はガス給湯器の交換の資格と登録の境界、IHクッキングヒーター設置の資格と登録の境界でも確認できます。

まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。

一次資料の一覧は公式資料・根拠で確認できます。