労働安全衛生法第60条・施行令第19条・規則第40条

職長教育(電気工事の現場で作業員を指導する人が受ける12時間・対象の範囲・5年ごとの再教育)

建設業の事業者は、新たに職長などの現場で作業を直接指導・監督する立場になった人に、合計12時間以上の職長教育を行う義務があります。電気工事の現場で作業員に指示を出す人が、会社の規模や肩書にかかわらず対象になり得ます。

公開日: 2026-10-08 / 最終更新: 2026-10-08 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

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職長教育を行う義務は事業者にあり、対象は新たに職務につく職長など

e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第60条は、事業場の業種が政令で定めるものに当たるとき、事業者に次の義務を課しています。新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者(作業主任者を除く)に対して、安全または衛生のための教育を行うことです。

義務を負うのは、教育を受ける本人ではなく事業者です。「職長」という役職名の人に限らず、作業中の労働者を直接指導または監督する立場に新たにつく人が対象です。電気工事の現場では、班長や現場のリーダーとして作業員に指示を出す人が、役職名ではなく実際の職務によって該当し得ます。

e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第19条は、この政令で定める業種を次の6つとしています。

電気工事を請け負って建設現場に入る事業者は、建設業に当たるかどうかが入口になります。事業の実態によるため、自社が対象かどうかは所轄の労働基準監督署に確認してください。「電気業」は発電や送配電などの事業を指す別の業種で、電気工事業とは区別されます。

作業主任者は第60条のかっこ書きで除かれています。作業主任者は、足場の組立てなど特定の作業ごとに別の仕組みで選任されるためです。

教育の内容と時間は規則第40条の表で決まっている

e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第40条第2項は、教育の事項ごとに、行わなければならない時間の下限を表で定めています。

職長教育の事項と時間(規則第40条第2項)
根拠教える事項時間
法第60条第1号作業手順の定め方、労働者の適正な配置の方法2時間
法第60条第2号指導及び教育の方法、作業中における監督及び指示の方法2.5時間
規則第40条第1項第1号の事項危険性または有害性等の調査の方法、その結果に基づき講ずる措置、設備・作業等の具体的な改善の方法4時間
規則第40条第1項第2号の事項異常時における措置、災害発生時における措置1.5時間
規則第40条第1項第3号の事項作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法、労働災害防止についての関心の保持と労働者の創意工夫を引き出す方法2時間

5つの時間を足すと12時間です。表の時間は「以上」で、下回ってはなりません。

事業者は、表の事項の全部または一部について十分な知識と技能があると認められる人には、その事項の教育を省略できます(規則第40条第3項)。何を省略できるかは受講歴や経験によるため、省略する場合は根拠を残しておくと、後から説明しやすくなります。

この教育は、電気工事そのものの技術を教えるものではありません。表の事項は、作業手順の定め方や労働者の配置、指示の出し方、危険の調査と改善、異常時の対応といった、現場の作業員を安全に動かすための内容です。

雇入れ時教育・特別教育・作業主任者との違い

労働安全衛生法には、教育の義務が複数あります。職長教育は、立場が変わった人に行う教育で、他の教育の代わりにはなりません。

安全衛生教育の種類と対象
教育対象根拠
雇入れ時等の教育労働者を雇い入れたとき、作業内容を変更したとき(遅滞なく)法第59条第1項・第2項、規則第35条
特別教育危険または有害な業務で厚生労働省令が定めるものにつかせるとき法第59条第3項、規則第36条
職長教育新たに職長など作業中の労働者を直接指導・監督する立場につく人(作業主任者を除く)法第60条、規則第40条

たとえば、低圧の充電電路の作業につく作業員には特別教育が必要です。その作業員を班長として現場で指導する立場に就けるときは、別に職長教育を行います。低圧・高圧の特別教育は特別教育のガイド、高所作業の特別教育は高所作業のガイドで確認できます。

就任後の再教育は、おおむね5年ごとに受けさせるよう厚生労働省が案内している

厚生労働省の再教育のページは、関係請負人(下請)として建設現場に入る事業者について、雇用している職長等と安全衛生責任者に初任時に教育を受けさせるとともに、おおむね5年ごと、または機械設備等に大幅な変更があったときにも再教育を受けさせるよう案内しています。厚生労働省「職長等の再教育」で原文を確認できます。

同じ内容は、平成29年2月20日付の通達(基発0220第3号)にも書かれており、通達は、職務に従事することとなった後おおむね5年ごと、または機械設備等に大幅な変更があったときに、能力向上教育に準じた教育を受けさせるとしています。教育を安全衛生団体などが行った場合は、修了を証する書面を交付し、名簿は5年以上保管します。基発0220第3号(厚生労働省)で原文を確認できます。

この再教育は、条文の義務ではなく、厚生労働省が事業者に求める取組です。法律の条文で近いのは第60条の2で、危険または有害な業務に現に就いている人に、その業務に関する安全または衛生のための教育を行うよう事業者が努めるものと定めています。安全衛生責任者の選任と職務は安全衛生責任者のガイドで整理しています。

罰則の列挙に第60条は挙がっていないが、実施の確認は労働基準監督署へ

第119条第1号と第120条第1号は、罰則の対象になる違反として多数の条文を列挙しています。2026年10月8日にe-Govで確認した本文では、どちらの列挙にも第60条は挙がっていません。同じ法律の第59条第1項の雇入れ時の教育は、第120条第1号に挙がっています。

ただし、罰則の列挙に挙がっていないことは、実施しなくてよいという意味ではありません。第60条は事業者に「行なわなければならない」と定めており、罰則があるかどうかは別の問題です。

実際の現場では、元請が下請の入場の条件として教育の受講状況の確認を求めることがあります。元請の運用は現場ごとに異なるため、入場前に元請へ確認してください。

従業員の数ごとに置く担当者は安全衛生管理体制のガイド、労働者を雇う事業者の保険の手続は労働保険のガイド、下請として入るときの施工体制の書類は施工体制台帳のガイドで確認できます。

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。自社の事業が職長教育の対象業種に当たるか、誰が職長等に該当するかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。

一次資料の一覧は公式資料・根拠で確認できます。