労働安全衛生法第15条・第16条・第30条・第120条

統括安全衛生責任者と安全衛生責任者(電気工事の下請が現場で選任する人・50人の基準・6つの職務)

電気工事の現場に下請として入る事業者は、元請が統括安全衛生責任者を置く現場では、安全衛生責任者を選任して元請へ通報します。統括安全衛生責任者を置く義務が生じるのは、一つの現場で働く人が常時50人以上のときで、会社の規模ではありません。

公開日: 2026-10-08 / 最終更新: 2026-10-08 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

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建設業の元請は、現場全体の労働災害を防ぐ措置を負う

e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第15条第1項は、一つの場所で行う仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者のうち、建設業などを行う者を「特定元方事業者」と呼びます。現場では多くの会社の作業が同じ場所で行われるため、特定元方事業者には、その作業が同じ場所で行われることで生じる労働災害を防ぐ義務があります。

この体制は、元請と下請で役割が分かれています。電気工事業者は、元請として請け負う場合と、設備工事の下請として現場に入る場合のどちらもあります。

現場の安全衛生体制の役割分担
立場置く人根拠
元請(特定元方事業者)統括安全衛生責任者(現場で働く人が常時50人以上のとき)労働安全衛生法第15条、同法施行令第7条
下請(統括安全衛生責任者を置く義務のない請負人)安全衛生責任者(選任したら元請へ通報)労働安全衛生法第16条

統括安全衛生責任者は、現場の作業従事者が常時50人以上のときに置く

第15条第1項は、特定元方事業者に統括安全衛生責任者の選任を義務づけています。選任した責任者には、元方安全衛生管理者の指揮をさせ、第30条第1項各号の事項(協議組織の運営や巡視など)を統括管理させます。ただし書で、作業従事者の数が政令で定める数未満のときは適用されません。

e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第7条第2項は、この数を次のとおり定めています。

数えるのは、元請の労働者に加えて、下請(二次以降の請負人を含む)に係る作業従事者です。第15条第1項は作業従事者を「事業を行う者が行う仕事の作業に従事する者」と定めており、労働者に限っていません。雇われずに自分の名前で請け負って働く人(一人親方)も、同じ現場にいれば人数の対象になると読めます。

常時50人に届かない現場では、統括安全衛生責任者の選任義務はありません。

統括安全衛生責任者には、その場所で事業の実施を統括管理する者を充てます(第15条第2項)。

統括安全衛生責任者を置く現場に入る下請は、安全衛生責任者を選任する

第16条第1項は、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、その仕事を自ら行うものは、安全衛生責任者を選任し、統括安全衛生責任者との連絡などを行わせなければならないと定めています。第2項は、安全衛生責任者を選任した請負人が、統括安全衛生責任者を置く事業者へ遅滞なくその旨を通報することを求めています。

つまり、電気工事を下請として請け負って現場に入る会社は、元請が統括安全衛生責任者を置く現場では、自社の安全衛生責任者を決めて元請へ伝えます。条文には、請負人の人数や工事の金額による下限は書かれていません。自社の工事で選任が必要かどうかは、元請(第30条第4項で指名された事業者を含む)が統括安全衛生責任者を選任している現場かどうかで決まります。

同じ場所で複数の請負契約が重なる場合、最も先次の請負契約の注文者が元方事業者となります(第15条第1項)。電気工事を二次下請として受けるときは、一次下請の安全衛生責任者や元請の指示系統との関係を、現場の説明で確認します。

安全衛生責任者が行う6つの職務

e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第19条は、法第16条第1項の厚生労働省令で定める事項として、次の6つを挙げています。

安全衛生責任者が行う事項(労働安全衛生規則第19条)
号内容
第一号統括安全衛生責任者との連絡
第二号統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の関係者への連絡
第三号前号の連絡事項のうち自社に係るものの実施についての管理
第四号自社の作業の計画を作るときに、元請が作る工程などの計画との整合性を図る統括安全衛生責任者との調整
第五号自社の作業と他の人の作業によって生ずる労働災害に係る危険の有無の確認
第六号仕事の一部をさらに他の請負人に請け負わせている場合の、その請負人の安全衛生責任者との作業間の連絡と調整

安全衛生責任者になるための資格は、第16条にも規則第19条にも書かれていません。実際の現場では、元請が教育の受講などを求めることがあるため、入場前の確認事項として元請に尋ねてください。

元請が現場で行う措置と、下請が守ること

第30条第1項は、特定元方事業者が講ずる措置として、協議組織の設置・運営、作業間の連絡と調整、作業場所の巡視、関係請負人が行う安全衛生教育への指導と援助などを挙げています。労働安全衛生規則はそのうち次の3点を細かく定めています。

下請側にも義務があります。関係請負人は、特定元方事業者が設置する協議組織に参加しなければならず(第635条第2項)、元請が行う巡視を拒み、妨げ、避けてはなりません(第637条第2項)。電気工事の下請は、現場の安全衛生の会議に出ることと、巡視への協力が、この規則上の義務に当たります。

発注者が特定元方事業者ではない場合でも、二以上の請負人に仕事を請け負わせる現場では、請負人のうちの一人を措置を講ずる者として指名する仕組みがあります(第30条第2項から第4項)。誰が元請の役割を担うかは、契約と現場の体制で変わるため、元請に確認します。

選任義務に違反すると50万円以下の罰金の対象になる

第120条第1号は、第15条第1項・第3項・第4項、第16条第1項、第30条第1項・第4項などの規定に違反した者を、50万円以下の罰金に処すると定めています。

統括安全衛生責任者や安全衛生責任者の選任義務(第15条第1項、第16条第1項)は、この対象に挙がっています。元請への通報(第16条第2項)は、この列挙に挙がっていません。実際に罰せられるかは個別の事案によるため、一般論として義務の重さを示すものです。

労働者を雇う事業者の保険の手続は労働保険のガイド、現場で必要な特別教育は高所作業の特別教育のガイド、下請として入るときの施工体制の書類は施工体制台帳のガイド、現場で出る廃棄物の処理責任は建設工事の廃棄物のガイド、現場で作業員を指導する人に行う教育は職長教育のガイドで確認できます。

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。個別の現場で統括安全衛生責任者や安全衛生責任者の選任が必要かは、所轄の労働基準監督署に確認してください。

一次資料の一覧は公式資料・根拠で確認できます。