公式資料をもとに整理
従業員を雇う電気工事業者の残業の上限規制と36協定(月45時間・年360時間、災害復旧の例外)
従業員に法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える残業や法定休日の労働をさせるには、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要で、建設業にも2024年4月から時間外労働の上限規制が全面的に適用されています。ここでは、労働基準法第32条・第33条・第36条と厚生労働省の建設業向けリーフレットから、電気工事業者が確認する上限の数字、災害復旧・復興の例外、守らなかった場合の罰則を整理します。
公開日: 2026-10-08 / 最終更新: 2026-10-08 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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残業をさせるには36協定と届出が要る
労働時間は、原則として1日8時間・週40時間までです(e-Gov法令検索「労働基準法」第32条)。これを超えて働かせる、または法定休日に働かせるには、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(無い場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による協定を結び、行政官庁に届け出る必要があります(同法第36条第1項)。この協定が「36協定」です。
協定には、次の事項を定めます(同条第2項)。
- 残業・休日労働をさせることができる労働者の範囲
- 対象期間(1年間に限る)
- 残業・休日労働をさせることができる場合
- 対象期間の1日・1か月・1年それぞれの延長できる時間、または休日労働の日数
- 厚生労働省令で定める、労働時間の延長と休日労働を適正にするために必要な事項
上限の数字(原則と特別条項)
| 区分 | 上限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 原則(36協定で定められる限度) | 月45時間・年360時間 | 第36条第3項・第4項 |
| 特別条項(臨時的な特別の事情がある場合) | 年720時間以内。月45時間を超えられるのは年6か月まで | 第36条第5項 |
| 特別条項で休日労働を含めた1か月 | 100時間未満 | 第36条第5項・第6項第2号 |
| 休日労働を含めた複数月平均 | 2か月・3か月・4か月・5か月・6か月のどの平均でも月80時間以内 | 第36条第6項第3号 |
特別条項は、通常予見できない業務量の大幅な増加などで臨時的に限度時間を超える必要がある場合に限り、あらかじめ協定に定めておく仕組みです(第36条第5項)。月100時間未満と複数月平均80時間以内は、36協定の内容にかかわらず守る必要があります(同条第6項)。厚生労働省のリーフレットでも、建設業は2024年4月から月45時間・年360時間が上限になると案内しています(厚生労働省「建設業『時間外労働の上限規制』のポイント」)。
災害復旧・復興の例外と第33条の違い
厚生労働省のリーフレットでは、災害に関する例外が2つあり、対象と手続きが異なります。
| 項目 | 労働基準法第139条第1項 | 労働基準法第33条第1項 |
|---|---|---|
| 対象 | 災害における復旧および復興の事業 | 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合 |
| 手続き | 専用の様式(様式第9号の3の2または第9号の3の3)であらかじめ36協定を届出 | 事前の許可または事後の届出(様式第6号) |
| 効果 | 36協定で定める範囲内で時間外・休日労働をさせられる | 36協定で定める限度とは別に時間外・休日労働をさせられる |
| 月100時間未満・複数月平均80時間以内 | 適用なし | 適用なし |
| 年720時間・月45時間超は年6か月まで | 適用あり | 適用なし |
第139条第1項の対象は、特定の災害による被害を受けた道路や鉄道の復旧、仮設住宅や復興支援道路の建設などです。都道府県等との災害協定に基づく復旧や、維持管理契約内で発注者の指示により対応する災害復旧も該当し、差し迫った災害に備える凍結防止剤の散布なども含まれると、リーフレットは案内しています。
一方、第33条第1項は、通常予見できない災害等で人命や公益を保護するために臨時の必要がある場合が対象で、単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は対象になりません。
電気工事の例では、被災した建物の電気設備を復旧する工事が上記の災害復旧の事業に当たるかは、工事の発注の経緯と内容で変わるため、この記事では判定しません。当たるかどうかは所轄の労働基準監督署で確認してください。なお、リーフレットの注記では、災害における復旧・復興の事業には月100時間未満と複数月平均80時間以内が適用されない一方、通常の工事の時間はこれらの計算に含まれます。
違反したときの罰則
第36条第6項(月100時間未満・複数月平均80時間以内など)や第32条(法定労働時間)に違反した者は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処せられると定められています(同法第119条第1号)。36協定を結ばず、または届け出ずに残業をさせた場合も、第32条違反として扱われます。
一人親方・役員が対象かどうか
労働基準法の労働時間の規制は、労働者に適用されます。従業員を雇わない一人親方は、自分自身に対して36協定を結ぶことはありません。従業員がいる事業場では、その従業員が対象です。
代表者や役員が労働者に当たるかどうかは、実際の働き方によって異なり、この記事では判定できません。
従業員を雇った後の労災保険・雇用保険の手続きは従業員を雇った電気工事業者の労災保険・雇用保険の加入手続き、常時使用する労働者の数ごとの安全衛生の担当者は安全衛生管理体制のガイド、現場が止まった日の休業手当と年5日の有給取得は休業手当と年5日の有給休暇のガイドで整理しています。
この整理で言えないこと
- 個々の工事が災害復旧・復興の事業に当たるか、特別条項の「臨時的な特別の事情」に当たるかは、事案ごとに異なり、この記事では判定できません。
- 36協定の届出様式、割増賃金、管理監督者の扱い、勤務間インターバルなどは、この記事では扱いません。
- 36協定の届出は、事業場ごとに所轄の労働基準監督署へ行います。提出方法は最新の案内で確認してください。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。36協定の内容、届出、災害復旧・復興の事業への該当は、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局で最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。