公式資料をもとに整理
フレックスタイム制の要件と清算期間の考え方
フレックスタイム制は、就業規則等で始業・終業の時刻を労働者に委ねると定め、労使協定で対象者・清算期間・総労働時間などを決めると、清算期間を平均して週40時間以内なら、日ごとの労働時間が8時間を超えても時間外労働にならない制度です。従業員を雇う電気工事業者が、事務所で働く設計・積算・事務の担当者などに使えるかを、条文と厚生労働省の資料で確認します。
公開日: 2026-10-21 / 最終更新: 2026-10-21 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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先に結論:規則への定めと労使協定の両方が要る
労働基準法第32条の3は、就業規則その他これに準ずるものにより、始業と終業の時刻を労働者の決定に委ねることとした労働者について、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による協定で一定の事項を定めたときは、清算期間を平均して1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、1日8時間・1週40時間を超えて働かせられると定めています(e-Gov法令検索「労働基準法」)。
- 厚生労働省の解説は、導入要件を「就業規則等への規定」と「労使協定で所定の事項を定めること」の2点としています。どちらかだけでは導入できません。
- フレックスタイム制では、1日8時間・週40時間を超えて働いても、ただちに時間外労働にはなりません。逆に、1日の標準の労働時間に満たない時間も、ただちに欠勤にはなりません。
- 時間外労働をさせるには、フレックスタイム制でも36協定の締結が必要です。
労使協定で定める事項
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる労働者の範囲 | この制度で働かせる労働者の範囲です。 |
| 清算期間 | 労働時間を平均する期間です。3か月以内に限ります。 |
| 清算期間における総労働時間 | 清算期間中に働くべき時間の総量です。 |
| 標準となる1日の労働時間 | 労働者が1日に働く時間の標準として、協定に書く時間です。 |
| コアタイム | 必ず働く時間帯です。設ける場合だけ、開始と終了の時刻を定めます。 |
| フレキシブルタイム | 労働者が選んで働ける時間帯に制限を設ける場合だけ、開始と終了の時刻を定めます。 |
| 協定の有効期間 | 清算期間が1か月を超える場合だけ定めます。 |
コアタイムとフレキシブルタイムは、必ず設けなければならないものではありません。厚生労働省の解説は、コアタイムを設けなければ働く日も労働者が選べるとしています。出典はe-Gov法令検索「労働基準法施行規則」と、厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」(兵庫労働局掲載)です。
清算期間と総枠の計算
清算期間の上限は3か月です。清算期間における法定労働時間の総枠は、週の法定労働時間(40時間)に、清算期間の暦日数を7で割った週数を掛けて出し、協定で決める総労働時間はこの範囲内にします。清算期間を1か月とした場合の総枠は次のとおりです。
| 清算期間の暦日数 | 総枠 |
|---|---|
| 31日 | 177.1時間 |
| 30日 | 171.4時間 |
| 29日 | 165.7時間 |
| 28日 | 160.0時間 |
特例措置対象事業場は、清算期間が1か月以内の場合に限り週44時間で計算できます。対象は常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業と説明されており、電気工事業はこの業種に挙げられていません。清算期間が1か月を超える場合は、対象事業場でも週平均40時間を超えると36協定と割増賃金が必要です。
時間外労働になる時間と賃金の清算
フレックスタイム制では、清算期間の実際の労働時間のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間が時間外労働になります。時間外労働には割増賃金が必要です。割増の割合は残業代の割増賃金のガイドで確認できます。
- 実際に働いた時間が協定の総労働時間に足りなければ、足りない時間分の賃金を差し引くか、次の清算期間へ繰り越すかを決めます。厚生労働省の解説は、賃金の清算が必要としています。
- 実際に働いた時間が総労働時間を超えた場合は、超えた時間分の賃金の支払いが必要です。
- 清算期間が1か月を超える場合は、清算期間全体で週平均40時間以内に加えて、1か月ごとの労働時間が週平均50時間以内でなければならず、どちらかを超えた時間は時間外労働になります。繁忙の月に偏らせることはできません。
- 清算期間が1か月を超え、途中入社や途中退職で実際に働いた期間が清算期間より短い人については、働いた期間を平均して週40時間を超えた分に、割増賃金が必要です(労働基準法第32条の3の2)。
労働基準監督署への届出が要る場合
労働基準法第32条の3第4項は、清算期間が1か月を超える協定について、労働基準法第32条の2第2項(労使協定の届出)を準用し、清算期間が1か月以内の協定は準用の対象から外しています。届出は施行規則第12条の3第2項により様式第3号の3で、所轄の労働基準監督署長にします。厚生労働省の解説も、清算期間が1か月を超える場合には労使協定の届出が必要としています。
| 清算期間 | 労使協定の届出 | 協定の有効期間の定め |
|---|---|---|
| 1か月以内 | 条文上は準用の対象外(所轄の労働基準監督署に確認) | 協定事項に含まれない |
| 1か月を超え3か月以内 | 様式第3号の3で届出 | 定めが必要 |
就業規則への定めは、常時10人以上の労働者を使用する場合、始業・終業の時刻に関する事項として就業規則に書き、届け出る義務があります(労働基準法第89条)。作成と届出の基本は就業規則の作成・届出のガイドで整理しています。
現場作業とのかみ合わせ
この制度は、始業と終業の時刻を労働者が決める前提です。現場の集合時刻や、お客様の立会い時刻が先に決まる作業班の人には、始業と終業を委ねる運用がしにくいと考えられます。設計、積算、見積書作成、事務の担当者のように、日々の時刻を本人が調整できる職種で検討する形になり、対象者の範囲は協定で決める事項の1つです。
労働時間は、フレックスタイム制でも使用者が把握する必要があります。記録の方法は労働時間の把握義務のガイドで確認してください。
導入前の確認チェックリスト
- 就業規則等に、始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねると書いたか
- 労使協定に、対象者・清算期間・総労働時間・標準となる1日の労働時間を書いたか
- 総労働時間が、清算期間の総枠(40時間×暦日数÷7日)の範囲内か
- コアタイムとフレキシブルタイムを設けるか、設ける場合の時刻を決めたか
- 清算期間を1か月超にするなら、1か月ごとに週平均50時間以内か、有効期間を定めたか、様式第3号の3を届け出たか
- 総労働時間に足りない時間と超えた時間の賃金の扱いを決めたか
- 時間外労働が生じうるなら、36協定を結んでいるか(36協定のガイド)
この整理で言えないこと
- 自社の職種や働き方に、この制度が合うかどうかは判定しません。
- 就業規則に書く条文の例、協定書の書き方、勤務表の作り方は扱いません。
- 1か月単位の変形労働時間制は別のガイド、1年単位は別のガイドで整理しています。事業場外みなし労働時間制と裁量労働制は扱いません。
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。協定や就業規則の内容と届出は、所轄の労働基準監督署で最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
次に知りたいことは、月内の繁閑への対応は1か月単位の変形労働時間制のガイド、時間外労働の上限は36協定のガイド、外出先の労働時間の扱いは事業場外みなし労働時間制のガイドです。