公式資料をもとに整理
事業場外みなし労働時間制(直行直帰で使えるか)
事業場外みなし労働時間制は、現場に直行直帰するというだけでは使えません。使えるのは、事業場の外で働き、労働時間を「算定し難いとき」だけです。従業員を現場に出す電気工事業者が、この制度の要件、みなされる時間の3種類、使えない場合の判断の要素を、条文と厚生労働省の資料で確認します。
公開日: 2026-10-20 / 最終更新: 2026-10-20 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
運営: 合同会社フューチャープロンプト。AIを活用して作成し、公開前に公式資料と照合しています。誤りのご報告は運営情報へ。
先に結論:「算定し難いとき」だけの制度
労働基準法第38条の2第1項は、労働者が労働時間の全部または一部を事業場外で働いた場合に、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間働いたものとみなすと定めています(e-Gov法令検索「労働基準法」)。ただし、その業務を行うのに通常は所定労働時間を超えて働く必要があるときは、その業務に通常必要な時間働いたものとみなします。
厚生労働省の裁判例解説は、この制度を使うには「労働時間を算定し難いとき」に当たる必要があるとしています。外勤であれば当然に認められるわけではありません(厚生労働省「確かめよう労働条件」事業場外労働のみなし制)。そのため、現場への直行直帰があるだけでは、制度を使える根拠になりません。
算定し難いかどうかの判断の要素
同じ解説は、「算定し難いとき」に当たるかどうかを定型的に判断するのは難しく、次の要素を考えて、個々の勤務ごとの具体的な事情で判断するとしています。
| 要素 | 見るところ |
|---|---|
| 業務の性質・内容 | 業務の性質、内容、進め方、状況 |
| 指示の方法 | 業務に関する指示の方法、内容、実際のやり方 |
| 報告の方法 | 業務に関する報告の方法、内容、実際のやり方 |
最高裁判所の2つの判決が、この判断の例として載っています。次の表は、解説に書かれた事案と結論です。
| 判決 | 事案の特徴 | 結論 |
|---|---|---|
| 阪急トラベルサポート事件(平成26年1月24日) | 旅行の添乗員。旅行日程が契約で確定し、会社はマニュアルで業務を指示し、携帯電話の電源を入れておかせ、変更があれば報告させ、終了後は詳細な添乗日報で報告させていた。 | 勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難いとして、「算定し難いとき」に当たらないとされました。 |
| 協同組合グローブ事件(令和6年4月16日) | 技能実習生の指導員。自分でスケジュールを管理し、直行直帰もでき、随時の具体的な指示や報告はなかった。月末に業務日報は提出していた。 | 業務日報の正確性が担保されていたかを十分に検討しないまま、日報だけを重視して算定できると判断した原審は違法として、差し戻されました。 |
厚生労働省のテレワークQ&Aも、自宅で働く場合の考え方として、使用者の指示で情報通信機器を常時通信可能な状態にしていないこと、随時使用者の具体的な指示に基づいて業務をしていないことを、制度を使える条件にしています(厚生労働省テレワーク総合ポータルサイト Q&A)。
電気工事の現場作業にこの要素を当てはめると、元請や発注者の工程に合わせて開始時刻と作業内容が決まっていたり、会社の携帯電話で随時指示を受けていたり、職長が同じ現場にいたりする場合は、勤務の状況を会社が把握しやすい側に寄ります。ただし、これは判断の要素を電気工事に引き当てた読み方で、公式資料が電気工事を例に示しているわけではありません。判断は個々の勤務の事情によります。
みなされる時間の3種類と労使協定の届出
労働基準法第38条の2と施行規則第24条の2から、みなされる時間は次の3種類に整理できます(e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」)。
| 場合 | みなされる時間 |
|---|---|
| 原則 | 所定労働時間 |
| その業務に通常は所定労働時間を超えて働く必要がある | その業務の遂行に通常必要とされる時間 |
| 労使協定で時間を定めた | 協定で定めた時間(通常必要とされる時間として扱われます) |
労使協定には有効期間を定めます。協定で定めた時間が法定労働時間(1日8時間)を超える場合は、様式第12号で所轄の労働基準監督署長に届け出ます。協定で定めた時間が法定労働時間以下なら、この届出は要りません。
36協定の届出に協定の内容を付記して、この届出に代えることもできます。36協定は36協定のガイドで確認できます。
みなしでも残る決まり
| 決まり | 扱い |
|---|---|
| 休憩・法定休日・深夜割増賃金 | 原則どおり適用されます(茨城労働局「労働基準法のあらまし」)。 |
| 事業場内で働いた時間 | みなしの対象は事業場外で働いた部分だけです。事業場内の時間は別に把握し、みなし時間に加えます(昭和63年3月14日基発第150号)。 |
たとえば、事業場外みなしの従業員が夕方に事務所へ戻って会議に出た日は、会議の時間を別に記録して、みなし時間と合計します。合計が法定労働時間を超えれば、割増賃金の対象になります(厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A)。割増賃金の計算は割増賃金のガイド、現場への移動時間の扱いは移動・待機時間のガイドで確認できます。
導入を考えるときの確認チェックリスト
- 現場の工程、作業内容、開始時刻を会社が具体的に指示していないか
- 会社の携帯電話などで、随時の具体的な指示や報告を求めていないか
- 管理者や職長が同じ現場に同行していないか
- 業務日報の内容が、確認できる正確なものになっているか
- みなす時間を、所定労働時間、通常必要な時間、協定の時間のどれにするか決めたか
- 協定の時間が法定労働時間を超えるなら、様式第12号の届出を準備したか
- 事業場内で働いた時間、深夜、休日の時間を別に記録しているか
この整理で言えないこと
- 特定の従業員や現場が「算定し難いとき」に当たるかどうかは判定しません。
- 労使協定の書き方や、みなし時間の具体的な決め方は扱いません。
- 専門業務型や企画業務型の裁量労働制、フレックスタイム制は扱いません。
- テレワークの細かな運用や、自宅で働く場合の判断は扱いません。
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。個別の導入の可否は、所轄の労働基準監督署や総合労働相談コーナーで最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
次に知りたいことは、労働時間の記録は労働時間の把握のガイド、他の労働時間の制度は1年単位の変形労働時間制のガイド、残業代を払わなくてよい従業員は管理監督者のガイドです。