建設業法第19条第2項
電気工事の追加工事・変更契約は着工前に書面で(口頭の了解で進めてよいか)
追加工事や工期の変更が出たときは、口頭の了解だけで進めず、変更の内容を書面にして、原則として追加工事の着工前に取り交わします。根拠は建設業法第19条第2項で、国土交通省のガイドラインが「着工後に書面を作るのも違反」と明記しています。追加の範囲がまだ決まらないときの書面の書き方まで、ガイドラインの本文に沿って整理します。
公開日: 2026-10-20 / 最終更新: 2026-10-20 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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追加工事の変更契約は着工前に書面で
建設業法第19条第2項は、請負契約の当事者に、契約内容の変更を書面に記載し、署名または記名押印して相互に交付することを求めています。条文はe-Gov法令検索「建設業法」で確認できます。契約書に書く16項目そのものは請負契約書に書く16項目と変更時の書面交付で整理しており、この記事は追加工事が出た場面に絞ります。
国土交通省の発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)は、2-2「追加工事等に伴う追加・変更契約」で、次の点を示しています。
- 対象は、工事施工環境の条件と実際の現場の状況との乖離などで生じる追加工事等です。工事の一時中止中の現場維持、工事体制の縮小、再開準備も含みます。
- 書面にする理由は、変更が口約束だと内容の明確性と正確性が担保されず、紛争の防止の点でも望ましくないためです。
- 時期は、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として追加工事等の着工前です。
- あらかじめ、当初の契約書で、設計変更の申出があったときの工期・代金の変更や損害負担の算定方法(第19条第1項第6号)をできる限り具体的に定めておくことが望ましいとされています。
違反とされる事例
ガイドラインは、追加工事が出たのに書面で契約変更をしなかった場合と、着工後や工事の終了後になってから書面を作った場合を、第19条第2項に違反する事例に挙げています。あわせて、必要な増額をしなかった場合は、不当に低い請負代金を禁じる第19条の3にも違反するおそれがあるとしています。
| 事例 | 第19条第2項 | 第19条の3 |
|---|---|---|
| 追加工事が出たのに、発注者が書面で契約変更をしなかった | 違反 | 必要な増額をしなかった場合は違反のおそれ |
| 追加工事に着手した後、または工事の終了後に書面で契約変更をした | 違反 | 必要な増額をしなかった場合は違反のおそれ |
| 価格が変動した場合の契約変更の定めが「増額や工期変更を認めない」など、実質的に無い | 違反 | 該当の記載なし |
| 受注者が増額の協議を申し出たのに、取引上の地位を不当に利用して一方的に応じず、通常必要と認められる額に比べて著しく低い額になった | 該当の記載なし | 違反のおそれ |
たとえば、分電盤まわりの配線を開けたら想定と違う状態だった、天井裏の配線ルートを変える必要が出た、といった場面が考えられます。これらが「追加工事等」に当たるかは工事の中身で決まるため、個別の判断は許可行政庁の窓口で確認してください。
追加の範囲が決まらないときの書面
追加工事の全体数量などが着工前に確定できず、その都度の変更契約が不合理な場合、ガイドラインは3つの事項を書いた書面を着工前に取り交わし、契約変更の手続は内容が確定した時点で遅滞なく行うとしています。取り交わす主体は発注者と受注者で、3つの事項は次のとおりです。
| 事項 | 書く内容 |
|---|---|
| 1. 作業内容 | 追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容 |
| 2. 変更の対象と時期 | その追加工事等が契約変更等の対象になること、契約変更等を行う時期 |
| 3. 契約単価 | 追加工事等に係る契約単価の額 |
数量が決まらない代わりに、作業内容と単価だけでも着工前に書面へ残しておく、という扱いです。確定後の契約変更を省けるわけではありません。
工期が変わるときも書面
工期の変更も第19条第2項の対象で、原則として工期変更に係る工事の着工前に、変更の内容を書面に記載して署名または記名押印し、相互に交付します(ガイドライン2-3)。受注者に責任がないのに工期を短縮・延長せざるを得なくなり、費用が増えたのに、発注者が協議に応じず書面で契約変更をしなかった場合は、第19条第2項に違反する事例とされています。
- 工事の一時中止の間の現場維持、体制縮小、再開準備にかかる費用は、追加工事が出たときと同じく書面で契約変更等を行うこととされています。
- 工事に着手した後に工期が変わった場合、手続は変更後の工期が確定した時点で遅滞なく行います。
- 変更後の工期がすぐに確定できないときは、発注者は、工期の変更が契約変更等の対象になることと、契約変更等を行う時期を書いた書面を、工期を変更する必要があると認めた時点で取り交わす扱いです。
工期の決め方そのものは著しく短い工期の禁止と工期基準、契約前に資材高騰を通知する手続は資材高騰の事前通知と協議の申出のガイドで整理しています。
追加の費用を一方的に負担させられたとき
受注者が追加工事等を理由に代金や工期の変更を協議したいと申し出たのに、発注者が取引上の地位を不当に利用して応じず、追加分を受注者に負担させて、代金が「通常必要と認められる原価」に満たなくなる場合は、第19条の3の違反のおそれがあります。ガイドラインは、受注者のその発注者への取引依存度などの状況によって変わる、と書いています。追加の費用は当事者間で十分に協議して決めることが必要です。
協議が決裂したときの紛争の窓口は建設工事紛争審査会のガイド、発注者に不利な条件を押し付けられたときの整理は不当な発注・指値の保護規定のガイドで確認できます。
追加工事の変更契約書や覚書に貼る印紙の税額は、書き方で変わる場合があります。電気工事の請負契約書の印紙税額と軽減措置のガイドを確認してください。
追加工事の見積依頼の扱い(令和8年1月の改定)
第8版は、追加工事等に伴う変更契約でも、当初契約と同じく適正な見積り手続きが必要としており、着工前に書面またはメール等の電磁的方法で見積依頼をするとしています。ガイドラインの第1章(7)の記載で、見積期間も追加工事等の見積依頼に同様に適用される、とされています。第8版は令和8年1月の改定で、2-2と2-3の本文は第7版から変わっていません。
見積期間の日数の決まりは建設工事の見積期間のガイド、書面に代える電子契約の条件は電気工事の請負契約を電子契約で結ぶ条件で確認できます。
この整理が当てはまる範囲
- この記事が引いたガイドラインは、発注者と受注者(発注者から直接請け負う人)の関係を対象にしています。元請と下請の関係は、国土交通省の別のガイドラインが扱います。
- ガイドラインは、個人が発注する工事で、専ら自分で使う住宅や施設を目的とするものの取引を、対象に含まないと注記しています(見積りに関する一部を除く)。
- 第19条の主語は「建設工事の請負契約の当事者」です。許可を受けていない事業者が軽微な工事だけを請け負う場合の適用は、条文の主語だけでは判断できません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。ある変更が追加工事等に当たるか、書面の書き方、許可の有無による適用は、許可行政庁の窓口や建設業取引適正化の相談窓口で確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。