公式資料をもとに整理

電気工事の一人親方の労災保険特別加入(対象・手続き・給付基礎日額と年間保険料)

労災保険は労働者のための保険で、労働者を使わない一人親方は対象外ですが、建設の事業を行う一人親方は「特別加入」により任意で加入できます。加入の手続きは本人が直接行うのではなく、労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて行います。厚生労働省の「特別加入制度のしおり」から、対象・手続き・給付基礎日額と保険料・補償の範囲を整理します。

公開日: 2026-10-02 / 最終更新: 2026-10-02 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

加入できる人の範囲(労働者を使わない・年100日未満)

特別加入できるのは、労働者を使用しないで建設の事業などを行うことを常態とする一人親方等で、労働者を使う日があっても1年間の合計が100日に満たなければ一人親方等として加入できます。厚生労働省のしおりは、対象の事業の2番目に「土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業(大工、左官、とび職人など)」を挙げています(しおり「1 特別加入者の範囲」)。

電気工事そのものは例示(大工、左官、とび職人など)に書かれていません。一方で同じ項目の注記は、電気主任技術者の免状の交付を受け、自家用電気工作物の設置者との委託契約で屋内・屋側の電気配線や電柱での高所作業などの工事、維持および運用保安の作業を行う「電気管理技術者」も含むと明記しています。自分の工事が建設の事業に当たるかは、加入を申し込む特別加入団体または労働局で確認してください。

加入の手続きと特別加入団体

一人親方等の特別加入は、特別加入団体を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険を適用する仕組みで、手続きは都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行います。すでに承認されている団体に加入する場合は、その団体に申し込み、加入手続きは団体が行います(しおり「2 特別加入の手続き」)。団体が新しく承認を受ける場合の申請書には、加入希望者の業務の具体的な内容、業務歴、希望する給付基礎日額などを記入します。

特別加入の手続きの2つの経路
場合提出するもの提出先
新たに特別加入団体をつくって申請する特別加入申請書(一人親方等)所轄の労働基準監督署長を経由して所轄の都道府県労働局長
承認済みの団体を通じて加入する団体が特別加入に関する変更届を提出(加入申込・脱退希望・業務内容等の変更)団体が監督署長を経由して労働局長へ提出

特別加入団体には、一人親方等の相当数を構成員とする単一団体であること、労働保険事務を確実に処理する能力があること、団体の地区が主たる事務所の所在地を中心とした別表の区域を超えないことなどの要件があります。新たに団体をつくる場合、労働局長の承認は申請の日の翌日から30日以内で申請者が加入を希望する日となります。最寄りの団体は都道府県労働局または労働基準監督署に問い合わせる扱いです。

給付基礎日額の選び方と年間保険料の計算

年間保険料は「給付基礎日額×365日」で出る保険料算定基礎額に、事業ごとの保険料率を掛けて計算し、建設の事業の保険料率は1000分の17です。給付基礎日額は保険料と休業(補償)給付などの給付額を算定する基礎で、申請に基づいて労働局長が決定します。日額を低くすると保険料は安くなりますが、給付額も少なくなります(しおり「5 給付基礎日額・保険料」、特別加入保険料率表(令和6年11月1日〜))。

選べる給付基礎日額は25,000・24,000・22,000・20,000・18,000・16,000・14,000・12,000・10,000・9,000・8,000・7,000・6,000・5,000・4,000・3,500円の16段階です。

給付基礎日額と建設の事業(保険料率17/1000)の年間保険料の例
給付基礎日額保険料算定基礎額(日額×365日)年間保険料
25,000円(最高)9,125,000円155,125円
20,000円7,300,000円124,100円
10,000円3,650,000円62,050円
3,500円(最低)1,277,500円(注)21,709円

(注)特別加入者全員の保険料算定基礎額を合計した額に千円未満の端数が生じるときは切り捨てとなるため、3,500円の行の年間保険料は1,277,000円に17/1000を掛けた額です(しおり表4の注記)。

年度の途中で加入または脱退したときは、その年度内の特別加入月数(1か月未満の端数は1か月)に応じた保険料算定基礎額で計算します。給付基礎日額を変えたいときは、翌年度から変える場合は3月2日〜3月31日に、当年度から変える場合は労働保険の年度更新期間中に「給付基礎日額変更申請書」を出しますが、申請書を出す前に災害が発生している場合、当年度の変更は認められません。

補償の対象になる作業の範囲

特別加入していても、補償されるのは建設業の一人親方等の場合、請負契約に直接必要な行為や請負工事現場での作業など、しおりが列挙する範囲に限られます。しおりが挙げる業務災害の範囲は次の5つです(しおり「6 補償の対象となる範囲」)。

ここに挙げたのは業務災害の範囲で、通勤災害の扱いはしおりの同じ節で別に示されているため、この記事では整理していません。見積りや営業など、請負契約に直接必要とは言い切れない行為が範囲に入るかも、この記事では判断できません。範囲の読み方は労働基準監督署に確認してください。

電気工事業の登録・通知との関係

労災保険の特別加入は労働保険の制度で、電気工事業法の登録・通知とは別の手続きであり、一方を済ませても他方の代わりにはなりません。登録・通知が必要かどうかは、事業として行う電気工事の内容で決まります(電気工事業の登録・通知が不要なケースの境界)。開業時に必要な届出の全体は電気工事業の開業時に必要な届出で整理しています。

労働者を使う日が1年間で100日以上になる場合は上の「一人親方等」の説明に当てはまらなくなるため、雇用後の労働保険の扱いは労働基準監督署で確認してください。

この整理で言えないこと

公式窓口で確認する事項

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。加入できるか、どの団体に申し込むか、給付基礎日額をいくらにするかは、都道府県労働局または労働基準監督署で最終確認してください。制度全体は厚生労働省「労災保険への特別加入」で公開されています。

まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。

一次資料の一覧は公式資料・根拠、判定ルールの検証記録は公開ルール台帳で確認できます。