公式資料をもとに整理

一人親方のインボイス登録(2割特例・3割特例)

インボイス(適格請求書)の登録は任意で、登録すると基準期間の売上にかかわらず消費税の課税事業者になります。電気工事の一人親方や個人事業主が元請から登録を求められたときに、登録の手続き、免税事業者から登録した個人の負担を軽くする2割特例(令和8年分まで)と3割特例(令和9年分・令和10年分)、建設業の簡易課税(みなし仕入率70%)、外注先が未登録のときの仕入れの経過措置を、国税庁の案内から整理します。

公開日: 2026-10-09 / 最終更新: 2026-10-09 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

運営: 合同会社フューチャープロンプト。AIを活用して作成し、公開前に公式資料と照合しています。誤りのご報告は運営情報へ。

登録すると何が変わるか

登録を受けた事業者は適格請求書(インボイス)を交付でき、課税事業者として消費税の申告と納税が必要になります。国税庁は、適格請求書は税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者でなければ交付できないと説明しています。また、登録を受けた課税事業者は、基準期間の課税売上高にかかわらず消費税の納税義務が免除されません(国税庁タックスアンサーNo.6498)。

取引先が課税事業者で仕入税額控除を受ける場合、控除の要件として、帳簿とインボイスの保存が必要になります。元請が一人親方に登録を求めるのは、この控除の要件が理由です。登録するかどうかは事業者の任意で、登録しない場合は免税事業者のままでいられますが、インボイスは交付できません。

登録の手続きと登録番号

登録は「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出して行い、e-Taxで作成・提出するか、書面で作成して納税地を管轄する業務センターへ送付します。免税事業者が申請するときは、提出日から15日以降の日を登録希望日として記載します(国税庁「適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」、国税庁タックスアンサーNo.6629)。

登録の手続きの要点(国税庁の案内)
項目内容
提出するもの適格請求書発行事業者の登録申請書(国内事業者用)
提出方法e-Taxで作成・提出するか、書面で作成して送付します。
登録の効力税務署長が登録をした日から生じます。免税事業者は、提出日から15日以降の登録希望日から登録を受けることができます。
登録番号法人番号を持たない個人事業者は「T+13桁の数字」です。登録後は「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で氏名などが公表されます。
屋号などの公表主たる屋号や主たる事務所の所在地の公表を希望する個人事業者は、別に公表事項の公表(変更)申出書の提出が必要です。

令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日を含む課税期間中に免税事業者が登録を受けた場合は、登録を受けた日から適格請求書発行事業者となれる経過措置があります(No.6498の注1)。課税事業者になるための届出が別に必要かどうかは、登録する時期によって扱いが異なるため、税務署で確認してください。

電気工事業の登録や開業届と、インボイスの登録は別の手続きです。開業時の届出は電気工事業を始めるときの届出で整理しています。

2割特例・3割特例・簡易課税の使い分け

免税事業者がインボイスの登録を機に課税事業者になった個人は、令和8年分までは納付税額を売上税額の2割にでき(2割特例)、令和9年分・令和10年分は3割にできます(3割特例)。2割特例は、事前の届出なしに、申告書に適用を受ける旨を付記して使います。3割特例の申告の手順は、国税庁の案内で確認してください。

2割特例・3割特例・簡易課税の比較(国税庁の案内)
制度対象となる期間主な要件納付税額
2割特例令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間インボイス制度を機に免税事業者から登録を受けた事業者。基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超える人は対象外売上税額の2割
3割特例令和9年分・令和10年分登録を受けて免税事業者から課税事業者になった個人事業者。基準期間(令和9年分なら令和7年)の課税売上高が1,000万円以下。法人は対象外売上税額の3割
簡易課税国税庁の案内に期間の記載なし基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、選択届出書を提出。選択したら原則2年間は継続売上税額からみなし仕入率(建設業は70%)で仕入税額を控除

個人事業者の課税期間は暦年(1月から12月)なので、令和8年分の課税期間は令和8年9月30日を含み、2割特例の最後の年分にあたります。令和9年分からは3割特例に移ります(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。

建設業に当たる電気工事は、簡易課税の事業区分が第3種事業、みなし仕入率は70%です。国税庁の事業区分の表は、第3種事業を「農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業」としています。個別の工事や販売が第何種に当たるかは、事業の内容ごとに判定が要るため、税務署で確認してください。

簡易課税を選ぶ届出の期限は、原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日までです。ただし、2割特例か3割特例を受けた課税期間の翌課税期間から簡易課税に移る場合は、その翌課税期間の申告期限までに届出書を出せば、その課税期間から適用できます。2割特例を受けた課税期間の翌課税期間が令和8年9月30日以前に終わる場合だけは、その課税期間の末日までになります(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。

2割特例は一般課税と簡易課税のどちらを選んでいる場合でも使えます。一方で国税庁は、多額の設備投資で仕入れが売上げより多くなる人のように、一般課税や簡易課税のほうが納付額が少なくなる場合があるとしています(確定申告書等作成コーナー「2割特例とは」)。どの方法が有利かは、売上げと仕入れの実績で変わるため、この記事では判定できません。

外注先が未登録のときの仕入れの経過措置

登録していない外注先(免税事業者など)への支払いは、令和13年9月30日まで、仕入税額相当額の一定割合を控除できます。割合は令和8年10月1日から70%に下がりました。工事の一部を一人親方などに外注する電気工事業者が課税事業者である場合に関係します。

割合は、課税仕入れの時期で決まります。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の控除割合(国税庁Q&A問113-3)
課税仕入れの時期控除できる割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日30%

課税仕入れの時期は、役務の提供なら原則として約した役務の全部が完了した日、商品の仕入れなら引渡しの日です。たとえば令和8年9月21日から提供を受けて同年10月20日に完了した工事の外注は、完了日が10月20日なので70%で計算します(Q&A問113-3の設例)。

令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一のインボイス発行事業者以外の者(取引先1者ごと)からの課税仕入れの合計額(税込み)が、その年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える部分には、この経過措置を適用できません(国税庁「令和8年度税制改正特集」、Q&A問113-3)。

このほか、一定規模以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入れで、支払対価(税込み)が1万円未満のものについて、一定の事項を記載した帳簿だけの保存で仕入税額控除を受けられます(少額特例)。1万円未満かどうかは、国税庁のQ&A問112で示された単位で判定します(Q&A問112)。対象となる事業者の範囲は、国税庁の案内で確認してください。

登録をやめるときの期限

登録をやめるには「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を、取消しを求める課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出します。期限は国税庁タックスアンサーNo.6629の届出書一覧に載っています。提出期限の日が休日に当たっても、その日までに出さないと取消しの効力は得られない扱いなので、余裕をもって提出してください。

登録をやめたあとの納税義務の有無は、基準期間の課税売上高などで決まります。

インボイスの登録は税の手続きで、電気工事業法の登録・通知や建設業許可とは別の制度です。一人親方の労災の特別加入も別の手続きとして、電気工事の一人親方の労災保険特別加入で整理しています。従業員を雇う場合の保険は従業員を雇った電気工事業者の労災保険・雇用保険の加入手続きを確認できます。

この整理で言えないこと

公式窓口で確認する事項

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。登録の要否と時期、特例の適用、事業区分、届出書の期限は、所轄の税務署、またはインボイスコールセンター・税務署の税の相談窓口で確認してください。

まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。

一次資料の一覧は公式資料・根拠、判定ルールの検証記録は公開ルール台帳で確認できます。