公式資料をもとに整理

電気工事の契約不適合責任(民法の通知期間と標準約款の請求期間)

引き渡した電気工事に契約と合わない点があったとき、注文者は民法の定めで追完・代金減額・損害賠償・解除を請求でき、不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知する必要があります。国土交通省の標準約款は、これとは別に、引渡しから原則2年以内の請求と、設備機器の原則1年という期間を定めています。民法の通知期間と約款の請求期間の違いを、条文から整理します。

公開日: 2026-10-05 / 最終更新: 2026-10-05 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

注文者が請求できる4つのこと

引き渡された工事の目的物が、種類または品質について契約の内容に適合しないとき、注文者は追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができます。e-Gov法令検索「民法」は、売買の担保責任の規定(第562条〜第564条)を、請負など売買以外の有償契約に準用しています(第559条)。

契約不適合に対して注文者ができる請求(民法)
請求内容根拠
履行の追完修補、代替物の引渡しなど。請負人は、注文者に不相当な負担を課さない範囲で、請求と異なる方法も選べる第562条
代金の減額相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないときに請求できる(追完が不能な場合などは催告なし)第563条
損害賠償・解除追完や減額の請求とは別に、債務不履行による損害賠償と解除も妨げられない第564条

不適合が、注文者が供した材料の性質や、注文者が与えた指図によって生じたときは、注文者は上の請求をできません。ただし、請負人がその材料や指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りではありません(第636条)。

民法の期間は「知った時から1年以内の通知」

注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないと、注文者は追完・減額・損害賠償・解除の請求をできなくなります(民法第637条第1項)。期間の数え始めは引渡しの日ではなく、注文者が不適合を知った時です。

引渡しの時に請負人が不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この1年の制限は適用されません(同条第2項)。

標準約款の請求期間(2年・設備機器は1年)

国土交通省の公共工事標準請負契約約款と民間建設工事標準請負契約約款(甲)は、引渡しを受けた日から一定の年数以内でなければ、契約不適合を理由とする請求等ができないと定めています。どちらも民法第637条第1項は、この約款の期間には適用しないと書いています(公共第57条第7項、民間(甲)第44条第7項)。

標準約款の契約不適合責任期間
確認する点公共工事標準請負契約約款(第57条)民間建設工事標準請負契約約款(甲)(第44条)
請求等ができる期間引渡しを受けた日から○年以内(注: 原則として2を記入する)引渡しを受けた日から2年以内
設備に関する例外設備機器本体等は、引渡しの時に発注者が検査して直ちに追完を請求しなければ、受注者は責任を負わない。検査で通常の注意では発見できなかったものは、引渡しを受けた日から○年が経過する日まで請求できる(注: 原則として1を記入する)建築設備の機器本体、室内の仕上げ・装飾、家具、植栽等は、同じく引渡しの時の検査と直ちの請求が必要。通常の注意では発見できなかったものは、引渡しから1年が経過する日まで請求できる
通知による延長期間内に不適合を知って通知し、通知から1年が経過する日までに根拠を示して請求したときは、期間内の請求とみなす同じ(第4項)
受注者の故意・重過失約款の期間は適用せず、民法による同じ(第6項)

公共工事の約款では、年数の欄は契約ごとに書き込む形で、注に「原則として」の数字が示されています。実際の契約で何年になっているかは、契約書の記載で確認します。

電気工事のうち、どこまでが「設備機器本体等」や「建築設備の機器本体」に当たるかは、約款の条文からは決まりません。配線工事と機器の取付けを分けて見るかも含め、契約書と設計図書の定めを確認します。

なお、民間(甲)約款は(公共工事の約款にも同じ趣旨の定めがあります)、住宅新築請負契約の場合に、住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令第5条の部分(構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分)の請求期間を10年とする定めを置いています(第9項)。対象の部分は同施行令第5条が列挙しており、住宅の工事を請け負うときは、自社の工事がその部分に当たるかを確認します。

契約書で確認する点

建設業法は、契約書に、工事目的物の契約不適合を担保すべき責任や保証保険契約などの措置について定めるときは、その内容を書くことを求めています(第19条第1項第13号)。約款をそのまま使わない契約でも、この事項に当たる定めがあるかを見ます。記載事項の全体は請負契約書に書く16項目と変更時の書面交付で整理しています。

契約書に期間や範囲の定めがないときは民法の規定が基本になり、約款の2年や1年は自動では入りません。契約の相手や工事の種類ごとに使われる約款や書式が違うため、自社の契約で適用される条項を読んで確認してください。

発注者と意見が分かれたときの手続きは建設工事紛争審査会(あっせん・調停・仲裁)と電気工事業法の苦情あっせん制度の違いで整理しています。

公式窓口で確認する事項

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。個別の工事で責任の有無や期間がどうなるかは、契約書の条項を確認したうえで、弁護士などの専門家や公式窓口に確認してください。標準約款は改正されることがあるため、最新の版は国土交通省「建設工事標準請負契約約款」のページで確認できます。

契約で現場に置く人の役割は現場代理人と主任技術者・監理技術者の違い(権限・常駐・兼務)で整理しています。

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