建設業法第34条第2項・第19条の3・第20条
労務費に関する基準(建設業法第34条)と電気工事の見積り
労務費に関する基準は、中央建設業審議会が建設業法第34条第2項に基づき令和7年12月2日に勧告した、適正な労務費の考え方を示す基準です。人工の単価である公共工事設計労務単価に、作業に見合った歩掛(単位の作業量あたりの人日)を掛けて求める、という計算の型を示しています。 この記事は、電気工事を請け負う側・発注する側のどちらにも関わる点として、基準が何を決めているか、見積書の労務費との関係、基準値の使い方と限界を整理します。
公開日: 2026-10-12 / 最終更新: 2026-10-12 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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労務費に関する基準とは
建設業法第34条第2項は、中央建設業審議会が「建設工事の工期及び労務費に関する基準」を作成し、その実施を勧告できると定めています(e-Gov法令検索「建設業法」)。国土交通省は、令和7年12月2日の中央建設業審議会で「労務費に関する基準」が作成され、実施が勧告されたと公表しています(国土交通省「労務費に関する基準」本文)。
基準は法律そのものではなく、勧告です。ただし、国土交通省の運用方針は、建設業法第19条の3・第20条にいう「通常必要と認められる労務費」を、基準に基づいて「適切な職種の公共工事設計労務単価×施工条件等に照らして適切な歩掛×必要な数量」の式で位置づけています(国土交通省の運用方針)。令和7年12月12日には、この運用方針が前提とする改正建設業法が全面施行されています。
適正な労務費の計算の型
基準本文が示す計算は、次のとおりです。適切な職種の公共工事設計労務単価(円/人日・8時間)に、施工条件・作業内容に照らして適正な歩掛(人日/単位施工量)を掛けて「単位施工量あたりの労務費」を出し、必要な数量を掛ける、という順序です。労務単価について、公共工事設計労務単価を下回る水準を設定しないことも示されています。
| 要素 | 内容 | 単位 |
|---|---|---|
| 労務単価 | 適切な職種の公共工事設計労務単価 | 円/人日(8時間) |
| 歩掛 | 施工条件・作業内容に照らして適正なもの | 人日/単位施工量 |
| 数量 | その工事で必要な施工量 | 工事ごと |
たとえば同じ配線工事でも、天井裏の狭い場所や猛暑日の作業が見込まれる現場は、標準的な現場より歩掛が大きくなり得ます。国土交通省の運用方針も、猛暑日など作業効率に影響する事象が見込まれるときは、その影響を踏まえた歩掛で見積書を作り、見積条件とともに注文者へ示すことが必要だとしています。
見積り・契約の条文との関係
基準そのものに罰則はありませんが、「通常必要と認められる」金額を扱う条文が建設業法にあります。次の4か所です。
| 条文 | 求めていること | 名宛人 |
|---|---|---|
| 第19条の3第1項 | 通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする契約の禁止 | 注文者 |
| 第19条の3第2項 | 同じ内容の契約の禁止(正当な理由がある場合を除く) | 建設業者 |
| 第20条第2項 | 材料費等記載見積書の材料費等の額を、通常必要と認められる額より著しく下回らせない | 建設業者 |
| 第20条第6項 | 見積書の材料費等の額を、通常必要と認められる額より著しく下回るよう変更することを求めない | 注文者 |
違反した発注者に対しては、許可をした国土交通大臣または都道府県知事が勧告できる規定があります(第19条の6第1項、第20条第7項)。勧告に従わないときの公表は、第20条第7項の勧告について、第20条第8項が準用する第19条の6第3項に定められています。第19条の3第1項違反に対する第19条の6第1項の勧告は、独占禁止法上の事業者に当たる発注者が対象から除かれています。
第20条第7項の勧告は、通常必要と認められる費用の額が政令で定める金額以上の契約が対象です。条文の詳しい読み方は不当に低い請負代金などの禁止のガイド、見積書の内訳は契約書の記載事項のガイドで整理しています。
基準値の公表と使うときの注意
計算式に入れる労務単価の電工の金額は、電工の公共工事設計労務単価のガイドで都道府県別に整理しています。
国土交通省は、基準に基づく具体的な値を「基準値」として公表しています。国土交通省が「単位施工量あたりの労務費」の形で示すもので、公表の入口は労務費に関する基準のポータルです。
自分が行う電気工事の作業に基準値があるかは、ポータルで確認できます。令和7年12月時点で13職種分野99工種(作業)について基準値が公表され、29の許可業種のうち15業種に対応しています(国土交通省の公表資料)。ポータルは更新されるため、基準値は更新されるため、見積りの都度、最新の公表内容を確認する必要があります。
基準値は、個別の契約にそのまま当てはめる金額ではありません。基準値に使われている歩掛は平均的な作業条件を想定したものなので、必要に応じて補正したうえで見積もることが運用方針に書かれています。基準値は、見積りの出発点と、金額の妥当性を説明する材料として使う位置づけです。
電気工事の見積りで確認すること
- 見積書で労務費を、材料費や諸経費と分けて書いているか。書き方は第20条第1項の「材料費等記載見積書」に沿います。
- 労務費の根拠を、労務単価・歩掛・数量の3つに分けて説明できるか。
- 現場の条件(高所、狭所、猛暑日、夜間作業など)で歩掛を補正した場合、その前提を見積条件として書いているか。
- 発注側から値引きを求められたとき、労務費の内訳まで下げる内容になっていないか。第20条第6項は、著しく下回る変更の要求を注文者に禁じています。
- 下請へ発注する側は、下請の見積書の労務費を、基準値や公共工事設計労務単価と見比べて極端に低くないかを確認しているか。
見積期間の最低日数は建設工事の見積期間のガイド、資材価格が急に上がったときの通知は資材価格高騰の通知のガイドで確認できます。
この整理で言えないこと
- 個別の見積書や契約の労務費が、通常必要と認められる額を下回っているかの判定は行いません。
- 電工の工種ごとの基準値の金額は、この記事では示しません。公表値は更新されるため、ポータルで確認してください。
- 基準の違反として、個別の事案でどの勧告・公表が行われるかは扱いません。
- 見積書の作成、発注者との交渉、行政庁への相談の代行は行いません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。基準値の適用や個別の契約への当てはめは、許可をした国土交通大臣または都道府県知事の担当窓口、または国土交通省の窓口に確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。