公式資料をもとに整理
定年は60歳以上・65歳までの雇用確保措置
従業員の定年を定めるときは、60歳を下回ることができません(高年齢者雇用安定法第8条)。定年を65歳未満にしている事業主は、65歳までの雇用を守るため、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のどれかを講じる義務があります(第9条)。熟練の職人を定年後も現場に残したい電気工事業の事業者向けに、三つの措置の違い、努力義務にとどまる70歳までの就業確保、毎年の報告の期限を条文から整理します。
公開日: 2026-10-19 / 最終更新: 2026-10-19 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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定年の下限は60歳(第8条)
事業主が定年を定めるときは、60歳を下回ることができません。ただし、高年齢者が従事することが困難と認められる業務として厚生労働省令で定める業務に就く労働者は例外です。60歳未満の定年を置いている場合は、まず就業規則の定めを見直してください。
65歳までの雇用確保措置(第9条)
定年を65歳未満に定めている事業主は、次の三つのうちいずれかを講じなければなりません。定年そのものを65歳以上に定めている事業主には、この義務はかかりません。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 定年の引上げ | 定年の年齢を65歳以上にする |
| 継続雇用制度の導入 | 現に雇用している高年齢者が希望するときは、定年後も引き続いて雇用する制度 |
| 定年の廃止 | 定年の定めをなくす |
継続雇用制度には、自社で再雇用する場合のほか、特殊関係事業主(経営を実質的に支配できる関係などにある事業主として厚生労働省令で定める事業主)が定年後に引き続き雇用する契約を結ぶ制度も含まれます(同条第2項)。
継続雇用では、定年前と同じ労働条件で雇うことまでは条文に書かれていません。一方で、心身の故障で業務に堪えられない、勤務状況が著しく不良で職責を果たせないといった、就業規則に定める解雇事由または退職事由に当たる場合は、継続しないことが認められるとされています(厚生労働省のパンフレット)。
賃金や職務を変えるときは、本人に労働条件を書面で明示します。明示事項は労働条件通知書と就業規則のガイドにまとめています。
再雇用を1年ごとの有期契約にする場合は、通算5年を超えると無期転換の申込みができるようになります。定年後に引き続き雇用される人には特例の制度もあります。仕組みは有期契約の無期転換ルールのガイドで確認できます。
70歳までの就業確保措置(努力義務)
令和3年4月1日から、定年が65歳以上70歳未満の事業主と、70歳未満までの継続雇用制度を導入している事業主には、70歳までの就業機会を確保する措置を講じる努力義務があります(第10条の2)。義務ではなく努力義務で、70歳までの定年の引上げを義務付けるものでもないと、厚生労働省は説明しています。
- 定年を70歳まで引き上げる
- 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)を導入する
- 定年の定めをなくす
- 70歳まで継続的に業務委託契約を結ぶ制度を導入する(創業支援等措置)
- 70歳まで継続的に、自社が行う社会貢献事業か、自社が委託・出資する団体の社会貢献事業に従事できる制度を導入する(創業支援等措置)
最後の二つは雇用ではなく契約による就業で、これだけで70歳までの就業を確保するときは、過半数労働組合(無ければ過半数代表者)の同意が必要です。業務委託で働く職人は労働者ではなく個人事業主の立場になります。委託先として守る決まりはフリーランス法のガイドで整理しています。
毎年6月1日現在の報告と就業規則の変更
事業主は毎年、6月1日現在の定年、継続雇用制度、65歳以上継続雇用制度、創業支援等措置の状況を、翌月の15日までに、高年齢者雇用状況等報告書(様式第2号)で報告します。提出先は、主たる事務所の所在地を管轄するハローワークです(高年齢者雇用安定法第52条、同法施行規則第33条)。報告の期限は毎年7月15日で、事業所の規模にかかわらずすべての事業主が対象です。
定年や雇用確保措置を変えるときは、就業規則を変更する必要があります。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、変更した就業規則を所轄の労働基準監督署長に届け出ます。そのほか、高年齢者雇用等推進者(雇用確保措置などを進める担当者)の選任も努力義務で、選任してもハローワークへの届出は要りません(第11条、厚生労働省のパンフレット)。
措置を講じないときの指導・勧告・公表
第9条第1項に違反している事業主に対し、厚生労働大臣は指導・助言を行い、それでも違反していると認めるときは、措置を講ずるよう勧告できます。勧告に従わなかったときは、その旨を公表できます(第10条)。
この整理で言えないこと
- 個別の会社の定年や再雇用の条件が適法かは判定しません。
- 再雇用後の賃金をいくらにできるかは扱いません。
- 雇用保険や年金の給付(高年齢雇用継続給付、在職老齢年金)は扱いません。
- 創業支援等措置の計画の作り方は扱いません。
- 一人親方や個人事業主として請け負う人には、この整理は直接あてはまりません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。 個別の制度設計や報告は、所轄のハローワーク・都道府県労働局で確認してください。条文はe-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」、 報告の様式と期限はe-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則」、 70歳までの努力義務は厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」です。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
次に知りたいことは、解雇の予告は解雇予告のガイド、年次有給休暇は有給休暇の付与日数のガイド、従業員の社会保険は健康保険・厚生年金のガイドです。