公式資料をもとに整理
公共工事の前払金と履行保証の違い
公共工事では、受注者が保証事業会社と保証契約を結んで保証証書を発注者に預けると、標準約款の定めにより、請負代金の一部を前払金として請求できます。契約を結ぶときには、別に履行保証(契約保証金の納付や保証証券など)を付けます。公共工事標準請負契約約款と前払金保証事業法の条文から、2つの保証の違いと、電気工事の受注者が押さえる点を整理します。
公開日: 2026-10-17 / 最終更新: 2026-10-17 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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前払金の保証と履行保証は別の仕組み
前払金の保証は「発注者が払った前払金が戻らなくなる」リスクに備える仕組み、履行保証は「受注者が工事をやり遂げない」リスクに備える仕組みです。公共工事の前払金保証事業に関する法律の第2条第2項は、前払金の保証を、受注者が債務を履行しないため発注者が請負契約を解除したときに、前金払をした額から既済部分の代価に相当する額を引いた額(保証金)の支払いを、受注者に代わって引き受けることと定めています。
| 項目 | 前払金の保証 | 履行保証 |
|---|---|---|
| 約款の条 | 前金払及び中間前金払(第35条) | 契約の保証(第4条) |
| 受注者が得るもの | 請負代金の一部を前払金として請求できる | 契約の締結と同時に付ける保証(保証証券・保険を付けると契約保証金の納付が免除される) |
| 保証の相手方 | 保証事業会社(国土交通大臣の登録を受けた会社) | 契約保証金・有価証券等のほか、金融機関の保証、保証証券、保険の会社 |
前払金を受け取る流れ(保証契約・保証証書・14日以内の支払)
公共工事標準請負契約約款の第35条は、受注者が保証事業会社と、契約書に書かれた工事完成の時期を保証期限とする保証契約を締結し、その保証証書を発注者に寄託して、請負代金額の十分の〇以内の前払金の支払いを請求できると定めています。〇の部分は各発注者が契約で決める数字で、約款の注には記入例として「四」が示されています。
- 発注者は、請求を受けた日から14日以内に前払金を支払わなければなりません(第35条第3項)。
- 前払金を受けた後に、保証事業会社と中間前払金の保証契約を結び、請負代金額の十分の〇以内の中間前払金を請求できる定めもあります(約款の注には記入例として「二」)。中間前払金は約款(A)の場合の定めです。
- 保証証書の寄託に代えて、保証事業会社が定め発注者が認めた電磁的方法を使うこともできます(第35条第2項)。
保証事業会社は、発注者が前払金を払ったあと、受注者がそれを適切に工事へ使っているかを監査します(前払金保証事業法第27条)。受注者が責めに帰すべき事由で債務を履行せず発注者が契約を解除したときは、発注者は保証事業会社へ書面で保証金の支払いを請求でき、保証事業会社は書面を受理した日から30日以内に支払うことになっています(同法第13条)。
前払金の使い道と、請負代金が変わったとき
前払金は、その工事の材料費・労務費などに使います。約款の第37条(A)は、決められた経費以外の支払いに充てることを禁じています。対象は、材料費、労務費、機械器具の賃借料、機械購入費(その工事で償却される割合に相当する額に限る)、動力費、支払運賃、修繕費、仮設費、労働者災害補償保険料、保証料です。
ただし、前払金額の百分の〇〇(約款の注には記入例として「二十五」)を超えない範囲で、現場管理費と一般管理費等のうちその工事の施工に要する費用に充てることができます。この例外は中間前払金には使えません(第37条(A)第2項)。
- 請負代金額が著しく増額されたとき、受注者は増額後の十分の〇から受領済みの前払金額を引いた額の範囲で、追加の前払金を請求できます。追加の請求の前に、保証契約を変更して変更後の保証証書を寄託します(第36条)。
- 請負代金額が著しく減額され、受領済みの前払金額が減額後の十分の〇を超えるときは、減額された日から30日以内に超過額を返還します(第35条)。
- 前払金額が変わらない工期の変更があったときは、発注者に代わって保証事業会社へ直ちに通知する定めを使う契約もあります(第36条第4項。発注者が代理させる場合に使う規定です)。
工事代金の支払日や下請への支払いの期限は、下請代金の支払期限の記事で整理しています。
履行保証の5つの方法と保証の額
約款(A)の第4条は、受注者は契約の締結と同時に、次のいずれかの保証を付けなければならないと定めています。
- 契約保証金の納付
- 契約保証金に代わる担保となる有価証券等の提供
- 債務の不履行により生ずる損害金の支払いを保証する銀行または発注者が確実と認める金融機関等の保証
- 公共工事履行保証証券による保証
- 債務の不履行により生ずる損害をてん補する履行保証保険契約の締結(保険証券を直ちに発注者に寄託)
保証の額は請負代金額の十分の〇以上とされ、約款の注には記入例として「一」が示されています(第4条第3項)。第4号(保証証券)または第5号(保険)の保証を付けたときは、契約保証金の納付が免除されます(同条第5項)。請負代金額が変わったときは、保証の額が変更後の請負代金額の十分の〇に達するまで、発注者は増額を請求でき、受注者は減額を請求できます(同条第6項)。
約款には、金銭的保証を必要とする場合に使う(A)のほかに、公共工事履行保証証券による保証だけを付ける(B)があります。(B)は、引き渡した工事目的物が契約の内容に適合しない場合を保証する特約を付けた証券に限るとしています。どちらを使うかは発注者が契約で決めます。
地方公共団体の契約保証金
地方公共団体との契約では、地方自治法施行令の第167条の16が、契約の相手方に、その団体の規則で定める率または額の契約保証金を納めさせなければならないと定めています。実際に求められる金額や、保証証券などで代えられるかどうかは、各団体の規則と入札の案内で決まります。
入札で最も安い価格の人が落札できない場合は公共工事の落札者の決め方の記事で整理しています。公共工事に参加するための資格の要件は公共工事の入札参加資格の記事で整理しています。
この整理で言えないこと
- 公共工事標準請負契約約款は標準の書式で、〇の部分の数字や(A)(B)のどちらを使うかは、発注者ごとの契約書で決まります。個々の工事の条件は、契約書と入札の案内で確認してください。
- 保証料の金額、保証事業会社ごとの手続、金融機関の保証の可否は扱いません。
- 民間工事の前払金や、下請契約での前払金の扱いは扱いません。
- 契約書の作成や、保証契約の締結の代行は行いません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。前払金の割合、履行保証の方法と額、契約保証金の免除の可否は、発注者(国の機関や地方公共団体)の契約担当窓口と、契約書・入札の案内で確認してください。
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