公開されている工事区分表をもとに整理

テナント工事のA・B・C工事の違いと電気工事の資格・登録

A工事・B工事・C工事は法律の用語ではなく、ビルごとの契約や工事区分表で決まる「誰が費用を負担し、誰が施工するか」の分け方です。一方、電気工事士の資格や電気工事業の登録・通知が必要かどうかは、A・B・Cのどれに当たるかではなく、電気工事士法・電気工事業法で決まります。仙台市・川崎市・文京区が公開している工事区分表の実例と、2つの法律の条文を並べて整理します。

公開日: 2026-10-17 / 最終更新: 2026-10-17 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

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A工事・B工事・C工事の分け方

公開されている3つの工事区分表では、いずれもA工事は貸主側(市・区)が費用を負担する基準仕様の工事、C工事は借りる側(テナント)が費用を負担する工事とされています。B工事は、費用はテナントが負担する工事で、仙台市と文京区では施工者を貸主側が指定する区分、川崎市では「工事業者指定工事」とされています。

3つの工事区分表における定義(各自治体の公開資料)
資料A工事B工事C工事
仙台市(店舗区画・室外機置場)費用負担・発注者は仙台市。施行者は仙台市の指定業者費用負担・発注者は借受者。施行者は仙台市の指定業者費用負担・発注者は借受者。施行者は借受者の指定業者
川崎市(コンビニエンスストア)基準仕様。費用負担・発注者は川崎市工事業者指定工事。費用負担・発注者はテナントテナント工事。費用負担・発注者はテナントで、施工者もテナントの指定
文京区(別紙3)標準仕様。費用負担は事業主(甲)変更内容。費用負担はテナント(乙)。施工者は甲または甲の指定業者変更内容。費用負担はテナント(乙)。施工者は乙または乙の指定業者

3資料とも、B工事・C工事は借りる側が原状回復を負う区分とされています(川崎市・文京区の表は「あり」、仙台市の表はB・Cとも借受者)。ただし、いずれも自治体が貸し出す施設の例です。民間ビルでは区分の線引きが異なることがあるため、実際の契約で使う工事区分表を確認する必要があります。

電気設備で境界になる場所(3つの実例)

電灯・コンセントの工事は、3資料とも「貸主側が盤とメーターまで設け、そこから先をテナントが行う」形で区分されています。ただし、境界になる盤が資料ごとに違います。

電灯・コンセント設備の区分の実例
資料A工事B工事C工事
仙台市基準容量における店舗区画内の主開閉器盤とメーター(WHM)の設置まで主開閉器盤から店舗電灯分電盤までの幹線の配線・接続、基準容量を超える幹線の増設など。共用部を通過する電源はB工事店舗電灯分電盤の設置と、分電盤以降の全工事
川崎市コンビニ用の電灯分電盤の設置(検定済電力量計の設置を含む)無し分電盤以降のテナント工事(照明・コンセントを含む)
文京区基準容量・基準配置の主開閉器盤と分岐盤の設置まで(メーターと主幹ブレーカーの設置を含む)C工事の設計に起因する追加・変更工事(テナント盤や空調換気への電源配線を含む)A・B工事以降の全工事

同じ「盤まで」でも、仙台市は主開閉器盤とメーターまで、川崎市は分電盤の設置まで、文京区は主開閉器盤と分岐盤の設置までと範囲が違います。「B工事は分電盤の更新」のように一般化せず、自分が借りる物件の表で確認してください。

火災報知設備や非常照明のように建物全体の防災に関わる設備は、表によって置き場所が違います。川崎市の表では、非常照明は「引き渡し時点のレイアウトで法に則り設置」がA工事、B工事は無し、「テナント間仕切り設置に伴う増移設、法的検査」がC工事とされています。消防設備の工事に必要な資格は電気工事士とは別の制度なので、電気工事と消防設備工事の違いを、電話・LANなどの通信配線は電気工事と電気通信工事の違いを参照してください。

資格・登録は工事区分とは別に決まる

工事区分表は、貸主とテナントの間の費用と施工者の取り決めです。電気工事の作業に誰が従事できるかは電気工事士法、電気工事業を営む者に登録や通知が要るかは電気工事業法が定めており、A・B・Cのどれに当たるかとは関係しません。

電気工事士法・電気工事業法の定め
論点根拠定めの内容
自家用電気工作物の電気工事の作業電気工事士法第3条第1項第一種電気工事士でなければ従事してはならない(特殊電気工事・経済産業省令で定める作業を除く。簡易電気工事は第4項で認定電気工事従事者も従事できる)
一般用電気工作物等の電気工事の作業電気工事士法第3条第2項第一種または第二種電気工事士でなければ従事してはならない(経済産業省令で定める作業を除く)
電気工事の範囲電気工事士法第2条第3項電気工作物を設置し、または変更する工事。政令で定める軽微な工事は除く
電気工事業の登録電気工事業法第2条第2項・第3条第1項電気工事を行う事業を営もうとする者は、営業所の設置状況に応じて経済産業大臣または都道府県知事の登録を受ける(第17条の2に規定する者を除く)

つまり、C工事でテナントが自分で選んだ業者に頼む場合も、B工事で貸主指定の業者が施工する場合も、電気工事に当たる作業に従事する人は、原則として、工事の対象となる電気工作物に応じた電気工事士であることが必要です(軽微な工事、経済産業省令で定める作業、特殊電気工事、簡易電気工事には別の定めがあります)。

その工事を請け負って行う事業者は、登録電気工事業者または通知電気工事業者の立場にあるかが問われます。自家用電気工作物に係る電気工事のみを行う事業者の通知は、電気工事業法第17条の2で定められています。登録と通知の違いは登録電気工事業者の概要、通知電気工事業者の概要で説明しています。

テナント区画の工事が、一般用電気工作物等と自家用電気工作物のどちらに係るかは、そのビルの受電の形で変わりえます。区分の考え方は一般用電気工作物と自家用電気工作物の違い、資格ごとにできる工事の範囲は電気工事士の資格と作業範囲にまとめています。判断に迷う場合は、ビルの管理者や電気主任技術者に確認してください。

工事の前に確認すること

参照した資料

次に知りたいこと

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。工事区分は物件ごとの契約で決まり、電気工事士法・電気工事業法の適用は個別の工事内容で変わるため、最終的には貸主・ビル管理者と所轄の行政庁の案内で確認してください。

まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。

一次資料の一覧は公式資料・根拠、判定ルールの検証記録は公開ルール台帳で確認できます。