請負契約を電子契約で結ぶとき
電気工事の請負契約を電子契約で結ぶ条件
建設工事の請負契約は、相手方に電子契約の方法を示して承諾を得たうえで、見読性・原本性・本人性の3つの技術的基準を満たす方法で結ぶ必要があります。国土交通省は令和7年9月30日付のガイドラインで、立会人型の電子署名についても、満たすべき条件を示しています。
公開日: 2026-10-19 / 最終更新: 2026-10-19 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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先に結論:電子契約にできる条件
建設業法第19条第1項・第2項は、請負契約の内容や変更を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付するよう定めています。同条第3項は、相手方の承諾を得て、情報通信の技術を利用する方法でこれに代えられるとしています。この場合は、第1項・第2項の書面による措置を講じたものとみなされます。
条件は、(1) 方法を示して相手方の承諾を得る、(2) 省令で定める4つの措置のいずれかを使う、(3) 見読性・原本性・本人性の3つの技術的基準に合わせる、の3つです。根拠は建設業法施行令第5条の5と建設業法施行規則第13条の4〜第13条の6で、国土交通省のガイドラインがこれらの内容を具体例つきで説明しています。
記載する項目そのものは書面と同じです。16項目の中身は請負契約書に書く16項目と変更時の書面交付で確認できます。このページは、書面を電子データに置き換えるときの手続きと基準に絞っています。
先に相手方へ示すことと承諾の取り方
電子契約にする当事者は、あらかじめ相手方に、講じる措置の種類と内容を示し、書面または電磁的方法で承諾を得ます(施行令第5条の5第1項)。示す内容は次の2点です(施行規則第13条の5)。
- 電子契約の措置の種類(次の章の4つのうちどれを使うか)
- ファイルへの記録の方式
国土交通省のガイドラインは、措置の種類と一緒にサービス名も示すことが望ましいとしています。記録の方式については、契約書データの形式(PDFなど)、閲覧に使うソフトウェアとそのバージョン(例:「Adobe Acrobat Reader 9.0以上で閲覧可能」)、付ける電子署名やタイムスタンプの形式を示すことが望ましいとしています。
承諾の取り方は、書面のほか、電子情報処理組織を使う方法や電磁的記録媒体を交付する方法でも行えます(施行規則第13条の6)。ガイドラインは例として、電子メール、クラウドサービス、コンパクトディスクを挙げています。
いったん承諾を得ても、相手方から承諾を撤回する申出があれば、書面に代わる電子の措置は取れません。相手方が改めて承諾した場合は、再び電子契約にできます(施行令第5条の5第2項)。
電子契約に使える4つの措置
施行規則第13条の4第1項が定める措置は次の4種類です。ガイドラインが挙げる具体例を併記します。
| 条文 | 措置の内容 | ガイドラインの例 |
|---|---|---|
| 第1号イ | 契約事項を相手方の受信者ファイルへ送信して記録する | 電子メール |
| 第1号ロ | 自分側のファイルの契約事項を相手方の閲覧に供し、相手方の受信者ファイルに記録する | ファイル転送サービス、クラウドサービス(非対面) |
| 第1号ハ | 自分側の受信者ファイルの契約事項を相手方の閲覧に供する | クラウドサービス(対面) |
| 第2号 | 電磁的記録媒体に契約事項を記録して交付する | コンパクトディスク |
ロとハの措置では、契約事項を記録したことを相手方へ通知する仕組みが必要です。ただし、相手方がすでに閲覧したことを確認した場合は、この通知は不要とされています(施行規則第13条の4第3項)。
3つの技術的基準(見読性・原本性・本人性)
どの措置を使う場合でも、施行規則第13条の4第2項の3つの基準に適合させます。ガイドラインは、それぞれ次のように説明しています。
| 基準 | 条文の内容 | ガイドラインの説明 |
|---|---|---|
| 見読性 | 相手方がファイルの記録を出力して書面にできる | 画面や書面に速やかに整然と表示できること。契約成立後に自分の端末へ保存しておくことが望ましい |
| 原本性 | 改変が行われていないかを確認できる措置がある | 公開鍵暗号方式による電子署名、タイムスタンプ、またはこれらと同等の方法を使う |
| 本人性 | 相手方が本人であることを確認できる措置がある | 公開鍵暗号方式なら、第三者機関が発行する電子証明書を添付することが望ましい |
ガイドラインは、建設工事の請負契約は契約金額が大きく契約期間も長いため、改ざんがないか確認できる契約書の存在が重要だと説明しています。電子契約は特別な措置がないと書面より改ざんを見つけにくい点が、原本性の基準の理由です。
電子署名の方式と立会人型の条件
ガイドラインは、電子署名の方式を次の3つに分けています。
- 当事者署名型(ローカル署名):当事者が自分の署名鍵を使い、第三者を介さずに契約する
- 当事者署名型(リモート署名):当事者が自分の署名鍵を使い、第三者の契約サービスを介して契約する
- 事業者署名型(立会人型):契約サービスを提供する第三者の署名鍵を使って契約する
事業者署名型を使う場合、原本性の面ではサービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されていると認められるサービスを使う必要があります。本人性の面では、電子署名が真の契約当事者により付されたことを示す対応として、2要素認証などを使うことが望ましいとされています。どのサービスがこれに当たるかは、サービス提供会社の説明資料で確認します。
電子契約には、電子署名法のほか、書面の保存に関する法律や国税関係帳簿書類の保存に関する法律なども関わる場合があります。ガイドラインは該当する場合にそれぞれの要件も確認するよう求めています。
電子契約を結んだ場合の施工体制台帳の扱いは、別の通知(令和5年国不建第43号)で示されています。施工体制台帳の対象は施工体制台帳と再下請負通知の対象で整理しています。
電子契約を始める前のチェックリスト
- 相手方に、措置の種類(メール・クラウドなど)と記録の方式(ファイル形式・閲覧ソフト・署名の形式)を示したか
- 相手方の承諾を書面または電磁的方法で得て、記録に残したか
- 相手方が書面に出力できる形式(見読性)になっているか
- 電子署名またはタイムスタンプで、改変の有無を確認できるか(原本性)
- 相手方が本人であることを確認できる仕組みがあるか(本人性)。立会人型なら2要素認証などの有無を確認したか
- 締結後の契約データを、自分の端末や社内の保管場所にも保存したか
- 印紙税の扱いは電気工事の契約書の印紙税で確認したか
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。契約書の作成や電子契約サービスの選定も行いません。
2026年10月19日に確認した以下の資料に基づきます。具体的な契約への当てはめは、契約の相手方や国土交通省・都道府県の建設業担当窓口に確認してください。
次に知りたいこと:請求書・見積書の電子保存、下請代金の支払期限
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
一次資料の一覧は公式資料・根拠で確認できます。