取適法第2条・建設業法第2条
取適法(旧下請法)と建設業法の線引き(電気工事の取引別)
令和8年1月1日から、下請代金支払遅延等防止法(下請法)は取適法へ改められました。 電気工事そのものの下請は建設業法の対象で、設計図の作成、盤の製造、保守点検の委託は取適法の対象になりうる取引です。 取引の種類ごとにどちらの法律を見るかを、条文と中小企業庁の資料で整理します。
公開日: 2026-10-17 / 最終更新: 2026-10-17 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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取適法とは(下請法からの改正)
中小企業庁の取適法の改正ポイント説明会資料は、施行期日を令和8年1月1日としています。e-Gov法令検索では、法律名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。 資料はこの法律を取適法と呼び、旧法の名称は「下請代金支払遅延等防止法」と書かれています。
資料が挙げる主な改正は、運送委託の対象への追加、従業員数による規模要件の新設、手形払等の禁止、協議に応じない一方的な代金決定の禁止などです。 電気工事の事業者にとって先に確かめたいのは、自分の取引がこの法律の対象になるかどうかです。
電気工事の取引別・どちらの法律を見るか
| 取引の例 | 見る法律 | 根拠 |
|---|---|---|
| 請け負った電気工事の全部または一部を、他の建設業者に出す | 建設業法(取適法の対象外) | 取適法第2条第4項のかっこ書、建設業法第2条第4項 |
| 電気設備の設計図の作成を他の事業者に頼む | 取適法の対象になりうる(情報成果物作成委託) | 取適法第2条第3項・第7項第3号。中小企業庁の資料は「設計図」を例に挙げる |
| 分電盤など、販売や請負の目的物にする物品・部品の製造を他の事業者に頼む | 取適法の対象になりうる(製造委託) | 取適法第2条第1項 |
| 顧客に提供する保守などのサービスの一部を他の事業者に頼む | 取適法の対象になりうる(役務提供委託)。ただし建設工事の請負は除く | 取適法第2条第4項。中小企業庁の資料は、運送やビルメンテナンスを例に挙げる |
| 自社の事務所の清掃など、自社で使うサービスを頼む | 取適法の対象外 | 中小企業庁の資料(自社で使う役務は含まれない) |
「対象になりうる」と書いたのは、取引の種類に当たっても、次の「会社の規模」の条件を満たさなければ取適法はかからないためです。
保守点検の委託が建設工事の請負に当たるか、役務提供委託に当たるかは、仕事の中身で変わります。この記事では判定しません。
工事の下請が取適法の対象外になる理由
取適法第2条第4項は、役務提供委託の定義の中で、建設業を営む者が業として請け負う建設工事の全部または一部を、他の建設業を営む者に請け負わせることを除いています。 中小企業庁の資料は、その理由を、建設工事の下請については建設業法に取適法と類似の規定があり、請負契約の適正化が別に図られているためと説明しています。
建設業法側の「建設業」は、第2条第2項で「元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業」と定められています。
この定義の文言には、許可を受けていることは入っていません。 電気工事業の登録だけを受けて軽微な工事を請け負う事業者が、取適法の除外にそのまま当たるかどうかは、条文だけでは断定できないため、公正取引委員会または所轄の窓口に確認してください。
工事の下請で見る建設業法の規定は、次のガイドで整理しています。
- 下請代金の支払期日と立替払の制限(支払いの期日と方法)
- 不当な発注慣行の禁止と通報者の保護(不当な発注の禁止)
- 一括下請負の禁止と例外(丸投げの禁止)
取適法がかかる会社の規模
取適法は、委託する側(委託事業者)と受ける側(中小受託事業者)の資本金または従業員数の組み合わせが、第2条第8項・第9項の条件に当たる取引にだけかかります。 法人どうしの資本金の組み合わせは次のとおりです。
| 委託の種類 | 委託する側の資本金 | 受ける側の資本金 |
|---|---|---|
| 製造委託等(政令で定める情報成果物・役務を含む) | 3億円超 | 3億円以下(個人を含む) |
| 同上 | 1千万円超3億円以下 | 1千万円以下(個人を含む) |
| 情報成果物作成委託・役務提供委託(上の政令指定を除く) | 5千万円超 | 5千万円以下(個人を含む) |
| 同上 | 1千万円超5千万円以下 | 1千万円以下(個人を含む) |
資本金の条件とは別に、従業員数の条件があります。製造委託等では委託する側が常時使用する従業員300人超で受ける側が300人以下、情報成果物作成委託・役務提供委託(政令指定を除く)では委託する側が100人超で受ける側が100人以下の場合も対象です(第8項第5号・第6号)。
どの情報成果物・役務が政令の指定に当たるかは、この記事では確認していません。
小規模な電気工事店どうしの取引は、資本金や従業員数の条件に当たらず、取適法の対象にならないことが多いと考えられます。 ただし、大きな会社から設計図の作成や盤の製造を請ける場合には、受ける側として保護の対象になる可能性があります。
委託する側の主な義務
取適法の対象になる取引で、委託する側が負う義務のうち、条文と中小企業庁の資料で確かめたものは次のとおりです。
- 給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを、直ちに書面または電磁的方法で明示する(第4条第1項)。
- 代金の支払期日を、給付を受領した日から60日以内で、できる限り短い期間内に定める(第3条第1項)。
- 取引に関する書類等を作成し、保存する(中小企業庁の資料は保存期間を2年としています)。
- 支払いが遅れたときは遅延利息を支払う(同資料は年14.6%としています)。
禁止行為として、受領拒否、減額、返品、買いたたき、不当な給付内容の変更ややり直しなどが挙げられ(第5条)、改正で手形払等の禁止と、協議に応じない一方的な代金決定の禁止が加わったと資料に示されています。 なお、役務提供委託と特定運送委託では、第5条の禁止行為のうち受領拒否(第1号)と返品(第4号)が除かれます(第5条柱書)。
この整理で言えないこと
- 個別の取引が取適法の製造委託・情報成果物作成委託・役務提供委託のどれに当たるか、資本金や従業員数の条件を満たすかは判定しません。
- 電気工事業の登録だけの事業者が、建設業法の「建設業を営む者」として取適法の除外に当たるかは判定しません。
- 公正取引委員会規則、政令、運用基準の細目は確認していません。
- 契約書の作成・確認や、支払い交渉の代行は行いません。
公式窓口で確認する事項
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。 取適法の適用の有無は公正取引委員会または中小企業庁の相談窓口へ、建設工事の下請に関する建設業法の取扱いは許可行政庁(国土交通省の地方整備局または都道府県)の窓口へ確認してください。
出典: 中小企業庁「2026年1月施行!~下請法は取適法へ~ 改正ポイント説明会」資料(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2025/251014_01.pdf)、e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(331AC0000000120)、同「建設業法」(324AC0000000100)。確認日: 2026年10月17日。
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