公式資料をもとに整理

電気工事業の労働時間に入る移動・待機・着替え

労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間のことで、契約書や就業規則の書き方ではなく、実際に指示や義務づけがあったかで決まります。電気工事業では、現場へ向かう移動、資材の積込み、朝礼、休憩中の電話番などが迷いやすい場面です。厚生労働省のガイドラインと条文をもとに整理します。

公開日: 2026-10-19 / 最終更新: 2026-10-19 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

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労働時間の考え方

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とし、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たると説明しています(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。

同じガイドラインは、労働時間かどうかは労働契約、就業規則、労働協約の定めによらず、労働者の行為が使用者から義務づけられ、または余儀なくされていた状況の有無などから、個別具体的に客観的に判断されると述べています。「うちは移動時間は給料に含めない」と決めていても、それだけでは労働時間から外れません。

労働時間の上限は、労働基準法第32条が、休憩時間を除き1週40時間、1日8時間と定めています(e-Gov法令検索「労働基準法」)。労働時間に入る時間が増えれば、割増賃金や36協定の上限の計算にも影響します。

ガイドラインが挙げる3つの時間

ガイドラインは、次のア〜ウの時間は労働時間として扱わなければならないとしています。これら以外でも、指揮命令下に置かれていると評価される時間は労働時間として扱います。

ガイドラインが挙げる労働時間の3類型と電気工事業での当てはめ例
類型ガイドラインの記載電気工事業での当てはめ例
ア 準備行為・後始末使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や、業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内で行った時間会社の指示で行う作業服への着替え、工具・材料の準備、作業後の片付けや清掃
イ 手待時間指示があれば即時に業務に従事することを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間前の工程が終わるまで現場で待機するよう指示された時間、急な呼び出しに備えて待機する時間
ウ 研修・学習参加が業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、指示により業務に必要な学習等を行った時間会社が参加を義務づけた安全衛生教育、会社の指示で行う業務に必要な学習

当てはめ例は、ガイドラインの文言を電気工事業の場面に置き換えた例です。個別の事案が労働時間に当たるかは、指示や義務づけの実態で判断されます。雇入れ時の教育は安全衛生教育のガイドで整理しています。

現場への移動・直行直帰の扱い

営業所と現場の間の移動について、厚生労働省の新潟雇用労働相談センターのコラム(2024年4月3日)は、営業所と取引先との間の移動時間は、移動に努める必要があり自由に利用できる時間ではないため使用者の指揮命令下にあり、通常の移動に要する時間程度であれば労働時間とされると説明しています(厚生労働省 新潟雇用労働相談センター「移動時間が労働時間とされるのはどんなとき?」)。

同じコラムは、出張に伴う移動時間は、移動中に業務の指示等を受けていなければ自由な利用が保障されているため労働時間に該当しないとしています。一方、直行直帰に伴う移動時間は、労働時間に該当するかの判断が難しいとして、個別に相談するよう案内しています。

移動の種類ごとの労働時間の扱い(同コラムの整理)
移動の種類扱い
営業所と取引先の間(現場への移動に当てはめた場合)通常の移動に要する時間程度なら労働時間
出張に伴う移動(業務の指示なし)自由に使える時間なら労働時間に当たらない
直行直帰に伴う移動判断が難しい(個別に相談)

この表は相談窓口のコラムの説明であり、法令や通達そのものではありません。移動中に資材の運搬や運転を指示した場合など、指示の内容が加わると結論が変わります。社用車の運転者の安全管理は安全運転管理者のガイドで扱っています。

休憩時間と待機時間の違い

労働基準法第34条は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えることを求め、休憩時間は自由に利用させなければならないと定めています(上記e-Gov)。

休憩時間中に電話や来客の対応を命じ、すぐ動けるよう現場や事務所に待たせる場合は、労働から離れることが保障されていないため、ガイドラインのいう手待時間に近い状態です。休憩は自由に利用させることが条文の条件なので、待機を命じた時間を休憩として扱えるかは、労働から離れられるかどうかで判断されます。

始業・終業時刻の記録方法

ガイドラインは、労働日ごとの始業・終業時刻を確認して記録することを使用者に求め、原則の方法を次の2つとしています。

やむを得ず自己申告制にする場合は、労働者と管理者への十分な説明、申告時間と実際の労働時間が合っているかの実態調査、申告できる時間外労働の時間数に上限を設けて超過を認めない扱いの禁止などの措置を求めています。現場が複数に分かれる電気工事業では、現認が難しいため、出退勤の記録方法を決めておく必要があります。

賃金台帳には、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数などを記入しなければならず、記入しない場合や故意に虚偽の時間数を記入した場合は、労基法第120条により30万円以下の罰金の対象になるとガイドラインは説明しています。出勤簿やタイムカードなどの労働時間の記録は、第109条により保存するとされています。

ガイドライン本文は保存期間を3年と書いていますが、第109条は2020年の改正で本則5年・当分の間3年です。期間の詳細は未払い賃金の時効のガイド、台帳の項目は労働者名簿と賃金台帳のガイドを参照してください。

この整理で言えないこと

公式窓口で確認する事項

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。移動時間や待機時間の扱いは、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局、各地の雇用労働相談センターで最終確認してください。

まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。

次に知りたいことは、残業代の計算は割増賃金のガイド、残業の上限は36協定のガイド、根拠法の全体像は労働基準法とは(目的・労働条件の明示・労働時間・割増賃金・有給休暇の条文ごとの内容)で確認できます。

一次資料の一覧は公式資料・根拠、判定ルールの検証記録は公開ルール台帳で確認できます。