公式資料をもとに整理
年休の時間単位取得と計画的付与の労使協定
時間単位の年休も、お盆などに休みを割り振る計画的付与も、どちらも労使協定が必要です。ただし対象になる日数が違い、時間単位年休を計画的付与にすることはできません。従業員を雇う電気工事業者が、2つの制度の決め方、日数の上限、協定で定める事項を、条文と厚生労働省の資料で確認します。
公開日: 2026-10-20 / 最終更新: 2026-10-20 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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先に結論:2つの制度の違い
労働基準法第39条は、時間単位年休(第4項)と計画的付与(第6項)のどちらも、事業場の過半数労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定を条件にしています(e-Gov法令検索「労働基準法」)。ただし、対象になる日数の範囲と、休みを決めるのが誰かが異なります。
| 項目 | 時間単位年休 | 計画的付与 |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働基準法第39条第4項 | 労働基準法第39条第6項 |
| 対象の日数 | 年5日以内 | 年休のうち5日を超える部分 |
| 休みを決める人 | 従業員が請求した時間 | 協定で定めた日(会社も従業員も一方的に変えられない) |
| 協定の届出 | 労働基準監督署への届出は不要 | 労働基準監督署への届出は不要(厚生労働省のリーフレット) |
厚生労働省のQ&Aは、時間単位年休は従業員が請求したときに与えるものなので、計画的付与として時間単位年休を与えることは認められないとしています(厚生労働省「年次有給休暇の計画的付与について」Q&A)。
時間単位年休:年5日まで・協定で定める4事項
協定を結べば、従業員が時間単位で請求したときに、年5日までの範囲で時間単位の年休を与えられます。この協定は、労働基準監督署へ届け出る必要がありません(厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A)。協定で定める事項は、労働基準法第39条第4項と同法施行規則第24条の4に基づく次の4つです。
- 対象労働者の範囲(利用目的によって範囲を決めることはできません)
- 時間単位年休の日数(年5日以内。前年度からの繰り越し分があるときは、繰り越し分を含めて5日以内)
- 時間単位年休1日の時間数(所定労働時間数を下回れません。1時間に満たない端数は1時間に切り上げます)
- 1時間以外の時間を単位とする場合のその時間数(2時間・4時間など。1日の所定労働時間数未満に限ります)
たとえば所定労働時間が1日7時間30分の事業場なら、1日分は8時間として数えます。端数の切り上げは、厚生労働省のQ&Aが示す扱いです(厚生労働省「スタートアップ労働条件」Q&A)。
与え方で守ること
- 30分単位など、1時間に満たない単位では与えられません。
- 従業員が日単位で請求したのに、会社が時間単位での取得を強制することはできません。
- 「忙しいから」という会社の主観的な理由だけでは、時間単位の請求を断れません。事業の正常な運営を妨げる場合に限り、時季変更権で他の日や時間帯に変えられます。
- 時間単位を日単位に変える、日単位を時間単位に変える、という変更は時季変更にあたらず認められません。
計画的付与:5日を超える部分だけ
計画的付与は、協定で年休を与える日を決める制度です。対象にできるのは年休のうち5日を超える部分で、従業員が自由に使える年休を最低5日は残す仕組みです。年休が10日の人は5日、20日の人は15日まで計画的に付与できます(労働基準法第39条第6項、厚生労働省Q&A)。
| 方法 | 協定で定める内容 |
|---|---|
| 事業場全体の休業による一斉付与 | 具体的な年休の付与日 |
| 班別の交替制付与 | 班ごとの具体的な付与日 |
| 年休付与計画表による個人別付与 | 計画表を作る時期と手続き |
電気工事業では、お盆や年末年始に事務所と現場を一斉に休みにして、その日を年休で与える、といった使い方が考えられます。これは一例で、どの方法を選ぶかは事業場ごとの決めです。
年休が足りない人がいるとき
一斉付与では、入社間もなく年休がない人や、日数が少ない人は計画的付与の対象にできません。厚生労働省のQ&Aは、特別の休暇を与える、年休の日数を増やすなどの措置が望ましいとしています。何もせずに休業させる場合は、労働契約や就業規則に賃金の定めがあればそれに従い、定めがなくても少なくとも休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いが原則として必要です。
協定で決めた日は変えられない
協定で指定した休暇日は、会社が業務の都合で一方的に変えられません。従業員も、原則としてその日に拘束され、別の日に年休を取りたいと申し出ても、その日に取らないことは一般に認められないと考えられています。変更するには、協定の変更手続きなど、適切な手続きが必要です(厚生労働省Q&A Q4-4)。
年5日の取得義務との関係
年休が10日以上付与される従業員には、会社が年5日を取得させる義務があります。厚生労働省のリーフレットは、時間単位年休はこの年5日の義務に数えられず、計画的付与で与えた日数は、その分だけ時季指定義務が減ると整理しています(厚生労働省「年次有給休暇の取得促進」リーフレット、労働基準法第39条第8項)。義務の内容は年5日の取得義務のガイド、付与日数の数え方は年休の付与日数のガイドで確認できます。
導入を考えるときの確認チェックリスト
- 協定の相手は、過半数労働組合か、労働者の過半数を代表する者か
- 時間単位年休の日数は、繰り越し分を含めて年5日以内か
- 時間単位年休1日の時間数が、所定労働時間数を下回っていないか
- 計画的付与の対象を、年休のうち5日を超える部分に収めているか
- 一斉付与で、年休のない人や日数が少ない人への措置を決めたか
- 休暇に関する事項を、就業規則に書いているか(絶対的必要記載事項)
- 協定を事業場で保管し、従業員に周知しているか
この整理で言えないこと
- 協定の具体的な文例や、過半数代表者の選び方は扱いません。
- 時間単位年休を取った時間の賃金の計算は扱いません。
- 半日単位の年休や、会社独自の特別休暇は扱いません。
- 特定の事業場の導入の可否は判定しません。
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。個別の導入の可否は、所轄の労働基準監督署や総合労働相談コーナーで最終確認してください。
まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。
次に知りたいことは、休業手当は雨天待機・休業手当のガイド、就業規則は就業規則の作成・届出のガイド、他の労働時間の制度は1年単位の変形労働時間制のガイドです。