公式資料をもとに整理

電気工事会社の役員報酬を期中に変える条件(定期同額給与)

法人の社長(役員)への給与は、毎月同じ額を払う「定期同額給与」にするのが基本で、期の途中で自由に増減すると、変えた部分が法人の経費(損金)にならないことがあります。国税庁のタックスアンサーによると、期の途中の改定が認められるのは、事業年度の開始から3か月以内の改定、職制上の地位の変更など臨時の事情、経営状況の著しい悪化の3つの場合です。電気工事の個人事業を法人にした後に、役員報酬をどう決めるかの前提として整理します。

公開日: 2026-10-22 / 最終更新: 2026-10-22 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26

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役員給与の損金算入は3種類だけ

法人が役員に払う給与のうち、法人税の計算で経費(損金)にできるのは、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれかに当たるものだけです。法人税法第34条第1項が、この3つのどれにも当たらない給与の額は損金に算入しないと定めています(e-Gov法令検索「法人税法」第34条)。

一人親方の頃は、事業の儲けから生活費を自由に引き出せました。法人にすると社長も役員として給与を受け取る立場になり、金額の決め方に税法上の枠ができます。使用人としての職務を持つ役員への給与など例外もありますが、この記事では社長が給与を受け取る基本の場面だけを扱います。

役員給与で損金になる3種類(国税庁タックスアンサーNo.5211)
種類内容届出
定期同額給与1か月以下の一定期間ごとに、毎回同額を払う給与不要
事前確定届出給与あらかじめ決めた時期に、確定した額を払う旨の定めに基づく給与(賞与など)原則として税務署へ届出が必要
業績連動給与利益などの指標をもとに算定する給与。同族会社は、同族会社以外の法人と完全支配関係があるものに限る算定方法の決定などの手続が必要

同族会社は、定期給与を支給しない役員に払う給与にも届出が要る点が非同族と違います。小規模な電気工事会社の多くは社長一族が株を持つ同族会社に当たるため、実際に使う型は上の1行目と2行目が中心です。業績連動給与は、同族会社の場合の条件が厳しいため、この記事では詳しく扱いません。

いずれの型でも、不相当に高額な部分の金額は損金になりません。法人税法第34条第2項に定めがあり、何円から高額に当たるかは政令で決まります。この記事では金額の目安は扱いません。

定期同額給与の条件

定期同額給与は、支給が1か月以下の一定期間ごとで、その事業年度の各支給時期の支給額(または源泉税等を引いた後の金額)が同額の給与です。月末払いの月給を毎月同じ額にしている形が典型です。国税庁は、源泉徴収される所得税、特別徴収される住民税、給与から引かれる社会保険料などを引いた金額が同額でもよいとしています。

継続して与える経済的利益で、金額が毎月おおむね一定のものも含まれます。この点も国税庁のタックスアンサーに書かれています。

期の途中で金額を変えられる3つの場合

期の途中で給与を改定しても定期同額給与として扱われるのは、事業年度開始から3か月以内の改定、臨時改定事由、業績悪化改定事由の3つの場合です。国税庁のタックスアンサーが、次の3つを挙げています。

定期給与の額を改定しても定期同額給与として扱われる場合
場合内容増額・減額
期首から3か月以内の改定事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までにする改定。継続して毎年所定の時期にする改定で、3か月経過日より後になる特別の事情があるときは、その時期までどちらも可
臨時改定事由役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更など、これらに類するやむを得ない事情による改定どちらも可
業績悪化改定事由経営状況が著しく悪化したことなどの理由による改定。減額した改定に限る減額のみ

業績悪化改定事由について、国税庁は、法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことなどは含まれないと注記しています。「今月は現場の入金が遅れて苦しいから減らす」というだけでは、この事由に当たりません。

国税庁のタックスアンサーの表現は法令の用語に沿っています。期首から3か月の期限は、確定申告書の提出期限の特例に係る税務署長の指定を受けた場合は、指定に係る月数に2を加えた月数に変わります。この特例を受けているかどうかは、顧問の税理士などに確認してください。

事前確定届出給与と届出期限

事前確定届出給与は、所定の時期に確定した額を払う旨の定めに基づく給与で、原則として所定の届出書を税務署へ出す必要があります。たとえば、夏と冬に決まった額の賞与を役員に払う形がこれに当たります。

届出期限は、原則として次の(1)と(2)のうち早い日です。

新しく設立した法人が、設立時に開始する役員の職務について定めた場合は、設立の日以後2か月を経過する日が期限です。電気工事の一人親方が法人を新しく設立する場面では、この設立時の期限が当てはまりうるため、設立の日付を確認しておくと見落としが減ります。

届出が期限に間に合わなかった場合でも、国税庁は、やむを得ない事情があると認めるときは、期限までに届出があったものとして損金算入できるとしています。ただし、どのような事情が当たるかは個別の判断になるため、この記事では判断しません。

決算月が3月の電気工事会社の場合(架空の例)

架空の例で、期首から3か月以内の改定と、届出期限の関係を並べます。決算月が3月、つまり事業年度が4月1日から翌年3月31日までの会社を考えます。確定申告書の提出期限の特例を受けていない場合の整理です。

決算月が3月の会社の例(日付は架空の例)
項目日付の考え方
事業年度4月1日から翌年3月31日
期首から3か月を経過する日6月30日。この日までに給与の額を改定すれば、改定後の額を期末まで同額で払う限り定期同額給与として扱われる
事前確定届出給与の届出期限の上限期首から4か月を経過する日の7月31日。株主総会の決議が6月25日なら、1か月後の7月25日のほうが早く、期限は7月25日

上の表は、国税庁のタックスアンサーの期限の定めを、架空の日付に当てはめたものです。実際の会社では、定時株主総会の日、決算月、特例の指定の有無で日付が変わります。

この整理で言えないこと

個人事業から法人にする手続と建設業許可・電気工事業登録の引き継ぎは法人成りのガイドで整理しています。

公式窓口で確認する事項

本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。役員給与の額の決め方、期の途中の改定が認められるか、事前確定届出給与の届出の要否と期限は、所轄の税務署または税理士に確認してください。

まだ自身の区分を確認していない場合は、回答を保存・送信しない電気工事業区分セルフチェックを使うと、新規開業時の4区分の目安を表示できます。

一次資料の一覧は公式資料・根拠、判定ルールの検証記録は公開ルール台帳で確認できます。