公式資料をもとに整理
副業・兼業をする従業員の労働時間の通算と割増賃金
従業員が他の会社でも雇われて働く副業・兼業では、労働基準法第38条第1項により、自社と他社の労働時間が通算されます。通算した結果、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える部分のうち、自社で働かせた時間には、自社が割増賃金を支払います。 従業員を雇う電気工事業者、または電気工事の副業先として人を受け入れる事業者が、何を確認し、どの時間をどう数えるかを、条文と厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で整理します。
公開日: 2026-10-23 / 最終更新: 2026-10-23 / 診断ルールの確認日: 2026-07-26
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先に結論:雇われて働く場合だけ通算される
労働基準法第38条第1項は、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています(e-Gov法令検索「労働基準法」)。厚生労働省は、「事業場を異にする場合」には事業主を異にする場合も含まれるとしています(昭和23年5月14日基発第769号)。
- 本業でも副業先でも雇われている労働者は、原則として、その労働者を使用するすべての使用者が、自社と他社の労働時間を通算して管理します。
- 通算の結果、自社で法定労働時間を超えて働かせるなら、自社は36協定を締結して労働基準監督署長に届け出て、割増賃金を支払う必要があります。
- 自分で電気工事を請け負う一人親方のように、労働基準法が適用されない働き方の時間は通算されません。
通算される場合と通算されない場合
| 働き方 | 通算 | ガイドラインの記載 |
|---|---|---|
| 本業も副業先も雇用(正社員・パート・アルバイトなど) | される | 労働基準法の労働時間規制が適用される労働者に当たる場合に通算されます。 |
| 副業が独立・起業・フリーランス・共同経営・顧問など | されない | 労働基準法が適用されない場合の例として挙げられています。 |
| 管理監督者、監視・断続的労働者など | されない | 労働基準法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合の例です。 |
通算の対象にならない場合でも、同じガイドラインは、過労などで業務に支障が出ないよう、本人からの申告などで就業時間を把握し、長時間にならないよう配慮することが望ましいとしています。 電気工事士免状を持つ従業員が休日に自分で工事を請け負う場合の登録や届出は、会社員が副業で電気工事を請け負うときの登録と届出で整理しています。
通算の手順:所定労働時間、所定外労働時間の順
厚生労働省のガイドラインは、原則的な手順を、副業・兼業の開始前の所定労働時間の通算と、開始後の所定外労働時間の通算の2段階としています。
- 所定労働時間の通算:労働契約を先に結んだ会社から、後に結んだ会社の順に足します。
- 所定外労働時間の通算:実際に所定外労働が行われた順に足します。
たとえば、先に契約した本業の所定労働時間が月曜から金曜まで1日8時間(週40時間)のところへ、後に契約した副業先で土曜日に5時間働くとします(条文の考え方に当てはめた仮の例です)。通算して週40時間を超えるため、時間的に後から契約した副業先の5時間が時間外労働になります。 所定外労働時間は、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えるまでは、法律上、36協定や割増賃金の義務は生じません。
割増賃金は誰がいくら払うか
ガイドラインによると、各使用者は、自社の労働時間制度を基に、他社の所定労働時間・所定外労働時間についての労働者の申告などを使って通算し、自社の法定労働時間を超える部分のうち自ら労働させた時間について、労働基準法第37条第1項の時間外労働の割増賃金を支払います。 上の事例では、副業先が5時間分の割増賃金を支払う立場になります。
- 割増賃金の率は、自社の就業規則などで定めた率(2割5分以上)です。
- 所定外労働の発生順に通算して、自社の法定労働時間を超える部分が1か月について60時間を超えた場合は、その超えた時間のうち自ら労働させた時間について、5割以上の率になります。
- 各使用者は、通算して時間外労働となる時間のうち、自社で働かせる時間を、自社の36協定の延長時間の範囲内にします。
- 時間外労働と休日労働の合計は、他社の時間も通算して、単月100時間未満、複数月平均80時間以内にします。
36協定の締結と上限の基本は36協定のガイド、割増賃金の計算は時間外・休日・深夜の割増賃金のガイドにまとめています。
副業・兼業の届出で確認すること
ガイドラインは、使用者が労働者からの申告などで副業・兼業の有無と内容を確認することとし、就業規則や労働契約に届出制を定める方法を例に挙げています。届出制などの仕組みを設けておくことが望ましいとされています。
- 他の使用者の事業場の事業内容と、労働者が従事する業務内容
- 労働時間通算の対象になるか(雇用か、請負などか)
- 通算の対象になる場合は、他の使用者との労働契約の締結日と期間
- 他の使用者の事業場での所定労働日、所定労働時間、始業・終業の時刻
- 他の使用者の事業場での所定外労働の有無、見込み時間数、最大時間数
- 他の使用者の事業場での実労働時間の報告手続と、確認の頻度
他社での実労働時間は、必ずしも日々把握する必要はなく、法を守るために必要な頻度で足りるとされています。ガイドラインは例として、一定の日数分をまとめて申告させる方法、所定どおりに働いた場合は申告を求めず所定どおりでなかった場合だけ申告させる方法、上限規制の水準に近づいてきた場合に申告させる方法を挙げています。 なお、副業・兼業に係る相談や自己申告をしたことで、不利益な取扱いをすることはできないとされています。
手間を減らす「管理モデル」
副業・兼業の日数が多い場合や、双方に所定外労働がある場合は、申告と通算の手間が大きくなります。ガイドラインは、手続の負担を減らす簡便な方法として「管理モデル」を示しています。
- 副業・兼業の開始前に、先に労働契約を結んでいた使用者Aの月の法定外労働時間と、後から契約した使用者Bの月の労働時間の合計が、単月100時間未満、複数月平均80時間以内に収まるように、それぞれの事業場の労働時間の上限を決めます。
- 各使用者は、その範囲内で働かせる限り、他社の実労働時間を把握しなくても労働基準法を守れるとされています。
- 使用者Aは自社の法定外労働時間、使用者Bは自社の労働時間について、それぞれ自社の36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払います。
- 月の起算日が両社で違う場合は、各社の労働時間制度の起算日から数えた1か月で上限を設定して差し支えないとされています。
導入は、副業を行う労働者に使用者Aが管理モデルでの副業を求め、労働者を通じて使用者Bが応じる形が想定されています。
通算されない規定
労働時間に関する規定のうち、次のものは、自社と他社の時間を通算しません。
- 36協定で定める時間外労働の限度時間と、特別条項を設ける場合の年間の上限:事業場ごとの協定の内容を規制するものなので、それぞれの事業場で判断します。
- 休憩(第34条)、休日(第35条)、年次有給休暇(第39条):労働時間に関する規定ではないため、通算されません。
事業主の確認チェックリスト
- 就業規則や労働契約に、副業・兼業の届出制を定めたか
- 届出で、他社が雇用か請負かを確認し、通算の対象かを判断したか
- 通算の対象なら、他社の契約日・所定労働時間・所定外労働の見込みを確認したか
- 他社の実労働時間の申告の頻度と方法を、本人と決めたか
- 自社の36協定の延長時間と、単月100時間未満・複数月平均80時間以内に収まるか
- 通算で法定労働時間を超える自社分に、割増賃金を支払う仕組みがあるか
この整理で言えないこと
- 個別の従業員が通算の対象か、請負と雇用のどちらに当たるかは判定しません。実態で判断されるため、労働基準監督署や都道府県労働局で確認してください。
- 変形労働時間制やフレックスタイム制の場合の通算の細かい扱い、労災保険・雇用保険・社会保険の副業時の扱いは扱いません。
- 本記事は2026年10月23日に確認した厚生労働省のガイドライン(令和4年7月改定版)の記載に基づきます。改定された場合は最新版を確認してください。
本記事は一般的な制度整理であり、個別案件の法的判定、電気工事の施工・設計、申請書類の作成や提出代行を行うものではありません。個別の労働時間の扱いは、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局で最終確認してください。
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次に知りたいことは、労働時間の記録の義務は労働時間の把握と記録のガイド、時間外労働の上限は36協定のガイド、従業員を雇うときの労働条件の明示は労働条件通知書のガイドです。